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新崎 慎弥(ソフトバンク)内野手のルーキー回顧へ








新崎 慎弥(日本文理大)遊撃 171/73 右/左 (興南出身) 
 




                      「代打の一打席だけだったけど!」





 ドラフト会議の翌日、私は福岡ドームで行われていた 神宮大会九州代表決定戦を見に行った。その最大の目的は、ヤクルトに2位指名された 木谷 良平 のチェックと、ソフトバンクに育成枠で指名されたこの 新崎 慎弥 の視察だった。しかし新崎はスタメン出場せず、登場したのは試合終了間近の、代打一打席だけだったのである。


(プレースタイル)

 そこで私は、彼の興南高校時代の映像を見直したり、大学選手権に出場した2年生当時の彼のプレーを見てみた。興南高校時代は、2番・遊撃手として出場。大学選手権では、途中出場で遊撃のポジションに入っている。上級生になっても、9番打者として出場しており、けして打力でアピールするタイプではなかったようだ。バットを短く持って、セーフティバントで揺さぶったりする、俊足・巧打タイプ選手である。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.0秒前後。小柄で滅法足が速く見えるが、実際そこまで図抜けた走力の持ち主ではないように思える。それでもボール転がす意識が持てたり、隙あらば次の塁を陥れるなど、走塁技術・次の塁を貪欲に狙うんだという姿勢と集中力がある実戦的なプレーヤーだ。プロレベルでも、足でもある程度アピールできるだろう。

 私が生観戦に行った時、試合前練習で遊撃を守っていた選手はアクバティックが映える選手だった。プロに指名される選手は、やっぱり違うなあと思っていたら、その選手が新崎ではなく試合でもスタメンで起用された下級生。もう一人その男と一緒にノックを受けていたのが新崎だったようで、私は正直あまりその選手のことを集中して見ていたいなかった。こちらは堅実な選手で、下手ではなかったが、華のないタイプだったと記憶している。これではまずいと、過去の試合の模様を見なおしてみた。

 新崎の遊撃守備は、しっかり打球の正面に回りこんでから送球する、基本に忠実なプレーする選手。最初の一歩目の反応が良く、守備範囲も広い。プロレベルの動きの速いプレーにも対応できるスピード感があり、地肩も結構強い。こと守備に関しては、プロでもニ遊間を担えるだけの、確かなものがありそうだ。ダイナミックなスーパープレーで魅力するといったタイプではなく、あくまでも堅実に自分の身の丈にあったプレーをする選手との印象が強い。


(打撃内容)

 バットを短く持って対応するなど、かなりひ弱な印象は否めません。しかしボールに食らいつく姿勢を魅せ、なんとか出塁してやるんだという意識は感じられます。完全に流して転がしたり、鋭く野手の間を抜けてゆくような単打狙いの打者です。

<構え> 
☆☆☆☆

 大学選手権の2年時当時は、左打者には珍しくクロスに構える選手でした。しかしこの秋のフォームを見ると、スクエアから軽く足を引いているような、左打者らしいオーソドックスな構えに変わっているように見えます。グリップの高さも少し高めに添えて、腰はあまり沈めずに、両目で前をしっかり見据えられています。比較的リラックスして構えられており、以前よりも癖のないフォームに変わりました。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 大学選手権の時は、アベレージ打者らしく「早めの仕掛け」を採用していたように思えるのですが、この秋は「平均的な仕掛け」ぐらいのタイミングで始動しており、中距離・ポイントゲッターのような打撃をしています。やはり彼の打撃スタイルからすれば、早めに始動したほうが良いように思えます。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を引き上げて、回し込んで踏み込ます。始動~着地までの「間」は取れているので、いろいろな球にタイミングを合わせることはできています。真っ直ぐ踏み出すことからも、内角でも外角の球でも捌きたいという意志が感じられます。踏み込んだ足元が、意外に地面から離れるのが早いのが、少し気になりました。どうしても打ってからの、最初の一歩目を速くスタートを切りたいがばかりに、しっかり振り切る前に走りだしてしまい、インパクトにロスを与えているように思えます。足元がブレない程度に、やはりきっちり叩いてから走りだして欲しいものです。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」は、早く作ることができています。スイングも上から、バットのヘッドを立てながらコンパクトに振りぬけています。ロスないスイングではありますが、プロの打者となると、スイングの弱さは気になります。

<軸> 
☆☆☆

 頭の動きはそれほどではないのですが、踏み込んだ足元が少しブレる気が致します。軸足自体に粘りが感じられるので、左方向へ流すことも苦にはしないのですが・・・。

(打撃のまとめ)

 ボールを当てること自体は、けして下手な選手ではないように思えます。しっかりボールをヒットゾーンに打ち返す技術・スイングの強さなどを考えると、やはりプロレベルは完全に物足りないかなと言う印象は否めません。


(最後に)

 守備・走力に関しては、プロでもそれなりにやれるものがあると思います。野球への姿勢も良いですし、なんとかしてやろうと言う意欲が感じられるプレースタイルには好感が持てます。

 ただ一軍を意識するのには、打力が圧倒的に劣ります。根本的なミートセンスは悪くないので、プロの球に力負けしない鋭く強いスイングを求めたいところ。プロの指導で、その辺がどの程度改善されて行くのか注目したいと思います。確かに良い選手ですが、プロとなると厳しいかなと言うのが率直な感想。ただ育成枠なら、ちょっと混ぜてみたい、そういった光るものがある選手ではあると思います。プロの打撃が身につけられるかは微妙ですし、時間もかかると思います。しかし、今後の成り行きがとても気になる選手でした。


(2011年・秋)