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野村 祐輔(27歳・広島)noteレポートへ








野村 祐輔(広島)投手のルーキー回顧へ




 野村 祐輔(明治大)投手 177/72 右/右 (広陵出身)
 




               「別に問題ないんじゃないかな。」





4年秋の 野村 祐輔の成績は、ここまでで 7試合 5勝1敗 防御率 2.68 と、勝ち星こそ恵まれているが、防御率や被安打などが高く、精彩に欠く投球が目立つ。しかし今シーズン最初の登板となった早稲田大学との一回戦では、これまでの集大成と言うぐらいの内容を魅せてくれて、私はそれほど悲観しなくても良いのではないかと考える。

今回の狂いは、日米大学野球などでアメリカにも遠征。春から休む間もなくシーズンに突入していことも、一つ原因だと考えられる。特に緒戦の早稲田戦の投球は見事だったのだから、特に能力を落とした理由も見当たらず、私はそれほど悲観する必要はないと判断した。ただ慶大戦を見ると、肘が下がって出てきたり、フォームのバランスを崩しているのかなと言う印象は受ける。





(何が素晴らしいのか)

野村を見ていて素晴らしいのは、普段のコントロールの素晴らしさにある。右打者外角一杯に決めるストレートの制球力とストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込むスライダーのコンビネーションは、プロのローテーション投球だと実感させられる。同様に左打者にも、外角に速球、スライダー・チェンジアップを集めることができ、外でしっかりピッチングを組み立てることは、プロの一流投手に不可欠な要素。

外角への投球が絶妙なだけでなく、内角にも厳しい攻めができる。そういった投球ができながら、緩いカーブを混ぜたり、フォークで空振りを誘えたりと、そのコンビネーションの豊富さと、多彩な球種を自由に操られる能力は、他のアマチュア投手にはない芸当だ。

また彼の特筆すべき点は、フィールディングの上手さ、牽制の鋭さ、クィックの素早さと、投球そのもの以外の部分にまで追求されている点。そこからは、彼の野球への意識の高さとその野球センスを垣間見ることができる。

(心配な点)

これだけ普段から神経を使って投球をしていると、その集中力を1試合持続させるのは正直困難だ。まして圧倒的に打力の違うプロの打者相手には、なおさら神経をすり減らさなければならない。そう考えると、もう少し抜くところはぬきつつ、勝負どころではアバウトでもいいから、大胆に開き直ることも覚え無いと、とてもプロで一試合、もしくは長いシーズンをこなして行くことは困難なこと。これは藤岡(東洋大)にも言えることだが、普段から100%を求めすぎて、返って肝心なところで力が発揮できない傾向にある。ピンチになって大事なのは、繊細なコントロールよりも、開き直って腕を振れる大胆さだ。これを身につけないと、プロで二桁という領域は見えてこない。

そうやって自分の気持ちを、どんどんと汲々とさせて追い込んでしまう完璧主義なところがあるので、どうしても勝負どころでは力んで、甘いところ甘いところに入ったり、普段よりもいい球が行かなくなる。彼がここ一番に弱いのには、気持ちの持ち方、勝負どころでの力の加減を、履き違えてているからだと私は考える。そこで勝てるコツを覚えられるかで、成績は全然変わって来るはずだ。

(この秋の変化)

下半身の筋肉などを中心に、だいぶ体に厚みが出てきた。以前よりもボール全体に、ボリューム感が感じられるようになってきて、投球の薄っぺらさがなくなってきている。

フォームを見ていると、以前よりも「着地」までの粘りが出てきて、「開き」も少し遅くなってきたように思えます。すなわち打者からは、タイミングが合わされ難くなっているはずです。しかし実際には、被安打が増えています。

この矛盾はなんのか?何か足の甲の押しつけが浮き気味で、しっかり押しつけられていないように見えました。これによりボールが上吊りやすくなっているのではないかと思います。ようは、以前よりも「着地」の粘りは出ているようには見えますが、少し腰高になって下半身が上手く使えていないという非常に微妙な狂いが生じているように思えるのです。ようはタイミングは狂わせられるように少しはなったが、そのぶん制球が甘くなっているのではないかと。

あとは、これは終始今までそうだったのですが、やはり「体重移動」が発展途上であり、ボールに上手く体重が乗せきれていません。そのため彼のボールには、勢いや球威といった意味で、凄みが感じられないのだと思います。

春と比べても、微妙なフォームの狂いが生じています。これは意図的なのか、それとも単にバランスが崩れているのか?あるいは、筋肉のつき方など肉体の変化によるものなのかはわかりません。ただそういったフォームの狂いを指摘してくれる、指導者のいる環境に進まれることを祈ります。





(最後に)

春にも書いたことですが、彼が早く一人前になるには大事な条件がある。それは、彼がいきなりエースのような立場になるような球団ではなく、すでに絶対的なエースがチームにいて、その脇を固める立場として実力を養う期間が必要だと言うこと。妙なプレッシャーを感じることなく、チームの2番手、3番手ぐらいの立場で、毎年安定した成績をあげる。そんな役割が、彼には合っている気がするのだ。そういった意味では、彼は入る球団によって、随分とその後の野球人生は変わって来るのではないだろうか。

ただいずれにしても、今季の内容で悲観する必要はないだろう。勿論入る環境にも左右されそうだが、今の力を持ってすれば開幕からローテーションの一角に。年間通して、7,8勝~10勝ぐらいは望める成績を残すのではないのだろうか。菅野(東海大)・藤岡(東洋大)と比べても、最も失敗するリスクが少ない投手。そう計算の立つ投手が、この 野村 祐輔 だといえよう。この秋の内容を見ても、その評価が変わることはありえない。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2011年 秋)












 野村 祐輔(明大)投手 の成績を考える!
 

(リーグ成績)

 リーグ通算24勝をあげ、六大学屈指の残す。ドラフトBIG3の一人。これまで六大学で残した、実績について考えてみたい。

リーグ 試合数 勝ち 負け イニング 被安打 四死球 奪三振 防御率
1年春 20 14 21 1.80
1年秋 34回2/3 18 13 41 0.00
2年春 39回1/3 34 12 50 2.52
2年秋 43回2/3 35 29 1.85
3年春 42 30 38 2.14
3年秋 55回1/3 48 54 1.30
4年春 65 44 68 2.08
4年秋 65 65 10 57 2.91

1,被安打は、イニング数の70%以下 

 1年時は、被安打率を70%以下に抑えることができていたが、長らくこのファクターを満たせず。今春久々に、このファクターを満たすことができた。多彩な球種を駆使して巧みな投球をしても被安打が多いのは、やはりその中心をなすストレートの球威の無さにあるのではないのだろうか。やはり甘く入ると怖いと言う印象は、球速を増した今でも残る。

2,四死球は、イニングの1/3以下 

 2年秋から、格段に四死球が減って制球力が向上していることがわかる。無駄な四死球を出す不安定さは、ほぼなくなったと見て好いだろう。

3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 

 ほぼすべてのシーズンで、イニング数を上回るだけの奪三振を奪っている。この選手の場合、多彩な球種を駆使しする投手にありがちな、器用貧乏な側面がない。どの変化球でも、しっかりそれぞれの役割を果たすことができている。三振を狙いたい時は狙い、ゲッツーを狙う時はそういう風にし向ける投球ができるのだ。

4,防御率は、1点台が望ましい 

 2年時からは、春のシーズンに防御率2点台の数字を残し、秋のシーズンに1点台にと言う、完全に秋型選手の成績を残している。最終学年では、集大成の文句なしの成績を残してくれるだろうか?


(データからわかること)

 極端に調子を崩すことなく、毎シーズン安定した成績を残してきた。特に3年秋・4年春とチームのエースとして、5勝ずつマーク。少しずつ勝てる投手との様相を強めつつはあるが、まだ本当の意味で、ここでと言う試合でとりこぼす勝負弱さを露呈する。ラストシーズンではチームを優勝に導き、日本一の栄冠を手に入れられるのか注目したい。

 残してきた実績、プロでの活躍をも予感させる各ファクターを満たす充分な数字を残してきた。投球同様に成績的に絶対的な凄みはないが、プロの世界でも安定して成績を残す選手になるのではないかと言う期待を抱かせてくれる。









 野村 祐輔(明治大)投手 177/72 右/右 (広陵出身)
 




                  「完成度NO.1」





六大学通算24勝をあげ、リーグ屈指の実績を誇る 野村 祐輔。その投球は、今年のドラフト候補の中でも最も計算できるほどの完成度を誇る。その彼の、プロでの可能性について考察してみた。


(投球内容)

広陵高校時代から野村は、素直なフォーム、綺麗過ぎるぐらいの球質の投手だった。そのため甘く入った球を痛打されると言う、手痛い負けを多く経験。この経験を元に、ストレートを微妙に動かすカットボールやツーシームなどの球種で、バットの芯をズラす投球を磨いていきた。その一方で、投球となるストレートを磨くことは忘れず、コンスタントに140キロ台を記録し、最速では140キロ台後半にも到達する空振りの取れるストレートを磨いてきた。変化球は、カーブ・スライダー・外角に小さく沈むチェンジアップ・カットボール・ツーシームなど、一つ一つの球が、見事にコンビネーションを彩っている。投球において、無駄な球、配球の意図に沿っていない球がないのは、この投手の投球を見ていて忘れてはいけないポイント。

その変化球を交えながら、両サイド・高低を生かしたストライクゾーンを幅広く使える配球は、まさにプロのローテーションレベルの投球を、すでに実戦していると言えよう。ベースカバーにも素早く入るフィールディング・相手への鋭い牽制を魅せなくてもランナーを目で威嚇でき、時には素早くターンする牽制を魅せる。クィックも1.0秒台で投げ込む高速クィック。ピンチになれば、しっかりマウンドを外したり、間を取ったりと自分のペースに相手を引き込む投球術。現在持ち得る総合力・投手としてのセンスは、今すぐプロのローテーション投手を担えるほどの力を身につけている。

(成績から考える)

これだけの投球ができるのだから、学生相手ならばそうは打たれないのではないかと思われるが、意外にそうでもないのだ。そこで今シーズンの成績から考えてみたい。

9試合 5勝3敗 65回 44安打 7四死球 68奪三振 防御率 2.08

1,被安打は、イニング数の70%以下 ○

今シーズンの被安打率は、61.5%。この数字からも、基準を満たすだけの投球はしている。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ◎

四死球率は、10.7%。イニングの1/3以下が基準であることを考えると、充分すぎる制球力があることがわかる。

3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 ◯

奪三振率も、イニング数を上回る、1.05個を記録し、このファクターも満たすだけの決め手を持っている。

4,防御率は、1点台が望ましい △

1年秋に、驚異の防御率0.00を達成したものの、その後は2点台と1点台のシーズンを交互に繰り返している。ここまで完璧にファクターを満たした成績も、このファクターだけは微妙だと言うことになる。

まさにこの部分が、野村を如実に現すデータだと私は考える。実際野村の投球は、生で見ていても凄みはけして感じない。常に甘く入ると怖いなと言うハラハラ感がつきまとう。それでも普段の投球では、隙無しの投球をしているのだが、時々ふとポカを食らったり、プレッシャーのかかる場面での勝負弱さを顔を覗かせる。高校3年の夏、佐賀北高校戦で好投しながら、押し出しや満塁ホームランを打たれて逆転されたような、好投していたけど報われないケース。これは、六大学24勝の実績を積み重ねた今でも、本質的には払拭しきれていない気がするのだ。

(今後は)

六大学の絶対的なエースとして君臨しながらも、この春5勝しながらも大事な試合を落とし3敗をきした。そのため大学生最高の舞台である、大学選手権に出場すること叶わなかった。

残念ながら、この大事な試合で勝ちきれない投球は、プロでもついてまわるものと私は考える。怪我さえなければ、開幕からローテーション投手として入り10勝前後は勝てるだけの投手だろう。ただこの投手は、あくまでもチームに絶対的なエースがいて、その脇を固めることで力を発揮するタイプ。彼自身がエースと呼ばれる存在になってしまうと、ことごとく相手エースとの投げ合いで勝ちきれないケースが多々出てくるのではないかと想像する。

そういった意味では、すでにエースがしっかり確立されているチームに入ること。そして将来のエースとしてよりも、計算できる先発投手を一人加えたい、そう考えているチームに進むことが、この選手のためになるのではないかと思うのだ。そういった環境に進みさえすれば、今年のルーキーの中でも最も安心して観ていられる存在。その期待に応える活躍が、期待できるのではないのだろうか。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2011年 春季リーグ戦)









 野村 祐輔 の投球フォームを考える!
 
 2011年のドラフト候補の中でも、最も完成度が高いと言われる 野村 祐輔 。今回は、その投球フォームについて、考えてゆきたい。


<踏み出し> ☆☆☆☆

 足を軽く引き、ノーワインドアップから投げ込みます。足をスッと引き上げる勢いがあり、その足の高さはそれなりです。フォーム最初のエネルギーの捻出と言う意味では、無理がない割に、しっかり作り出されているのではないのでしょうか。

<軸足への乗せとバランス> ☆☆

 足を引き上げ軸足一本で立った時に、軸足の膝から上の部分が、ピンと真っ直ぐ上に向かって伸びてしまっています。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと

1,フォームに余計な力が入り力みにつながる

2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい

3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い

などの問題が生じます。そのため立った時に、地面から真っ直ぐ直立して立ってしまい、上体が突っ込みやすい立ち方です。軸足への体重の乗せ具合やバランスと言う意味では、けして好い立ち方ではありません。

<お尻の落としと着地> ☆☆☆

 軸足一本で立ったときのバランスの悪さを、引き上げた足を二塁方向に送ることで、全体のバランスを修正しています。そして、お尻を一塁側に落とすことが出来ています。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながります。

 ただそれでも着地までの「間」はあまり取れず、あっさり地面を捉えているのは気になります。着地を遅らせる意味としては

1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。

2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。

3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。

などがあります。彼のフォームに嫌らしさを感じないのは、この着地までの粘りに欠けるからだと言えるでしょう。更に多彩な変化球を駆使致しますが、絶対的な球種がないのも、実は着地によって充分変化球を捻り出すだけの時間を確保できていないからだと考えられます。投球フォームの核は、まさに着地までの粘りだと言えます。

<グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆☆

 グラブは、最後まで内にしっかり抱えることが出来ています。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになります。

 また足の甲の押しつけが深いのも、彼の大きな特徴です。足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがあります。彼の両サイド・高低を生かした制球力の高さは、この動作がしっかりできていることも、大きな要因としてあげられます。

<球の行方> ☆☆☆

 着地までが早いので、自然と体の開きも早くなり、ボールの出所が打者から見やすくなっています。腕の振り自体には無理がない投げ方なので、大学入学時から常に安定して投げてこられた故障し難いフォームになっています。指先の感覚に優れ、球持ちはいいものがあります。ボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

などがあげられます。

<フィニッシュ> ☆☆☆

 彼の良さは、ストレートと同じ腕の振りで、多彩な変化球を投げられるところです。ボール自体は開きが早くわかりやすいのですが、そのボールがどのように変化するのかは、なかなか見分けにくい特徴があります。

 ただ前にグッと体重が乗って来るような「体重移動」が好いフォームではありません。これは、以前よりは良くなっているようには見えますが、大きくは改善されていないポイント。そのため打者の手元で、グッと伸びてくるような勢いのある球はあまり来ません。ですのでストレートには、威圧感や勢いを感じることは、その球速ほどないように思えます。

 その最大の要因は、足の甲で地面を押しつける時に、膝小僧まで土が着いてしまうほど重心が深く沈み込んでいるからです。ここまで深く重心が沈んでしまうと、体重が後ろに残って前への体重移動を阻害します。ただ低めに球を集める安定した制球を重視している彼のピッチングですから、必ずしも悪いことばかりとも言い切れません。球の勢いを重視するのか、それとも低めの制球を重視するのかと言う考え方次第です。


(投球フォームのまとめ)

 意外に完成度が高いフォームだと思われがちですが、開きが早く、着地までの粘りに欠けるので、打者としてはそれほど苦になるような嫌らしさや怖さを感じるような迫力はありません。

 非常に体に負担のかかり難い、ロスの少ないフォームであるように思えます。それゆえに4年間もの間、大きな故障を経験することなく、ここまで安定した成績を収められたのかもしれません。

 そういったスケールや嫌らしさと言う部分を重視するスタイルではないのが、この投手の一つ特徴としてあげられます。安定して常に計算できる投手。試合を壊さないで後の投手につなげる、そんな活躍がプロでも期待ができそうです。


(2011年 春季リーグ戦)




 
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野村 祐輔(明治大)投手 176/72 右/右 (広陵出身)


(どんな選手?)

 広陵出身の選手で、甲子園を沸かした好投手です。個人的にも、この選手の3年時の成長を絶賛し、将来を非常に楽しみにしていた投手でした。今や六大学を代表する投手に成長し、再来年の上位指名候補と言われるまでになりました。





(投球内容)

 中背で、バランスの好いフォームから投げ込みます。その球速は、コンスタントに140キロ台を記録し、140キロ台中盤前後の球速も結構記録します。手元までしっかり伸びる球質で、打者の空振りを誘える良さがあります。その反面、それほど球威はないので、甘く入ると怖いかなと言う側面も併せ持ちます。

 変化球は、ブレーキの好いカーブ・カットボール・フォーク・チェンジアップなど実に多彩な球種を併せ持ちます。落ち着いたフィールディング・1.1~1.2秒台ぐらいの素早いクィック・鋭い牽制・間のとり方や指先の感覚の良さなど、肉体的なポテンシャルよりも、高い野球センスが際立つタイプです。

 右打者には、アウトコース中心に球を集め、左打者には両サイドに球を投げ分けてきます。真ん中近辺に甘く入ることはなく、制球力も中々好いものがあります。

 投球フォームも、お尻を一塁側には落とせるのですが、「着地」までの粘りに欠けるので、少し物足りなさを感じます。また「開き」も少し早く、更に前にグッと乗って来るような「体重移動」もないなど、指先の感覚抜群の「球持ち」を除けば、不満な部分も少なくありません。


(今後は)

 凄みこそないのですが、多彩な球種を交えた総合力・マウンド捌きなどを見ていると、すでにプロでもローテーションを担えるのではないかとさえ思えるぐらいの投手です。ただ先輩である川上憲伸あたりと比べると、まだワンランク落ちるかなと言う印象は受けます。

 フォームでも投球でも、まだまだ物足ない部分もあるので、高い志しを持って、残りの2年で更なる進化を期待したいところです。まだ世代を引っ張って行くような、圧倒的な凄みには欠ける気が致します。



(2009年・神宮大会)




楽天


野村 祐輔(広島・広陵)投手 175/63 右/右

 田中健二朗(常葉菊川)投手と共に、最も昨秋から大きな成長を魅せたのが、この野村投手だろう。ひ弱さがあった昨秋から、上体を強く振れるように見違えるように腕の振りが力強くなった。

 常時球速は、135~139キロ程度ではあったが、横滑りするスライダー・ブレーキの好いカーブなど、非常にオーソドックスなピッチングスタイル。特に右打者アウトローに速球とスライダーが決まった時は手が出ない。左打者にもアウトローを突けるなど、かなり制球力も向上しているが、高めに浮いたところを痛打される場面が目立つ。

 確かに力強くはなっているが、元々球威に欠ける部分があるだけに、甘く入ると怖い。ただ落ち着いたマウンド捌き・両サイドの投げ分ける制球力・スライダーの活かし方など、投球センスにも好いものを持っている。夏には、140キロ台にも乗せて来るだろうが、その素質が本当に開花するのは、大学に進んでからだろう。高い将来性を持った選手だけに、これからも注目し続けたい投手だった。

(2007年・選抜)



投球スタンス

 大体球速は130km前後、いや130km出てないだろう常時120後半から130前半と考えていい。しかし球質はよい体のサイズの割には重そうに思える。

変化球

 非常に大きく割れる変化球を持っている、スライダーらしいがよく切れる、少なくとも自分には縦に落ちてるように見えた、球筋こそ違えど、以前寸評した丸山投手クラスではある。コントロール基本的には素晴らしい、平常心の時のコントロールはキャッチャーミットに収まっている

心の隙

 普通のコントロールは素晴らしい、ではランナーがいたりして何か仕掛けようとした時は?私には2つの顔が見えた、1つは弱気である、ワイルドピッチすれすれの球が見受けられた。2つ目は強気である、ここぞという時のスライダーのコントロールこれは高校生のレベルでは上位のほうではないだろうか?  もしかすると少し精神的にタフネスではないのかもしれない。

フォーム

全体像

 バランスが取れているとは思う、体は使えてるし、高校生では上位クラスだろう、だがまだ改良の余地は十分にあるそれを一つずつ拾ってみよう思う始動から沈み込みいたってこの辺には問題ないと思われる、その根拠は1、目線がキャッチャーから切れてない2、両肩のラインが平行なため右腕を下ろしたときに上手くためができている、それは、でん部の沈みこみからも納得してもらえると思う。

沈み込みから投げる寸前

 ここで始めて私が、野村投手に対する疑問が生まれたのは、しっかり軸足は蹴れているのに、その蹴り方にまだ余力が残ってる、言い換えると素直にまっすぐ蹴るから軸足が早く折れてしまう、そのため軸足が打者に対して早めに投球モーションに入るのだろう

投球からフォロースルー

 体幹筋、肩の平行バランス、左腕の引き付け、右ひじの使い方は素晴らしい、右足のエッジも効いているしかしリリースする時、顔がキャッチャーに向いてない、視線が切れてるのだ、これでは、最終的な力の終点が左にずれてしまい、これでは野村投手の球質の向上は望めない


対応策

1、軸足の蹴りだしの時(野村投手は右投げなので)足の裏を時計回転的なうねりを加えたらどうだろうか?
  こうするだけで筋力から生み出される力が増加され内股の筋力も効果的に使えるだろうと私は考える。
  これだけでは分かりにくいので例を挙げると「雑巾絞り」である、蹴りだしの足を雑巾と考えると
  絞ることにより雑巾から水が絞り出て硬くなる・・・これはどこか野球に似てないだろうか?
  水に浸された雑巾=人間、搾り出された水=力 とあてはめるのである、野球とはうねる力と
  前に押し出す力の競技であると私は思う。

2、キャッチャーから目線をきらない、これは上記したうねりを使うことができるのである、ただし
  上記した事ができていればというのが前提である、各筋力からうねり出された筋力は当人の中では
  非常に強いものへと昇華しているそれをまとめるのが顔の役目である
  と記述したが実際はうねりができていればそう難しくない、なぜなら、うねりは力を前に出すために
  強力にサポートしてくれるものだからだ、あとは体感してもらった方が早いと思う。


総括

非常にバランスの取れた投手で高校レベルならトップクラスであろう、ただあくまで高校レベルでの話である
それ以上のレベルで野球しようと思えば決して今のままでは通用しないことは自覚しておいて欲しい。
特に彼は線が細い、一冬越えての成長も楽しみだ、彼には投球技術が備わっているので、あとはどこまで
スケールアップできるか、わたしは彼には「広陵の野村」で終わって欲しくはないと考える。それは
彼にはまだまだ伸びしろがあるからだ、ともかく、今日の宇部商戦に母校の選抜出場を期待したい。
 

(2007年 11月4日 東洋大生氏)



 オーソドックスな右の本格派右腕で、まだまだ線は細いのだが、コンスタントに135キロ前後(MAX139キロ)を記録する好投手。球種は、カーブ・スライダー・チェンジアップ等があるが、特に右打者のアウトコース低めに小さく横滑りするスライダーのキレと活かし方が、最大の魅力。

 とにかく凄みはないのだが、落ち着いたマウンド捌き、両サイドを丁寧に突いて来るピッチングスタイル。投球がしっかり組み立てられ、いかにも投手らしい投手だ。

 課題は、球速の割にまだまだ球威に欠け、球にボリューム感がないところ。ただ2年秋の時点で、この球速なのだから、当然一冬超えた選抜では、常時140キロ近い投球は期待出来そうだ。恐らく大学・社会人経由の投手だと思われるが、更にその先を見据えて考えてみると、覚えていて損のない投手だろう。選抜で、再度チェックを入れてみたい投手だった。


(2006年・秋)