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荻野 貴幸(巨人)内野手のルーキー回顧へ




荻野 貴幸(愛工大)遊撃 176/65 右/左 (杜若出身)





               「何度も観ているはずなんだけどなぁ?」





 1年生の頃から全日本に招集されるなど、俊足・好守の打者として注目されてきた選手です。しかし私自身、全く記憶にございません。ただ彼のプレーが映っている試合は、下級生のものがありますので、今回はそれを参考にしながら、寸評を作成致しました。今年のプレーを確認できていないので、あくまでも評価づけはできないことを、あらかじめご了承くださいませ。


(プレースタイル)

 下記の動画を観て頂けるとわかるとおり、左右に打ち返す巧打者タイプです。特に足を使って揺さぶったりと走力全面に押し出し、下級生の頃から定評のある遊撃守備が最大の売りです。





(リーグ成績)


年度 試合数 本塁打 打点 盗塁 打率
1年春 .176
1年秋 12 .295
2年春 13 .265
2年秋 12 .250
3年春 12 .268
3年秋 10 .294
4年春 12 .217
4年秋 13 .212

1,リーグ戦で3本塁打以上は◯、5本塁打以上は◎

 リーグ通算本塁打は、僅かに1本。ボールを飛ばすことよりも転がすことが求められるタイプなので、このファクターは問題にはならない。

2、打点は5点以上で◯、10点以上で◎

 1,2番タイプなので、このファクターも問題ではない。

3、盗塁も5盗塁以上は◯、10盗塁以上は◎

 過去3度のシーズン5盗塁以上を記録するなど、走力はまずまず。ただ上級生になるに連れ、盗塁の数が少なくなっているのは気になるところ。

4,打率は、3割5分以上が目安。4年間で一度ぐらいは、4割を超えていたい。

 激戦の愛知リーグとはいえ、打率を一度も3割を越えたことがないのは気になるところ。私が何度か観ても記憶がないのは、この打撃に光るものを感じなかったからだろう。

(データを観てわかること)

 どのファクターも図抜けたものがないのが気になるところ。特に打撃も弱く、上級生になるにつれ、内容が悪くなっているのが気になるのだが・・・。この数字を観ている限りは、あまり野球への意識・向上心が高い選手ではないのではないかと言う気はしてくる。





(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.0秒前後ぐらい。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記のリーグ戦実績でも、5盗塁を越えるシーズンが3回あるなど、盗塁する能力もソコソコ。セーフティバントで揺さぶることもあり、足を全面に出したプレースタイルだ。ただプロレベルに混ぜると、絶対的なスピードではないのも確か。あとは、本人の意識とセンス次第では、プロで足を売りにできるのかは決まって来るだろう。

 遊撃手としては、ボールに食らいつく姿勢が下級生の時は見られました。そのため広い守備範囲が自慢で、地肩もそれなりに強い選手です。上級生になり、どの程度上手くなったかはわかりませんが、プロでも二遊間を期待される素材だとは思います。





(打撃内容)

 完全に、左右に打ち返す巧打者・揺さぶり型の選手です。ただプロ入りするような選手にしては、少々打撃が弱いのかなと言う印象は否めません。


(打撃フォーム)


<構え> 
☆☆☆☆

 下級生の頃よりも上級生になってからは、前足の引きが小さくなり、スクエアスタンスに近い形になっているように思えます。グリップは高い位置まで引き上げられているのですが、バットを倒して添えられております。これは、ボールを上から叩こうと言う意識からではないのでしょうか。

 腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢は悪くなく、身体を動かして自分のリズムで打席に立てております。

<仕掛け> 
遅すぎる仕掛け 投手のリリース前後に始動

 多くの欧米人やキューバ人などは、このタイミングで始動する。狙い球を絞って、打てる球を引っぱたく、そんなスタイルを取る。ただこのようなスタイルは、非常に脆く打てる球は限られる。

 また始動~インパクトまでの時間が極端に短いので、スイングに不可欠な動作を端折ることで、インパクトを間に合わせようとすることになる。それでも打ててしまう欧米人のヘッドスピードと筋力の強靱さは、残念ながら日本人には真似出来ない。日本人の場合このタイミングでは、プロレベルの投手を相手には通用ないと私は考えてている。ただし、もしこのタイミングの始動を使いこなす日本人が現れた時、パワーで世界のスラッガーと対峙出来る存在になっているだろう。

<下半身> 
☆☆

 投手の重心が下がって来る時に、一度つま先します。そこからリリース前後に小さくステップして来るタイプです。仕掛けが遅すぎるため、インパクトに間に合わせるために、打撃に必要な動作が端折られている典型的なタイプです。そのため打てるタイミングは極めて限られているので、どうしても狙い球を絞り、その球を逃さず叩く「鋭さ」が求められます。線よりも点でボールを捉えるタイプと言うことでしょうか。

 また左の巧打者にしては珍しく、ベース側にインステップして決まる。下級生の頃は、真っ直ぐ踏み出していたのですが、より左方向へ転がる意識を強く持っているのではないかと思います。足を活かしたいのはわかるのですが、右投手にクロスに食い込んで来る球に対しインステップすると、どうしても差し込まれやすくなることも否定できません。また内角の捌きも窮屈になりがちです。強打者タイプならばこれもありなのでしょうが、巧打者タイプの彼がこれを採用すると、打率が稼ぎ難いなど打てるコースが限定されそうです。

 ただ踏み込んだ足下は、インパクトの際にブレないのは評価できます。これによりカベを長くキープして、左方向への打撃を可能にしております。

<上半身> 
☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのが、バットの引きが遅く遅れがちです。これだと一定のスピード・球威・キレに立ち後れることが多いはずです。また下級生の頃の方が、上からバットが出ており、ボールを最短距離に振り抜けました。しかし上級生の頃は、むしろバットを寝かせて広い面でボールを捉えようと言う意識が感じられます。

 スイングは、コンパクトでシャープです。最後までしっかり振り切れており、全くひ弱と言う印象は受けません。ただ仕掛けや動作が立ち後れることに、大きな問題がありそうです。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げがほとんどないので、目線のブレ・狂いは少なそうです。身体の開きも我慢できているのですが、やや軸足が崩れる傾向にあり、安定した打撃が期待できないタイプかもしれません。

(打撃フォームのまとめ)

 仕掛けの遅さやトップの形成の遅さなど、アベレージを稼ぎたいタイプにしては、課題を多く持っております。実績的にも、図抜けたものを残せてこなかったのは、なるほどなと思わせる打撃の弱さがあります。


楽天


(最後に)

 総合力で物足りないからこその育成枠なので、この選手は打撃が完全に劣っております。ただ走力・守備力はまずまずのものがあり、そこに活路を見出したいタイプです。ただ守備・走力も、プロで売りにできるレベルかは微妙であると思うので、そこでアピールできるかが、まずポイントになりそうです。

 打撃は、けしてひ弱なわけではなく、構造的な問題です。染みついた癖を変えて行くのは難しいのですが、けしてできないことではありません。ただその課題を改善するまでに、プロ側が待ってくれるのか?そういった疑問を育成枠の選手には感じます。少々プロでは厳しい選手かなと思える部分もあるのですが、最終学年でのプレーぶりを確認できていないので、なんとも言えません。ぜひ来春は、その成長ぶりを確認したい一人です。


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