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辻 孟彦(中日)投手の藁をも掴むへ



辻 孟彦(日体大出身)投手 183/84 右/右 (京都学大西出身) 
 




                        「微妙にいい!」





 特に凄い球があるわけでも、フォームに迫力があるわけではないのだが、「微妙に好い投手」それが、この 辻 孟彦 。学生NO.1と評される 菅野 智之(東海大)投手との息詰まる投手戦を制し、大学選手権に出場。その存在感を、全国の舞台でも証明して魅せた。


(投球内容)

 下級生の時までの辻は、本当にオーソドックスなフォーム、素直な球質の投手といった感じで面白味に欠ける投球だった。そんな辻が最終学年を迎え、何か少し「おっ」と思わせてくれる場面が増えてきた。以前よりも、微妙によくなっているのだ。

ストレート 常時140キロ台~MAX147キロ

 私の観戦したリーグ戦では、MAX89マイル(142.4キロ)程度であったが、大学選手権では147キロまで記録。相変わらず特に凄みのある球ではないのだが、打者が少しずつピュッと差し込まれて振り遅れているのが目につく。球速的にも、プロの基準を満たすようになり、僅かながら基準を超える球を投げ込んで来るまでに成長。特に右打者外角一杯に決まるストレートが、この投手の最大の持ち味。

変化球 スライダー・チェンジアップなど

 投球は、スライダーよりもチェンジアップを多く使って来る。スライダーも打者の近くで曲がる実戦的なものであり、カウントを稼ぐチェンジアップとフォークのように空振りを誘うチェンジアップを使い分ける。変化球に絶対的な威力はなく決め手に欠ける部分はあるが、コンビネーションの中で上手く織り交ぜることができている。

その他

 打者には、ある程度目配せや投げる「間」を変えることで、盗塁を牽制。フィールディングも、物凄く上手いわけではないが、冷静に確実に処理している。クィックも1.1秒台で投げ込むなど、基準を満たす内容。派手さはないが、やることはちゃんとできている。

(投球のまとめ)

 安定した制球力を元に、試合を壊さないでまとめるセンスがあります。この投手は、とにかくフォームや球自体に威圧感やイヤらしさはないので、微妙な球のキレやコントロールが身上。そのため少しでも球が走っていなかったり、制球が乱れるようだと簡単に痛打されてしまいます。その集中力・体調の維持を、いかに続けてゆけるのかが、そのまま結果になって現れます。そのため悪い時に悪いなりにと言う投球は難しく、いかに好い状態をキープできるのか。別な言い方をすれば、好くなければ抑えられない微妙なレベルの上で成り立っていると言えるでしょう。



(投球フォーム)

 非常にオーソドックスで、癖のないフォームです。今シーズンは、肉体の成長もあったのか、腕の振りの鋭さが以前よりもUPしたように感じられました。ただこういった部分も、連投などを続けて行くとパフォーマンスが落ちて来るので、そうなって来ると見栄えのしない投球になってしまいます。

 お尻を一塁側に落とせるフォームなので、縦の変化などには適した投げ方です。ただ残念なのは、着地までの粘りが足りないので、充分にボールを落としきれないのと、相手打者からは、イヤらしさを感じにくいフォームだと言うこと。

 グラブを内に抱えられており、球持ちも好いので、ボールを上手くコントロールできています。足の甲での押しつけもできているので、低めへの制球も悪くありません。ただもう少し長く地面を押しつけられるような粘りが出てくると、もっと粘っこいイヤらしさが出てくると思います。

 「着地」までの粘りには欠けるのですが「開き」は平均的です。特に上手く球の出所を隠せていると言うほどではありませんが、ボールが見やすいと言うほどではありません。腕の振りにも無理はありませんし、上手く振り抜けていると思います。もう少し下半身を上手く使って「体重移動」ができるようになると、もっと体重が乗った、グッと手元まで来るような勢いが出てくると思います。

 どうもフォーム全体に言えるのは、下半身の使い方にあるようです。この辺がプロ入り後改善できてくると、もっと粘っこい地に足の着いた投球が期待できそうです。


(最後に)

 ピッチングの基礎ができているので、全く使えないとは考えづらいです。ただ本当に微妙なレベルで成り立っている投手なので、好調維持を長くできるだけの体力と精神的なスタミナも求められます。そういった意味では、長いシーズンをこなすプロ向きなのかは微妙だと言えそうです。それでも制球力・マウンド捌き、投球のメリハリもきき、いわゆる「投球ができる」点は、高く評価したいポイント。

 プロ入り後も、大学時代同様に緩やかな成長曲線を描くことができれば、何年後かにはローテーションの一角として、貴重な役割を果たして行くことも期待できます。一年目から一軍半程度の活躍はできると思いますが、本当の意味で活躍できるのは、数年かかるのではないのでしょうか。ジワジワと成長してゆける努力型であり、何かを見出してゆけるタイプ。あえて一年目から多大な期待をかけたり、高い順位での指名で獲得しないのであれば、面白い存在ではないのでしょうか。一つ間違えれば、何の特徴もない投手で終わりそうな怖さはありますが、アンして使えそうな使い勝手の良さを、むしろ評価したいと思います。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2011年 大学選手権)