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佐村 トラヴィス(DeNA)投手のルーキー回顧へ




 佐村 トラヴィス幹久(沖縄・浦添商)投手 191/81 右/右
 




                       「残念だったなぁ・・・」





 今年の夏、私は 佐村を観戦しに沖縄まで足を運んでいた。しかしもう一人沖縄にはドラフトの有力選手がいて、私はそちらの選手の試合を優先。佐村選手の所属する浦添商は、翌日の試合を観戦予定としていた。それだけに、彼が中部商の前に敗れたと訊いて大変残念に思った。唯一私ができたのは、その日の夜沖縄で放送されていた、その試合のダイジェストを見ることだけだった・・・。そこで今回は、昨年に引き続き彼の動画を見て、フォームから感じられる印象を中心に述べて行きたい。あくまでも動画を軽く観ただけなので、具体的な評価づけはできないことをご了承願いたい。


(この夏トラヴィス)

 夏前までのトラヴィスは、なかなか実戦でも登板しないことも多く、観戦を狙い撃ちするのは難しい選手だったという。しかし最後の夏に照準をあわせ、見事その成長した姿を魅せてくれた。夏前の6月の動画にも、彼が背番号16をつけていることからも、そのことが伺うことができる。


(投球内容)

 いわゆる体を思い通り操れない外人投げなのだが、140キロ前後ぐらいのストレート(セルラーで144キロを記録)に、スライダーとのコンビネーションが、この投手の投球パターンのようだ。他にもフォークだかチェンジアップのような縦の変化も持ち球として持っているようだ。

(投球フォーム)

<広がる可能性>

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、また骨格の関係上、お尻を一塁側に落とすことはできない。このことからも、腕の振りが緩まないカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球種を身につけることは、極めて困難だと言わざる得ないだろう。また「着地」までの粘りにも欠けるので、将来的にも速球やスライダー・チェンジアップのような、球速豊かな小さな変化を中心に、投球を組み立てて行くことになりそうだ。そのため緩急をつけたり、空振りを誘える球を身につけられるのかが、一つ大きな課題としてあげられる。

<ボールの支配>

 グラブを最後まで内に抱えようと言う意識が持てているので、両サイドへの制球は安定しているのでは?ただ足の甲での地面の押しつけは浮いてしまい上体が高く、テイクバックした時も前の肩が上がり、後ろの肩が下がって投槍を投げるような格好になってしまっている。これを、腕を縦に振り下ろすことで抑えこむという強引なフォーム。更に「球持ち」も浅く、指先の感覚には優れているようには見えず、ボールを思い通りコントロールするのには、苦労するのではないか。仮に制球を重視しようとすると、かなり球速を落とそさないと苦しいフォームということになる。

<故障のリスク>

 お尻が落とせないフォームだが、カーブや縦の変化を多投しなければ悲観することはないだろう。ただ気になるのは、リリースの際にグラブを持っている肩は下がり、ボールを握っている肩は上がるという、肩への負担の大きな腕の振りになっている。これでは肩への負担も大きいので、日頃から体の手入れには充分注意してもらいたい。

<実戦的な術>

 どうしても「着地」までの粘りが作れないので、タイミングが合わせやすく淡白なフォームの印象は受けてしまう。しかし体の「開き」は早すぎることはなく、ボールの出所は隠せている。これにより厳しいところを突けば、打者は手も足も出ないはずだ。「開き」が我慢できているので、コースや球種をいち早く読まれる心配はないだろう。

 腕の振りも、まだそれほど鋭くはない。将来的には、鋭い腕の振りを身につけ、速球と変化球の区別を無くしたい。また「体重移動」は、どうしても後ろに重心が残りがちで、ボールにしっかり体重が乗せられていない。球威・球速があっても、打者の手元までグッと来るような勢いのある球は、まだまだ投げられていないのではないのだろうか。ただ動画を見る限り、意外にピュッと打者が差し込まれるようなので、これができるようになると、相当打ちづらくはなりそうだ。

(投球フォームのまとめ)

 どうしても、こういった外国人風のフォーム分析をしてしまうと、通常のフォームに比べ全身が使えていないだけに粗が見えてしまう。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「体重移動」には課題が多く、例え球がすごくても、それを活かす術はという部分で引っかかる。

 唯一悪くなかったのは「開き」の部分、この点に問題がなかったことは大きい。というのは、「開き」が速いと、今後球威・球速が増しても、その恩恵を受けにくいからだ。しかしこういったタイプの選手に、あまり細かいフォーム云々を当てはめても、それを度返しするだけのキャパを秘めているので、正確なスカウティングができないのも確か。そうでなければ、ほとんどのメジャーリーガーは、技術的に失格ということになってしまう。


(最後に)


 彼の魅力は、通常のスカウティングの範疇で収まらない可能性・将来性と言う部分だろう。そこを確認できなかったことは、私としては何とも不徳の致すところであります。周りの話を訊く限り野球への姿勢も悪くなさそうだし、最後に夏に成長した姿を見せてくれたと訊いているので、かなり期待したい部分はある。地元横須賀で、今度はじっくりと、その成長を見守って行きたい。

(2011年 夏)










佐村 トラヴィス幹久(沖縄・浦添商)投手 190/70 右/右





                「沖縄には、いろいろいるなぁ」





 人材の宝庫沖縄に、またまた新たなスター候補の名前が浮上してきた。その男の名前は、 佐村 トラヴィス幹久 。秋季大会では、ヤクルト・ソフトバンク・オリックスなどが、その才能を高く評価したと言う。




 上記の動画や下記の半島さんのレポートを拝見すると、大きな破綻はないものの、まだまだ高い身体能力に恵まれた素材型なんだろうなと思います。その証に、新チームになった秋季大会でも、まだ背番号は11を背負っており、絶対的な安定感には欠けると言うことなのでしょうか。


(動画を見ての印象)

 黒人を地を引く、恵まれたポテンシャルは魅力です。細身の体型や雰囲気は、昨年のドラフトでソフトバンクに3位指名された南 貴樹(浦和学院)投手を彷彿させます。

 動画では、変化球は横滑りするスライダーがあることがわかります。ストレートにも140キロ近く出ているような勢いも感じますし、長身から繰り出す角度よりも意外に球持ちがよく、打者が差し込まれて打ちにくそうだな印象は受けました。また球が低めに集まっているのには、好感が持てました。

 ただこればかりは、実際に見たわけではないですし、情報量が圧倒的に不足しているのでなんとも言えません。ただ確かにスカウト達が、秋から話題にしているだけのポテンシャルの片鱗を伺うことはできます。





(投球フォーム)

 今度は、投球フォームから、この選手の可能性について模索して行きたいと思います。

 引き上げた足をピンと高い位置で伸ばすことなく重心を沈ませるフォームです。お尻の一塁側への落としはできないので、将来的にも見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォークの修得に苦労しそうです。それでも無理に投げようとすると、お尻が一塁側には落とせない欧米人の骨格を考えると、身体への負担は大きそうです。着地までの粘りにも欠けるので、どうしても身体をひねり出す時間が足りません。現状のフォームでは、ストレートに球速のある変化球中心の投球スタイルに、どうしてもなってしまうと思います。

 グラブを内に最後まで抱えられており、両サイドの制球は安定してそうに思えます。また足の甲でもしっかり地面を押しつけられており、低めにも球が押し込めるフォームです。「球持ち」も悪くないですし、フォームのバランスもそれなりです。制球に、大きな狂いは生じにくいフォームだと言う印象を受けます。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「球持ち」以外の要素に、まだまだ課題があるように思えます。身体の「開き」が早いと言うよりも、フォームが直線的でボールが隠れないのと、「着地」までの充分な粘りがないので、どうしてもタイミングが合わされやすい傾向にあるのではないのでしょうか。

 まだまだ筋力も不足しているのか、振り下ろす腕の絡みも物足りませんし、どうしてもまだ下半身が使いきれず、ボールにグッと体重が乗って来るような勢いは感じません。一冬越えて、筋力が付いたり下半身とのバランスがもう少し取れたりしてくると、素材としては非常に魅力を感じさせるだけに面白いと思います。


楽天


(今後は)

 投球の幅を広げて行ったり、単調なフォームを改善して行けるのかには疑問を持つものの、これだけの体格で、このバランスで投げられる才能は、高く評価したいところです。

 それだけに筋力や課題の克服に励んで、夏までに着実な成長を遂げられれば、高校からプロに行ってもおかしくはなさそうな素材だと感じました。ただ私自身圧倒的に情報量が少ないので、ぜひ今年は、その投球を確認できたらと思います。また沖縄に行く楽しみが、一つ増えたと言う嬉しさで一杯です。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!









 ノーワインドアップから投げるタイプで、足をすっと上げるもそこまでは高くないが軸足は適度に曲げていたのでバランスは悪くない。軽く溜め軸足の膝を曲げ軽くお尻を落とし、少し蹴って伸ばさずに曲げて着地するタイプ。ただ、あまりお尻も落とさず足も伸ばさないので着地は早い印象だ。グラブは打者と正対して使うので上手く壁を使うことが出来てないかなと思います。また引き込みも早いでしょう。腰の回転にやや堅さが見られグラブの使い方も相まって開きが早く、またテイクバックはまずまず大きいものの肘があまり鋭角に使えないのでアーム式の振りという感じを受ける。スリークウォーターよりやや上から投げ込んでくる。グラブ自体はしっかりと抱えられているので投げ終わりのバランスは悪くない。腕の振りはしっかり振ってはくるものの体に絡みつくような感じではないかなと思う。そんなに負担が大きいようには思えないが、しなやかさには欠けるかなといった印象です。

 制球は案外安定していますがそこまで低めに集るわけでもないので見易さもあって打ちやすいかなとも思います。変化球はスライダーとフォークでしょうか。そこまで際立つものではないですね。マウンド捌きは平均的というか悪くは無いですが、リズムが単調なので打たれているときはずるずるいってしまいます。牽制やクイックはまずまず。フィールディングもそこまで悪くないですししっかり鍛えられている感じです。センスは悪くないでしょう。

 まぁこの手の投手は高校段階ではなかなか難しいでしょうから、経験も少ないようですしいろいろと吸収してこれからの礎にして欲しいかなと思います。冬の間に基礎的な部分を徹底的に磨いて欲しいですね。


(2010年9月23日 半島氏)