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藤澤 享明(西武)捕手のルーキー回顧へ



藤沢 享明(松本大)捕手 180/80 右/左 (上田西出身) 

 ドラフト数日前に、関甲新リーグの一部・二部の入れ替え戦があり、彼の指名があるとわかっていれば確認しに行ったのにという、悔しい思いをした選手。そこで、上田西時代の彼の映像を探すことにした。

 上田西時代は、背番号9をつけた外野手。捕手になったのは、松本大に進んでから。1年春からリーグ戦に出場し、秋からレギュラーに。以後チームを引っ張って行くことになる。最大の魅力は、塁間1.78という鬼肩のスローイング。しかし大学からのコンバートだったことや野球名門校とは言えない松本大だったため、インサイドワークやフットワークに課題があり、プロで1から鍛え直すことを前提にした指名らしい。ただ自慢の肩も、4年には肘を痛めたという。そのため4年時では、DHでの出場が多かったようだ。

 それで上田西時代の彼のプレー。実は、彼が3年時の夏の長野大会を見なおした。確かに彼は背番号9を付けていたものの、準々決勝・敗れた準決勝ではスタメンで出場していない。唯一確認できたのは、最後の打者となった代打での一打席のセンターフライのみ(これがあっただけでも救いなのだが)。そう考えると、上田西時代もチームで特別な存在だったわけではないようだ。

 当時の打撃フォームを分析するとこうだ。

<構え> 
☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは体の近くで高く添えて構える。腰の座り具合・両目で前を見据える姿勢なども悪くなく、全体にバランスの取れた好い構えだと思う。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で始動する「遅めの仕掛け」を採用。これは、長距離打者か生粋の二番打者が採用する、よ~くボールを引きつけて叩くスタイル。ただ彼の場合、二番タイプという感じもしなければ、もちろん長距離打者という感じもしない。大学4年間の通算本塁打も2本ほどだと聞いている。

<足の運び> 
☆☆☆

 地面から軽く浮かし、回し込んで踏み込んでくる。ただ始動が遅いので、足をまわし込むのは動作が忙しすぎるのではないかという気もする。ベース側にしっかり踏み込むインステップで、踏み込んだ足元はブレずにスイング。このことからも、強打者タイプの打者だったことは伺える。低めの球でも、うまくすくい上げて打っており、ローボールヒッターかもしれない。

<リストワーク> 
☆☆☆

 残念ながら、打撃の準備である「トップ」を作るのは遅れ気味。これだと始動も遅く、一定レベル以上の球速・キレのある球には苦労するだろう。上から振り下ろす見事なダウンスイングで、スイング軌道にはロスはない。最後までしっかり振り切るなど、ミート力よりも振り切る強さを重視したスイングだ。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げも小さく、目線のブレは小さい。体の開きも我慢できているが、軸足が前に崩れ少しツッコミがちだったのが気になった。打撃の波の激しいタイプではないかと考えられる。

(打撃のまとめ)

 昨年秋には、リーグ戦で.364厘を放っているようで、全く打力がないとは考えにくい。ただこの始動の遅さやトップの作りが改善されていなければ、プロレベルのスピードに対応するのは時間がかかりそうだ。

(最後に)

 関係者のコメントなどをみていても、打撃のことには触れられていないし、捕手としても1から鍛え直しだというから、本当にプロの関係者でもビックリするようなスローイングのみで獲った選手なのだろう。実際に足を生かすプレースタイルでもないようで、野手へのコンバートを視野に入れたものではないようだ。また同大学のHPを拝見すると、スカウトからは、その強肩と高い洞察力も評価されていると書かれていた。鍛えようによっては、捕手としての適性も高いとふんだようだ。

 高3の起用法からみても、とても大学で野球を続けられるような起用の選手ではなかった。下級生までに、よほど実績がなければ推薦で野球を続けて行けるような選手でもなかったのだろう。そういった選手が、プロにまで昇りつめるのだから興味深い。西武初の育成枠指名。球団は、その将来性を高く期待しているという。