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中後 悠平(ロッテ)投手の藁をも掴む!へ
中後 悠平(ロッテ)投手のルーキー回顧へ
中後 悠平(近畿大)投手 182/73 左/左 (近大新宮出身) |
「好きではないが、1位指名は揺るがない!」 左サイド特有の球筋から、球威抜群のストレートと横手投げ特有の鋭いスライダーで、打者をキリキリにさせる異色のサウスポー 中後 悠平 。個人的には、野球に対する姿勢などは気に入らないが、その力量は間違いなく、1位で消える素材だと言えよう。そんな 中後 を一年ぶりに眺めてきた。 (投球内容) 中後は、いい日と悪い日のデキが激しい。特にコントロールのバラつきが、その日によって大きく違うのだ。しかし私が観戦した 日米大学野球セレクションでは、コーナーにしっかりボールが集まっていた。 ストレート 140~143キロ この日は、140キロ台後半を投げ込める彼の能力を考えれば、制球力重視で丁寧に投げていたかもしれない。それでも、キャッチャーミットに突き刺さる球のボリューム感、ビシッと収まるボールの勢いは、ドラフト1位レベルの重みがあった。それにも加え彼には、左横手投げ特有のイヤラシイ球筋も加味されているのだから、これは素直に評価しないといけないだろう。 変化球 スライダー・スクリュー・カーブなど 横手特有の大きく横滑りするスライダーを武器に、スクリューや緩いカーブもあるようです。ただ投球の多くは、速球とスライダーのコンビネーションで組み立てられています。ただ以前よりも、右打者の外角低めに決まるスクリューの精度が、向上したように感じられました。 その他 もともと左投手だけに、牽制はなかなか上手いです。クィックも1.0~1.2秒ぐらいと、十分基準を満たします。そのためランナーとしては、なかなか盗塁を試みるのが難しいタイプだと考えられます。 ただ自信を持ってポンポンとテンポ良く投げ込む心地良さはありますが、元来細かい制球力や投球術はなく、イケイケのタイプだと思います。プロで大成するとすれば、やはりリリーフではないのでしょうか。 (投球のまとめ) 調子の良い時は、正直手がつけられないぐらいの球を投げます。しかしその反面、微妙なフォームのバランスや気持ちの部分で投げる投手なので、ダメな時は全然ダメというムラッ気が下級生の時は目立ちました。 ただこの試合に関しては、右打者には両サイドにボールを散らし、外角低めにスクリューを落とすことができていました。また左打者には、背中越しから来る感覚に陥る球筋を生かし、外角中心に速球とスライダーを集めます。ボールになるスライダーを振らしたり、インコース膝元にも決めたのは、何処まで意図していたのか気になるところです。 こういった投球が、最終学年になってからの成長なのか? それとも単に代表選考会という、この上なくモチベーションが上がるシチュエーションだったからなのか、春のシーズンの成績を参考にしながら考えてみたいと思います。 [高画質で再生] 中後 悠平(近畿大)投手 & 小林 誠司(同志社大)捕手 [] (成績から考える) 1,被安打は、イニング数の70%以下 ◎ 春のリーグ戦では、61イニングを投げて、被安打は僅か26。被安打率は、42.6%と素晴らしい数字をマークしている。被安打率が、50%を割るというのは、相当圧倒的なピッチングをしていると考えて良いだろう。 2,四死球は、イニングの1/3以下 △ 61イニングで、四死球は24個。四死球率は、39.3%と悲観するほど悪くはないが、やはりアバウトな一面があるか、好不調の波が激しく、その日の調子に左右されるのかのいずれかなのだろう。悪い時は、全然ストライクが入らない傾向に陥り、未だ持ってその傾向の陰を見え隠れしている。 3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 ◯ 奪三振は、61イニングに対し56個。奪三振率は、1イニングあたり0.92個。通常0.8個以上奪っているようだと、かなり三振を奪っている投手だと言えよう。しかしそのストレートは、球威型でそれほど空振りを誘う球質でもないので、イニング数を越えるような絶対的な決め手がある投手ではないと言える。 4,防御率は、1点台が望ましい ◎ 今春の防御率は、0.74。これは、今春の関西学生リーグでは、堂々第一位の成績だ。まあリーグレベルの差はあれど、やはりドラフト上位候補となれば、リーグの中で0点台ぐらいの図抜けた成績を望みたい。そういった意味では、シーズンとうして成績を残したことは、高く評価して良いだろう。 (成績からわかること) 最終学年になり、リーグ戦では見下ろして投げているのだろう。防御率・被安打の少なさは高く評価して良い。奪三振も、彼の投球スタイルや球を考えれば、こんなものだろう。制球力には多少の不安は見え隠れするものの、彼のスタイルを考えれば、それほど深刻のレベルではない。この手の細やかさがないタイプが、大胆さもなくなってしまっては、何の特徴もなくなってしまうのだから。 (最後に) 精神的に成長したかは、この短い投球だけでは確認できなかった。しかし成績を着実に伸ばし、私の観た試合に関しては、文句ないの投球をしてみせた。できれば、もっと別の試合を観てみたいのだが、下級生からずっと見てきた投手だけに、着実な成長を遂げつつあるのだなという実感は持てる。菅野(東海大)・藤岡(東洋大)の二人ほどの絶対的な評価とは行かないが、1位で競合があっても不思議ではない投手という位置づけだと評価したい。 ただ彼のような浮き沈みの激しいタイプは、出してみないとわからないとか、長く継続して成績を残してゆくという意味では、正直計算が立たない。しかしその絶対能力を評価すれば、プロで短期間ならば爆発的な活躍も期待できるかもしれない。そういった意味でも、ある程度高い評価になりそうだ。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2011年 日米野球セレクション・平塚合宿) |
中後 悠平(近畿大)投手 182/73 左/左 (近大新宮出身) |
(どんな選手?) 大きく足を開いて構えるフォームから、スリークオーターや時には、下の方からも腕を出す荒れ球投手です。東京ドームのガンでも常時140キロ台を記録し、今大会でも最も球の威力を感じさせてくれる投手でした。今春のリーグ戦では、9試合に登板して、3勝0敗 防御率1.47と安定した成績を残し、関西学生リーグに突如現れた新星です。 (投球内容) 腕を外からブンと振って来る強引なフォームながら、常時140~MAX145キロぐらいの非常に球威のある速球を投げ込んで来ます。非常に荒れ球の上に、独特のフォームなので、打者としては的が絞れず、その上剛球なので極めて厄介なタイプです。 速球は、球威型であまり空振りを誘える球質ではないのですが、この速球を見せ球にしつつ、スリークオーター独特の腕の振りを生かした、スライダーのキレには観るべきものがあります。三振の多くは、思わずズバッと決まった時のストレートか、このスライダーによるところが大きいです。他にも下手から投げ込んで来るカーブ・それに殆ど投げませんでしたが、シュート系の球もあるように思えます(まだ殆ど使えないようですが)。 細かい制球力は正直ありませんが、そこを気にして投げる必要があるタイプではないように思えます。投手には、中へ中へと甘く入って来るタイプと、外へ外へと散らばって行くタイプがおりますが、彼は完全に外へ外へと球が散って行くタイプ。制球はアバウトですが、真ん中近辺の甘いゾーンには球が集まりません。それだけに、あまり細かいことを追求しても、それがプラスと働くかは微妙なタイプだと思います。それでも牽制もそれなりに上手いですし、クィックも1.0~1.2秒ぐらいでまとめられるなど、かなり速いです。 (今後は) 基本的には、シュート系の球などを修得し、投球の幅を広げたいですね。後は、実績を残すことで、自信を深めフォームの力の入れ加減のコツを掴めて来ると、制球も少しまとまってきそうです。彼に必要なのは、細かいことを追求するよりも、更に攻めのバリエーションを増やすことと、速球の威力を維持・更に向上させること。そして投球のコツを身につける経験ではないかと思います。 今後どう転ぶかは微妙なタイプなのですが、今大会観た下級生の中では、最も魅力を感じる投手でした。順調に実績を重ねて行けば、最終学年では最上位でプロ入りを狙える器ではないのでしょうか。 (2009年・大学選手権) |