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中根 佑ニ(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ



中根 佑二(東北福祉大)投手 183/81 右/右 (仙台育英出身) 
 




                     「若干復調気味」





 春の大学選手権の時は、下級生の時のような勢いのある球が陰を潜めただけでなく、球の走り、コントロールもイマイチだった。その頃に比べるとこの秋のピッチングは、制球を重視して好転の兆しが見えつつあようだ。


(投球内容)

静かに足を軽くあげ、綺麗なフォームで投げ込んで来る正統派右腕。

球速 130キロ台後半~140キロ台前半

 力んで速い球を投げようという意識が薄れ、コースを丹念に突く投球に意識が切り替わりました。力みがなくなった分、球速はありませんが空振りが取れる球質が復活しつつあります。打者のバットが、ボールの下をくぐる場面が目立ちます。ただこの日は、他の投手を神宮で見てきましたが、この球速だと生で見ていたら、かなり遅くは見えたのではないかというほどの球速表示ではありました。

変化球 スライダー・フォークなど

 横滑りするスライダーとフォークのような縦の変化を魅せます。特に球種は増えていないのですが、春と違い上手くコンビネーションに馴染むようになってきました。それまであまりフォークで空振りが取れなかったのですが、その辺もだいぶ変わってきています。変化球が体の近くで曲がるようになり、キレも増しているのではないのでしょうか。

その他

 牽制・クィック・フィールディングなどの技術に、特に課題は感じません。そういった技術は、名門で培われてきており、最上級生になるまでに高められてきています。

 ただ気になったのは、外角中心にボールを集められる制球力は良かったのですが、ボールが真ん中~高めのゾーンに集中する点。同じ高めでも内角ならば良いのですが、外角はバットが伸ばしやすい位置にあり、捉えられれば長打に結びつきます。下級生の時のような勢いがあれば問題がないのですが、現状はちと怖いなあという印象は否めませんでした。

(投球のまとめ)

 今日の試合を見るかぎり、だいぶ先発の投球も板についてきたのかと思います。球の勢いが薄れたのも、下級生の時はリリーフ中心で、力の限り投げていればよかったのが、先発に変わったからという見方もできます。ですから再びプロでリリーフを任されるようになれば、速球が蘇る可能性はあると思います。

 結局先発すると、明らかにスケールが小さく見えるのは、彼の馬力・体格やフォームから感じられる威圧感などが、その程度の器しかないからだとも言えると思います。実際183センチという体格も、そのピッチングは170センチ台後半ぐらいの投手の投球にしか見えません。そういった意味では、プロでは更なるパワーアップ・スケールの向上に努めて欲しいものです。


(投球フォーム)

<広がる可能性>

 春よりも、お尻がしっかり一塁側に落とすことができています。これにより見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォークなどの習得が可能で、実際にキレが増してきました。ただ少し前に倒れ込むようなフォームなので、「着地」までの粘りは、あまり感じられません。この辺が、好い変化球を投げる上での、マイナスポイントにはなるのですが。

<ボールの支配>

 グラブは内に最後まで抱えれているので、両コーナーへの投げ分けは安定。ただ足の甲での地面の押しつけが浅いので、ボールが上吊る傾向が見られます。「球持ち」は素晴らしいので、指先の感覚も良くなってきました。低めにボールを押し込めるようになれば、ピッチングの安定感も更に増すのではないのでしょうか。

<故障のリスク>

 お尻を一塁側に落とせますし、それほど力投派でもないので肘のへの負担は少ないフォームです。それでもフォークを多投するので、アフターケアには充分注意してもらいたいもの。振り下ろす腕の角度にも無理はありませんので、肩への負担も少なそうです。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りがないので、打者としてはタイミングが合わせやすいフォームではあります。ただ体の「開き」は平均的で、ボールの出所が見やすいというほどではありません。ただフォームとしては素直で、けして打ちにくいフォームではありません。

 振り下ろした腕は体に絡んできますが、彼ならばもっと絡んできてもと思います。腕をもっと鋭く強く振れるようになるといいですね。足がガニ股になるように「体重移動」は、思いのほか上手く行っていません。彼の球の伸びは、下半身で作り出されると言うよりは「球持ち」の良さを生かしてバックスピンのかけかたが非凡なのでしょう。ただ伸びはあっても勢いを感じないのは、この下半身の使えないフォームにあります。

(投球フォームのまとめ)

 春より、お尻が一塁側に落とせるようになって、変化球のキレが増しました。ただそれほど苦になるフォームではないので、コントロールを間違うと怖い側面があります。

 「球持ち」は好いので、足の甲での押しつけができるようになれば、高めに集まる制球の改善に期待が持てます。重心が沈めば、もう少し上手く「体重移動」もできるようになり、ボールに上手く体重が乗せられるようになるのではないのでしょうか。もう少し実戦的なフォームをしているのかなと思えたのですが、それほどでもないことがわかりました。


(最後に)

 春に比べると、制球力・変化球のキレに改善が見られました。また力みがなくなった分、ストレートの質も蘇りつつあります。ただ球速は、下半身の頃ほどの勢いには未だに戻っていません。そう考えると、このぐらいの順位は妥当であるように思えます。

 気になるのは、年々レベルが下がってきた理由です。何処かを痛めていたのか?あまり向上心がないのか?自分を活かすセンスに欠けるのか?この秋は先発での適性を魅せましたが、やはりプロのローテーション投手としては、今の球威・球速では物足りません。プロで存在感を示すには、現状大学下級生時代のような勢いのある球を連発するリリーフであるように思えます。粗さが解消された今だからこそ、リリーフでも安定した投球が期待できます。あの頃の球の勢いが戻れば、一年目から活躍できると評価します。

 ただここ2年ぐらい、そういった投球が見られていないのも事実。そう考えると、プロでどう転ぶかは微妙だと言わざる得ません。細かいことをやるほどのセンスやそれほど実戦的なフォームではないことを考えると尚更です。内容は好転しつつありますが、評価は春のまま据え置きとさせて頂きたいと思います。


(2011年・神宮大会)







中根 佑二(東北福祉大)投手 183/77 右/右 (仙台育英出身) 
 




                     「完全に伸び悩み!」





 仙台育英時代は、あの由規(ヤクルト)の陰に隠れて目立たない存在であった。しかし東北福祉大入学後は、その才能を爆発。その後も緩やかな成長曲線を描き、2年秋には世代屈指のレベルにまで到達した。しかし3年生なったあたりから、先発でのマウンドも増えたせいか?完全に伸び悩み。下級生の時のような勢いは陰を潜め、この大学選手権でも、何か消化不良であったことは否めない。


(投球内容)

 けして無理をしなくても、しなやかな腕の振りから140キロ台後半の球を投げ込んでいた下級生時代とくらべ、今は先発で制球を重視しているのか? ボールに以前ほどの勢いがなくなった。

ストレート 140~MAX144キロぐらい

 ピュッと切れる球質の片鱗は残っているものの、ボールが高めに抜けることが多く、収まりの悪くなかった球筋はどうにも後味が悪い。以前だったら、ストレートで空振りを取れる場面も多かったのだが、大学選手権の愛知学院大戦では、自慢のストレートで空振りを誘う場面はほとんど見られなかった。

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど

 特に球種を増やしたと言うことはないようで、コースに速球と変化球を集めて打たせて取る投球。フォークで三振を奪う場面も見られたが、まだまだ絶対的な球種だとは言えないようだ。

その他

 昨年よりも成長したところは、クィックが1.1秒前後で投げ込めるようになり、更に素早さを増したところ。牽制・フィールディングの動きもよく、投球以外の部分は悪くない。

 ただ元来、試合をまとめたり、マウンドさばきにはそれほどセンスは感じられない。勿論先発も可能だろうが、元来ならば、球の勢いで押すリリーフの方が持ち味が発揮できるタイプだとみる。

 そういった意味では、コースを丹念に突いて投球をするのは彼にあまり適さない。上のレベルを考えると、勢いで押すピッチングでの活躍が期待される。何処か痛めたと言う感じではないので、劣化と言うよりは役割の不適合と言うことが、彼の魅力を半減させていると考える。


(投球のまとめ)

 愛知学院大戦では、微妙な制球力がつかずに勝負どころでの投球に苦しんだ。それでも大まかに、コースへボールは散っており、四球で自滅するタイプではけしてない。ただ自慢の速球が、低めに押し込まれることなく高めに抜ける球が多かったのは気になった。またその球で空振りを取れるほどの勢いがなかったのも残念。粘り強く投げた部分は評価したいが、彼の下級生時代の勢いを知るものからすれば、なんとも物足りない内容だった。

(投球フォーム)

 足を引き上げる勢いや高さは控えめで、おとなしめの入りをする。お尻の一塁側への落としはできているが、少し甘い。また着地までの粘りも平均的なため、変化球のキレがイマイチで、武器になるほどの曲がりをしないのだ。

 グラブは内に抱えられているので、両サイドへの制球は安定。球持ちも良いので、制球力には不安がないし、元来ボールにしっかりバックスピンをかけられ、非常に素晴らしい伸びを作り出していた。足の甲での抑えもやや甘く、ボールが上吊る要因を作り出している。

 また以前ほど打者の空振りを誘えなくなったのは、体の「開き」が以前よりも早くなっているのではないのだろうか?腕の角度には無理はなく、腕も振れている。ただ「体重移動」はあまり上手くは行っておらず、もう少し体重がグッと乗ったフォームになれば、球の勢いも取り戻せるだろう。



(最後に)

 2年秋の神宮大会あたりでは、世代でもトップ級の投手にまで昇り詰めた印象があった。しかし3年春以降の伸び悩みで後退。この春のシーズンや大学選手権の投球を見て、スカウトたちが物足りなさを感じたことは間違いない。

 少なくても上位24名(2位以内)からは外れた印象で、ドラフト戦線から後退したことは間違いない。ただ大きな故障によるものではないことを考えると、またプロなどでリリーフなどをやらせたり、フォームの修正を加えれば、十分に輝きを取り戻せる可能性は高いとみる。この選手の素晴らしいのは、その球質の素晴らしさと速球派でありながら、制球が安定しているところにある。ここで評価を落としても、プロで再び盛り返す、そういった可能性は十分残っているだろう。ただ今の内容を正当に評価するならば、中位指名級以後の指名となりそうだ。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2011年 大学選手権)





中根 祐二(東北福祉大)投手 180/78 右/右 (仙台育英出身)

(どんな選手?)

 これまでは、その素材の良さを活かし、伸び伸びと投げてきた中根祐二。しかしこの春は、チームの名実共にエースとして活躍。5勝0敗 防御率0.53の成績を残し、リーグMVPを獲得した。





(投球内容)

 チームのエースとして挑んだ今年の大学選手権。しかし立ち上がりから、何処か体調でも悪いのではないかと思われるほど、今まで見てきた中で一番悪い内容だった。彼の最大の良さは、手元までしっかり伸びて来るストレートの質。この日は、MAXで146キロまで記録していたが、球質と言う意味では非常に物足りないものがあった。それだけでなく、ストレートは全体的に上吊り、カーブ・チェンジアップなどの変化球も制球も悪く、苦しいピッチングが続いた。またスライダーらしき球が陰を潜め、制球だけでなく、攻めのバリエーションにも乏しかった印象がある。

 クィックは、1.2秒弱。元来牽制もまずまず上手い選手で、フィールディングの動きも悪くありません。ただ、それほど試合をまとめるセンス・組み立てる技術に非凡なものがある選手ではありません。破綻のない投球と、球の威力で勝負するタイプです。

(今後に向けて)

 リーグ戦では、申し分のない内容を示せました。その点では、今後に向けて大きな自信となったシーズンだったのだと思います。ただ全国を舞台に、あるいは先のレベルを意識してとなると、まだまだ物足りないものがあります。総合力を引き上げて、来年は上位候補に相応しい実力を身につけて欲しいですね。現在の内容・実績からしても、来年のドラフト指名は、確実といえるほどの選手ですから。


(2010年 大学選手権)








(どんな投手?)

 昨年の神宮大会のレポートでも、世代屈指の存在だとして、最高評価でプロ入りが期待できる素材として絶賛した投手です。今年も春のオープン戦などから何度も見ましたが、ゆるやかな成長を続けている投手です。

(投球内容)

 この投手の最大の良さは、腕を強く振らなくても、非常にしなやかにしなり、打者の空振りを誘える伸びやかな速球を投げ込める点にあります。このわかっていても当たらない速球は、球速でも常時145キロ前後(MAX148キロ)を記録し、変化球はカーブ・スライダー・フォークなどを投げ込んで、昨年と基本的なピッチングスタイルは変わっておりません。

 けん制もまずまずですし、クィックも1.05~1.2秒弱と素早いです。マウンドさばきも悪く無いですし、もの凄くピッチングが上手い・器用なタイプには思えませんが、投球に破綻はありません。

 右打者には、アウトコース真ん中~高めのゾーンに速球とスライダーを集めてきて、時々カーブで、アクセントをつけます。内角への厳しい攻めや縦の変化は見られないのですが、外角クロスへのストレートが、この投手の最も好い球筋になり、この球で三振が奪えます。左打者には、昨年からアバウトになる傾向はあるのですが、大雑把には内外角に球を集めることができ、フォークで仕留めることができます。

 投球フォームでは、足の甲の押し付けが浅い投手なので、どうしても重心が浮き気味になり、球がやや高くなる傾向にあります。ただ「開き」「体重移動」「着地」は平均的で破綻はなく、何より非凡なまでに、ボールを前で放せると言う「球持ち」の良さが、彼の最大の魅力です。これが、尋常ではない球の伸びを実現する要因なのでしょう。

 ストレートには素晴らしいものがありますが、ピッチングにおいては、攻めのバリエーションも限られておりますし、フォームにおいても甘い部分も少なくありません。あくまでも破綻がないけど、よくもないと言う部分が多い投手でもあります。その辺を、残りの2年でいかに突き詰めて行くが、プロで即戦力に成り得る技量を身につけられるのかの別れ目ではないのでしょうか。

(今後は)

 高校・大学と、チームの中には他にも頼れる投手がいたので、チームを背負って立つような絶対的な責任を負っての登板経験が少ない気が致します。そのため接戦になると、時々精神的に弱い部分と言うか、ムラみたいなものが一つの試合の中にも垣間見られる時があります。

 そういったチームで全幅の期待をかけられる中、エースとしてどんな投球ができるのか、来年あたりは、期待して見守ってみたいですね。あくまでも今は、ノビノビ投げられる環境の中、自分の投球に徹することができました。しかしこれからは、いろいろ背負って立つものが出てくると思います。そのプレッシャーの中、結果を残すと言う経験・実績ができた時、この投手は、最高評価でプロ入りしてできる投手に育っているのではないのでしょうか。

(2009年・神宮大会)








(どんな選手?)

 仙台育英時代は、佐藤由規(ヤクルト)の陰に隠れがちでしたが、福祉大進学後着実にその成長を高めて来ました。神宮大会の早稲田戦で先発し、その存在を示す登板となりました。

(投球スタイル)

 正当派の本格派右腕で、均整の取れた体格と柔らかい腕の振りを生かして、ズドーンとミットに突き刺さる速球の球質には、素晴らしいものがあります。球速は、常時140~MAX147キロまで到達しておりましたが、その球筋・球質には思わず唸るだけのものがありました。

 変化球は、カーブ・スライダー・縦スラでしょうか。非常にオーソドックスな球種の持ち主ですが、何より速球で押せるところが魅力です。鋭い牽制は観られませんでしたが、クィックは、1.05~1.2秒弱と、まずまずの上手さです。制球力に破綻がなく、試合をまとめるセンスも、思ったより悪くありませんでした。

 右打者には、アウトコースの高低に球を集める制球力があります。ただ左打者には、真ん中にこそ集まりませんでしたが、多少アバウトな印象が残ります。ただこの試合、序盤に飛ばし過ぎたのか、完全に中盤以降、球威・球速が半減いたしました。まだまだスタミナには不安があるようです。

(今後は)

 素直に、肉体のパワーをアップを図りつつ、少しずつ技術的なものを増してゆけば良いのではないのでしょうか。大学1年生世代としては、全国屈指の素材だと言う印象で、順調に最終学年まで行けば、最高評価でのプロ入りも充分期待出来る器です。非常に楽しみなニューヒーローの登場でした!


(2008年 神宮大会)