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塚田 晃平(広島)投手のルーキー回顧へ



 塚田 晃平(早稲田大)投手 192/87 右/右
 




                     「正直厳しいねぇ!」





 早くから大器だとは聞いていたが、実際に公式戦に登場するようになったのは、4年春のシーズンから。長身から繰り出される140キロ前後のストレートとフォークとのコンビネーションも、投手としては素材型高校生レベル。果たして、プロでその才能を開花させることができるのだろうか?


(投球内容)

 スラッとした投手体型が目を惹くが、まだ線が細く、その動作にも身が入っていない。イメージ的には、明大時代の牛田 成樹(横浜)投手を、更に貧弱にした感じだろうか。

ストレート 140キロ前後~MAX144キロ

 実際ボール自体も、ビシッと手元まで伸びてこないので、球速表示が出ても打者は苦にならない。もう少し体幹が強くならないと、ビシッとした球は行かないだろう。フォークボーラーだが、ストレートがこれならば狙い打ちされるし、フォークも見極められてしまうのではないのだろうか。

変化球 フォーク

 速球以外の変化球は、ほぼフォークと言って好い。またそのフォークボールの制球・キレとも未完成で、曲がりが早く実戦的とは言えない。

その他

 牽制も、それほど上手いとは言えない。特にランナーへの注意力はイマイチで、フォームを盗むのも、それほど難しくはないだろう。クィックは、1.2秒前後とほぼ基準レベル。しかし現状は、ランナーが出てもピッチングに専念するしかないといった感じで、走者に構っている余裕は正直ない。

(投球のまとめ)

 体がビシッとしてこないと、ストレートの質も向上してこない。これでは、ストレートで仕留めきることもできなければ、フォークも見極められてしまう。そのフォークも、曲がりが早すぎて、滅多に空振りを誘えることもないし、他にカウントが稼げる変化球もないので、速球とフォークとの単調なコンビネーションをせざる得ない。

 これでは地方の素材型高校生と同じで、一軍で使えるようにするのは、かなり厳しいと言わざるえない。


(投球フォーム)

<広がる可能性>

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻を一塁側に落とせない。すなわちフォークを投げるのに必要な、体を捻り出すスペースが確保できていないのだ。そのため今のままだと、打者の空振りを誘うような鋭く落ちるフォークの習得は厳しいだろう。

 それでも「着地」までの粘りは平均的で、体を捻りだすための時間は、ある程度確保できている。むしろ速球やカーブといった球種よりも、それ以外の球速豊かな変化球を習得し、投球の幅を広げて行くべきではないのだろうか。

<ボールの支配>

 グラブは、最後まで内に抱えられているので、両サイドへの制球はつけやすい。ただ足の甲での地面の押しつけは、完全に足が浮いてしまっている。これでは、力を入れて投げたら、みんな浮いてしまうだろう。また「球持ち」は平均的なものの、指先の感覚はよさそうではない。将来的にも、このアバウトな制球が改善できるのかは厳しいだろう。

<故障のリスク>

 お尻が一塁側に落とせない割に、フォークを多投することを考えると、かなり体への負担は大きなフォーム。ただ腕の角度には無理がないので、肩よりも肘への故障を注意したい。日頃から体の手入れには、充分注意したい。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りは悪くないものの、やや体の「開き」が早い気がする。そのため今のままでは、球速が増しても、その効果は薄いものと考えられる。

 腕の振りは、最後体に絡んでくるなど悪くはない。ただ足の甲を使って「体重移動」がちゃんとできていないので、ボールの質が向上してこない。重心をもう少し沈ませ、しっかりエネルギー伝達できるようにしないと、球質は改善されないだろう。

(投球フォームのまとめ)

 「着地」や「球持ち」は平均的も、「開き」や「体重移動」には課題を残すフォームとなっている。特に速球の勢いが求められるフォークボーラーだけに、速球がビシッとしてこないことには、投球が成り立たない。おそらく体を鍛えるだけでは、この問題は改善できず、フォームを改善して行かないと無理だろう。そのことに早く気がつき、改善して行けるのか。これによって、この選手の未来は大きく変わってきそうだ。


(最後に)

 実際の投球やフォームを分析する限り、プロ入り云々というレベルには達していない。恐らく今のままでは、社会人に進んでも潰れてしまうから、プロで育成した方が得策だと考えたのだろうか。

 当然「育成枠」で指名したということは、そのことは充分承知の上でのはず。ただプロ入りの「旬」とは何かと考えた時、私は一年目からファームの実戦に入って行ける、基礎技術・基礎体力・精神力を持ち合わせていることだと考えるのだ。もしファームでも実戦レベルに達していないでプロ入りすれば、出場するたびに自信を失っていって、どんどんとプレーが萎縮して行ってしまう。しかしプロで資質を伸ばすのには、やはり実戦経験を積むしかない。そう考えると、プロ入りの「旬」の時期とは、幾ら素材型の選手でも、ファームの試合にならば、試合をつくることができるレベルにあるかと言うこと。そう考えると、今の塚田は残念ながら、そのレベルに達しているようには思えない。私には、やはり今プロに入るべき選手ではないと判断する。


(2011年 秋季リーグ戦)