11kp-10





今村 信貴(巨人)投手のルーキー回顧へ



 今村 信貴(太成学院大高)投手 180/70 左/左
 




             「思ったよりこじんまりしていた!」





 昨年彼のことを知って以来、ぜひ一度生でみたいとずっと思っていた。その機会が訪れたのは、6月下旬。私が関西の大学野球の祭典・5リーグ対抗戦を観に行った時だった。夕方から舞洲ボールパークで、練習試合を行うと言うのだ。私は、京都のわかさスタジアムから、大阪・舞洲ボールパークに向かうことになる。

 ここまで、この試合のことを公にしなかったのは、夏の大会直前の練習試合だったから。そのため甲子園予選が終わるまでは、この試合のこと、彼の投球について詳しく述べることはマナー違反だだと考えたからだった。

(投球内容)

観た感じでは、175センチ~後半ぐらいの中背の投手と言う印象を受ける。恐らくそれは、彼のフォームがそれほどダイナミックな迫力溢れるフォームと言うよりは、柔らかさを活かし、比較的コンパクトにまとめられているからではないのだろうか。

ストレート 86マイル(137.2キロ)~MAX89マイル(142.4キロ)

練習試合とはいえ、位置づけとすれば、夏の大会直前の壮行試合。練習試合に、ナイターで大阪高校野球のメイン球場でもある舞洲ボールパークを使用しているわけだから、普通の練習試合とは趣きが違う。夏の予選を想定して、ほぼ全力でプレーすることが考えられた。

ストレートの球速は、コンスタントに130キロ台中盤~後半程度で、驚くような球威・球速は感じられず、そのストレートからは、ドラフト候補らしいボリューム感は感じられなかった。そのため普段は、両サイドに丁寧に球を投げ別けて来る感じで、打たせて取るのが身上。ただランナーを背負う場面になると、腕の振りが明らかに違ってきて、コンスタントに140キロ級の勢いのある球を投げ込んで来る。特に彼の素晴らしいのは、肘の使い方が柔らかく天性の腕の振りをしているところ。この本気になった時のストレートには、一応の威力を感じさせ、ドラフト候補としての可能性を感じさせてくれた。

変化球 カーブ

以前動画で彼の投球を拝見した時は、左腕らしいカーブに加え、スライダーやスクリュー系の球種もあるように思えた。この試合では、あえて課題を掲げ、ストレートとカーブだけで抑えると言う目的の下、投球していたのかもしれない。

そのためこの試合では、この緩いカーブに的を絞られて打たれるケースが多かった。もしこの球以外に、今もスライダーやスクリューを混ぜていれば、また投球内容は大きく変わっていただろう。ただこのカーブは、わかっていても打てないとかそういった代物ではなく、あくまでも投球のアクセントとしての意味合いでしかない。そのため多投すれば、狙い打たれて餌食になってしまうのだ。

その他

左腕らしく、一塁ランナーへの牽制などは上手い。クィックも1.0秒前後と高速で投げ込むことができ、ランナーを塁上に釘付けにできる。フィールディングもそれなりのレベルにはあり、投球以外の部分は、しっかり鍛え得られていた。

<投球のまとめ>

ボールを淡々を投げ込み、両サイドに投げ別けてきます。特に右打者にも左打者にも、困ったら内角を厳しく突いて、詰まらせて討ち取ることが多いです。そういった制球力と度胸はあります。

特別「間」を意識したり、相手の打ち気を逸らすような天性の投球術は感じません。四球で自滅することもなければ、絶妙な制球力があるわけでもありません。すべてに関して、破綻のない投球ができるといった感じです。





(野球への意識)

打席などでにも、相手を待たせていると思うと、小走りで寄って来るなど周りへの意識は忘れません。ただ事前にフォームチェックをして準備するような、入念な準備はありません。またその所作からも、集中力や決め細かい注意力も感じられず、極普通の高校生といった感じが致します。そのため大人の世界に混ぜても、順応するのには少し時間がかかる気が致します。けして意識が低いわけでもありませんが、特別高いわけでもない普通の子でした。

(最後に)

現状は、上位指名候補だとか、そういった絶対的なスケール感や能力が備わっているわけではありません。あくまでも、柔らかい肘の使い方に天性のものは感じさせるものの、素材型の域は脱しられてはおりませんでした。

イメージ的には、同じ大阪から西武にプロ入りした松川 誉弘(港高校)左腕を彷彿させます。恐らくプロ入りの評価としても、彼が4位指名だったことを考えると、それに近い順位になるのではないかと考えます。将来像としては、ローテーションの一角へと言うよりは、中継ぎなどでの活躍になるのかなあと言う気が致しますが、あまり明確な将来像はまだ抱けません。それだけ、まだ投手としての形ができあがっていないからでしょう。

 実際動画で見た時は、スケール溢れる素材型なのかと思っていました。しかし思ったよりも こじんまりまとまった投手 そんなイメージを持ちました。いずれにしても4,5年は、一軍で使えるようになるのにはかかるのではないのでしょうか。左腕ですしその柔らかさからも、高校から指名される素材だとは思いますが、多大な評価や大きな期待はどうなのかなと言う印象で、プレッシャーのない環境で伸び伸び育って行って欲しい選手かなと思います。それでも今年の高校生左腕の中では、全国で5本の指に入る存在だと思いました。


蔵の評価;☆☆


(2011年 6月)







今村 信貴(太成学院大高)投手 180/70 左/左





             「この選手が、高校NO.1左腕なのでは?」





 2011年度の高校球界において、高校生の左腕では、横山 雄哉(山形中央)・戸田 隆矢(樟南)を凌ぎ、この今村 信貴が、高校NO.1左腕なのかもしれない。その土台の良いフォームと綺麗に伸びて来る速球の球筋は、素材として申し分がない。今回は、そんな高校球界屈指の左腕を、取り上げてみたいと思う。





(投球内容)

 たまたま彼の投球を、2イニングばかり確認することができた。もっと細身の筋の良さそうなセンス型投手かと思っていたが、骨格がしっかりした力強い投手であることがわかった。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX146キロぐらいか

 秋季大会の投球を観る限り、かなりストレートには勢いを感じさせ、コンスタントに140キロ前後は出ているのではないかと思わせる勢いがある。とくに投球の多くが、このストレートで押すピッチングスタイルで、右打者にも左打者にも強気に内角を攻める。ただ気になるのは、その速球の多くが高めに浮きがちだと言うこと。この部分さえ改善されれば、かなり面白い存在に成り得るはずだ。特に糸を引くようなボールの球筋は、彼がただ者ではないことを強く印象づける。

変化球 スライダー・フォーク・カーブなど

 変化球は、小さく横滑りするようなスライダーしか確認できなかった。緩急を効かせたような緩いカーブも確認できなければ、縦に鋭く落ちるような変化球もなかったように思える。ただ持ち球には、カーブ・フォークなどもあると言う。

その他

 普段は、足をゆっくり引き上げて投げ込むように、自分の「間」を大切にするスタイル。牽制は確認できなかったが、目配せはできる選手で、けして注意を行っていない選手ではない。クィックは、1.1秒前後とまずまず。フィールディングは確認できなかったが、けして動きの悪い選手ではないだろう。

 高めに浮く制球や球種の少なさから来るコンビネーションの少なさは感じられるが、けしてマウンドセンスに欠ける、ただの球の速いだけの左腕ではなさそう。球も高めにこそ浮くが、右打者にも左打者にも、内角中心に集めることができている。それだけ懐を突く制球力に自信があり、投手としての度胸がありそうだ。


楽天


(投球フォーム)

 ちょっと細かい部分までよくわからなかったのだが、おおよそのことはわかったので考察してみたい。

 足を高い位置でピンと伸ばすことができ、お尻は三塁側(左投手は)に、しっかり落とすことができている。また前へのステップも上手くでき、「着地」までの時間も稼げている。これならば、速球とスライダーと言う単調なコンビネーションだけでなく、見分けの難しいカーブの修得や、縦に鋭く落ちるフォークなどの修得も、将来的には充分期待できるのではないのだろうか。

 グラブをしっかり最後まで内に抱えられているので、両サイドへの制球は安定していそう。またこれだけの速球派左腕でありながら、下半身を上手く使いつつ「球持ち」も良いので、指先の感覚も悪くなさそう。ただ足の甲の押しつけが、陰になってしまいよくわからず。ただ重心がしっかり沈んでいるので、押しつけ自体が浅いようには見えないし、フォームの最後までしっかりエネルギーを伝えることができている。それなのに、ボールが高めに集まるのは何故だろうか?

 投球の4大動作においても「着地」までの粘りが作れ、「球持ち」も悪くなく「開き」も早くなっていない。更に「体重移動」もしっかりできており、フォームは実戦的であり、かつ理想的なバランスと体重移動で投げられているように見える。ただ細かい部分ではよくわからないところもあり、これは今後の観戦で確認して行きたい。

 腕も強く振れているし、地面の蹴り上げもよく、それでいて投げ終わったあとのバランスも悪くない。高校生としては、ほぼ理想的なフォームだと言えよう。





(今後は)

 地に足のついた速球に、土台の素晴らしい投球フォーム。破綻のない制球とマウンドセンスなどを考えると、かなり有力な上位候補なのではないかと考える。

 ぜひ春季大会の間に大阪に渡り、彼の投球を確認してみたい。あとは、高めに浮く球筋を改善しつつ、投球の幅を広げられれば、1位指名で消えても不思議ではない素材だとみる!


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・秋)