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菊池 涼介(広島)内野手のルーキー回顧へ




 菊池 涼介(中京学院大)遊撃 172/70 右/右 (武蔵工大二出身)





                 「守備では、NO.1」





 2011年度のドラフト戦線では、プロでも遊撃守備を売りにできるような高い守備力のショートがいない。そんな中、プロでも名手級の遊撃手になれる素材として期待されるのが、今回ご紹介する 菊池 涼介。この選手の存在感を知らしめたのは、日米大学野球選考会が行われた平塚合宿。ここでの試合で、高い守備力をスカウト達に強力に印象づけた。けして強豪校とは言えないチームの中で、全日本候補に招集された意味は大きい。



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菊池 涼介(中京学院大)遊撃手 [] 


(守備面)

平塚合宿では、多くの注目選手がいたので、それほど菊池にばかり注意を払うわけには行かなかった。しかし今回は、菊池を目的に観た試合なので、試合前から彼の自慢の守備を充分と確認できた。

まずプロのニ遊間選手に一番求められる、スピード感があると言うこと。そして一つ一つの動作の切り返しに、キレが感じられる。打球への一歩目への反応も素早く、フットワーク、グラブ捌き・スローイングまでの一連の流れに、無駄が感じられない。予期せぬ打球へのイレギュラーにも、とっさに対処できる天性の反射神経は、今後教えてどうこうできるレベルの代物ではない。こういうった勘の良さは、東海大時代の平野恵一(阪神)を彷彿させる天才肌。

多少プレーが雑というか、いい加減に観えるのが気になるが、それでもプレーが乱れないところは、この選手の凄さ。プロで徹底的に基本の大切さを身につけられれば、球界を屈指の遊撃手に育つ可能性を秘めている。また今回の観戦で驚いのは、相当地肩も強いと言うこと。この手の動きの好い内野手にありがちな、地肩の物足りなさは全くない。プロでも文句なく、遊撃手として勝負できる稀な存在だろう。

(走塁面)

今回の遠征では、二本の外野フライに終わって正確なタイムは計測できなかった。しかし下記にある、平塚合宿の際の動画では、三塁内野ゴロになった打球のもので、4.4秒前後で一塁まで到達しているのがわかる。これを左打者に換算すると、4.1秒前後に相当。プロで足を売りにするほどの絶対的なスピードは感じられないが、基準レベル以上の脚力はありそうだ。

この動画では、最後まで諦めないで全力で走り抜けていることが確認できる。この選手の場合、しっかり引っ張ってから走り出すため、実際の走力よりも一塁到達が遅れるタイプなのかもしれない。その動きを見ていても、かなりスピード感がブレーからは感じられる。ただゴロを転がして来るタイプではないので、それほど足を生かすバッティングスタイルにはなっていない。現時点では、走力の遺憾に関係なく、足を活かすプレースタイルではないようだ。

守備に関しては申し分ないが、走力に関しては中の上レベル。足でどのぐらい貢献できるのかは、今後の彼の意識の持ちようでも、随分と変わってきそうだ。


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菊池 涼介(中京学院大)遊撃手 秋 [アクセスランキング] 


(打撃内容)

平塚合宿で確認した試合では、ピッチャーゴロと三塁内野安打。今回の観戦では、レフトフライが2つであった。この選手の打撃を見ると引っ張り型で、センターから右方向という意識は感じられない。ただ引っ張り込める球に対しては、かなりスイング強く、ヘッドスピードも鋭い。平塚で観たときはタイミング合わず、ひ弱な印象を受けたが、スイングに関しては目を覚めるようなスイングをする強さがある。ただ外角への脆さ・見極めの悪さがあり、現状は外角に逃げるスライダーでも投げていれば、痛手を食らうことはなさそうと言う印象は否めなかった。打撃が弱いのではなく、粗いとか脆いといった方が適当だろう。

<構え> ☆☆☆☆

スクエアスタンスで両足を揃え、グリップを高めに添える強打者スタイル。腰の据わり具合もよく、両目で前をしっかり見据えられており、全体のバランスも整っている。バットを適度に揺らぎ、自分のリズムでも立てており、構えとしては非常に好いだろう。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け

投手の重心が前に沈む段階で、足を爪先立ちし、リリースを迎える当たりで降ろす「遅すぎる仕掛け」を採用。どうしても全国レベルのスピードやキレに対応するのには、始動が遅すぎる印象を受ける。この欠点を改善して行かないと、上のレベルのスピードに対応するのは厳しいだろう。

<足の運び> ☆☆☆

足のカカトを浮かし降ろすだけの動きなので、どうしても「間」というものが作れず「点」の打撃になっています。あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さず叩く「鋭さ」が求められます。

真っ直ぐ踏み出した足は、インパクトの際にブレないでスイングはできています。しかし本人の意識が引っ張りにあるため、この足元のブレない恩恵はそれほど受けません。逆に今のスイングでも、右方向への意識を持てれば打ち返せるし、苦手なアウトコースもカットしたりすることも可能だと思うのだが。

<リストワーク> ☆☆

打撃の準備である「トップ」を作るのが、ワンテンポ遅いです。そのため一定レベル以上スピードボールには、立ち遅れてしまいます。またバットの振り出しも、身体から離れて振られており、ボールを捉えるまでにロスを感じます。それでも非常に鋭いヘッドスピードで、ドアスイングになるのを防いでいます。

ただスイングの弧は大きいですし、フォロースルーの段階ではグリップが高い位置まで引き上げられています。ボールを強く叩けるだけでなく、遠くに運ぶ後押しができています。

<軸> ☆☆☆

足の上げ下ろしが殆どないので、目線の狂いは生じ難いはず。体の開きも我慢できていますが、軸足は少し前に崩れたりと安定いたしません。体がツッコミやすく、調子の波が激しいタイプかもしれません。

(打撃のまとめ)

引っ張った時の打球は強く、打撃フォームも完全に強打者志向です。ただ引っ張り専門の打撃で、打てる球が限定。更に始動の遅すぎることからも、プロを想定したときのスピードへの対応は心配になります。ただヘッドスピードは鋭いので、タイミングさえ合えば、プロの球にも力負けすることはないでしょう。

ただボールを捉えるセンスはもうひとつで、けして対応力のあるタイプではありません。そのため打撃に関しては、やはりプロでも相当苦労するのではないか予測します。ただ、けして野球強豪校ではないだけに、本格的な始動や野球環境に入ったときに、どんな化学反応を示し変化するのかは、全くわかりません。上手くゆけば、まだまだ伸びシロが残っていると言う見方もできます。

(野球への意識)

中京学院大は、けして野球強豪校ではないので、全体的にそのプレーや雰囲気が緩く感じられます。そのため、そこで4年間過ごしてきた彼のプレーからも、少し雑な一面や意識の低さが垣間見られます。

ネクストバッターボックスでは、前の打者の打席には目をやっていますが、それほど自分の打席を想定してみている感じはいたしませんでした。投球と投球の間にも、体を動かすとかいうこともなく、投手の球にタイミングを合わせようという動作もありません。ネクストでの集中力・試合の入り方に関しては、不安が残りました。

(最後に)

守備だけで飯が食えるレベルの選手なのですが、打撃ではかなり苦労することが予想されます。これは、ひ弱さではなく、外角への対応や始動の遅さから来る、脆さ・粗さだと言うこと。実際指名順位は低いかもしれませんが、ドラフトでは指名されることになるのではないのでしょうか。プロの育成で、打撃や野球への意識がどのように変わるのか、個人的には大変気になるところでした。


蔵の評価: (下位指名級)


(2011年 秋季リーグ戦)