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木村 敏靖(楽天)投手のルーキー回顧へ



木村 敏靖(21歳・履正社スポーツ専門学校)投手&外野 176/76 右/左(御所実出身) 
 




                    「内野手として鍛えてみたい」





 MAX152キロの速球に、野手としての才能も評価されている 木村 敏靖 。 彼の高校3年夏の最後の試合となった、桜井戦の模様を見直してみた。履正社医療スポーツ専門学校に進んでからのプレーは確認できていないが、個人的には内野手として育ててみたいと思わせる選手だった。


(投手としては)

 重心が非常に深く沈み込むフォームで、腕の振りは少しスリークオーター気味に投げ込んでくる。敗れた桜井戦でも、9回を3失点ながら完投している。

ストレート 常時135キロ前後~後半 
☆☆☆★ 3.5

 当時のMAXは、137.8キロだと実況でも話していた。ストレートには力があり、常時130キロ台中盤~速い球では140キロ台を越えているのではないかと思わせる勢い・球威がある。それが履正社専門学校に進んでからは、2年時の大会でMAX152キロを記録。ストレートの球速は、当時から比べても格段に速くなっている。

 ただし3年時になると、リリーフ中心に大会でもちょろっと投げる程度。恐らくその理由は、高校時代からの課題であるコントロールが不安定で、首脳陣も信頼しきれなかったからではないのだろうか? ストレートの威力・球速は申し分ないが、それを制御する能力に劣っていたのではないかと推測する。

変化球 スライダー、フォークなど 
☆☆ 2.0

 横滑りするスライダーとのコンビネーションで、この球でカウントを整えることができる。しかし曲がり自体に特別なものはなく、あくまでもストライクゾーンに集められるといった程度で、細かい投げ分けもあまりできない。フォークも当時からあるということだったが、大事なところで使える代物ではなかったようだ。

その他

 特筆すべきは、投球以外の部分。牽制は非常に鋭く力を入れて投げてくるし、クィックも1.05~1.15秒前後で投げ込めて素早い。しかしそれ以上に凄いのが、圧倒的なスピードでマウンドを駆け下りるフィールディングの早さにある。さらにベースカバーに入るのも非常に速く、この点では過去殆ど記憶がないぐらい優れている。小回りが訊くとかボール捌きが上手いとかいうよりも、とにかく速い!

(投球のまとめ)

 高校時代から速球に光るものはあったが、専門学校に進んでからは球速は格段に速くなったようだ。しかし当時から不安だった制球は改善されないままなのか? 出番は極めてチームでも限られていた。凄い球を投げられる素材を買ってということの指名かもしれないが、それ以外の部分はプロの育成に託すという形の選手であり、実戦的というのとは無縁なのではないのだろうか。





(野手としては)

 専門学校に進んでからは、投げない日は外野手として出場。しかしフィールディングやベースカバーの上手さからも、ぜひ内野手として育ててみたいと思わせる素材。一塁までの塁間も、3.95秒前後とかなりの脚力の持ち主。打者としては打球は強いが、それほど打球が上がるタイプの打者ではない。専門学校時のスイング映像を観ると、バットコントロールに優れた選手という感じだが、高校時代は強い打球・スイングで野手の間を強烈な打球で抜けてゆくタイプ見えた。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前足を引いた左オープンスタンスで、グリップを高めに添えます。背すじをしっかり伸ばし、両目で前を見据える姿勢、全体のバランスにも優れた良い構えだといえます。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る途中あたりで動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、アベレージ打者に多く観られる仕掛けであり、確実性を重視していたことが伺われる。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を軽く上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。

 踏み込んだ足元もブレないので、外に逃げてゆく球や低めの球に対しても、身体を残してうまく食いつくことができます。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、ボールを呼び込む際にも力みは感じられない。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトではなく、外の球をしなりを活かしてしっかり叩くタイプ。インパクトの際にもバットの先端であるヘッドが下がらずに、広い面でボールを捉えることができている。打ち損じの少ない、アベレージヒッターらしいスイングだ。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げも静かで、目線の上下動も悪くない。身体の開きも我慢でき、軸足にも適度な粘りが感じられる。

(打者としてのまとめ)

 技術的には完成されており、上のレベルにも対応して行けるスイングをしてます。高校時代はそれほどボールをコンタクトする能力に優れているとは感じませんでしたが、専門学校での打撃フォームを観る限りバットコントロールに優れていて、ただ強く叩くだけでなくそういった部分でも魅力を感じる選手でした。レベルの高い相手と多く対峙し、プロのスピード・切れに早く慣れたい。

 強肩・俊足であるのは間違いないなく、身体能力、運動神経に優れた好打者。


(最後に)

 凄い球を投げるという付加価値は魅力ですが、プロで大成するとすれば野手としてではないのでしょうか。ぜひそのダッシュ力・スピード感を活かして、ショートにチャレンジして欲しい選手です。専門学校でのプレーはまともに観られていないので、投手としての成長ぶりはよくわからず。しかし高校時代の映像からしても、育成枠ならば面白い素材であることは間違いありません。確実にモノになる素材ではないでしょうが、夢を抱きたく選手であるのは間違いありません。


(2014年夏 奈良大会)