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大原 淳也(ベイスターズ)内野手のルーキー回顧へ







大原 淳也(四国・九州IL香川)遊撃 174/77 右/右





                「ボールに食らいつく姿勢がいい!」




 四国アイランドリーグ・香川の核弾頭として、チームを独立リーグ日本一に導いた選手です。攻守において、ボールに食らいつく姿勢をしばしばし魅せ、ただでは転ばないのが、この選手の最大の魅力です。





(守備・走塁面)

 一塁までの塁間を4.35秒強ぐらいで走り抜ける脚力で、これを左打者に換算すると4.05秒ぐらいに相当する。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。

 彼の場合、滅法足が速いわけではないが、その分積極的なプレーが、多くの盗塁を導いているのか、その数字以上に走塁センスがあるのかいずれかだろう。アイランドリーグでは、

 76試合で29盗塁を記録し、ソフトバンクに育成枠指名された安田 圭佑(四国・九州IL高知)外野種の46個に次ぐ2位となっている。安田が、NPBでも足を売りにできるレベルに対し、この大原の場合は、年間20個弱ぐらいの走力と言う印象は受ける。警戒される中、盗塁を決められるほど絶対的な走力があるのかは微妙。


 遊撃手としては、非常にスピード感があります。何よりプロで遊撃手を担うには、このスピード感溢れるプレーが、とてもその適正には重要な意味を持ちます。また地肩も強く、ボールを最後まで追う貪欲さがあり、充分にNPBにおいても二遊間を担って行ける資質がありそうです。グラブ捌きもよく、軽快かつスピード感溢れるプレーが期待できそうです。ただ確実性と言う意味で、何処まで繊細さがあるのかは少し気になりました。

 こと守備・走力にかけては、一年目からNPBに混ぜても充分やって行けそうです。ただその中で、何処まで売りにできるほどの絶対的なものがあるのかは微妙かなと言う印象は受けました。警戒される中で盗塁を決めるような絶対的な脚力・名手級のグラブ捌き、そういった突出したレベルまで到達するのか注目したいと思います。





(打撃スタイル)

 臭い球をカットしつつ、難しい球でも食らいついてボールを前にはじき返し気持ちの強さを感じさせます。粘って四球を選べますし、ツボにはまれば長打を呼び込める小力のあるタイプ。ベイスターズならば、かつての波留敏夫に近いタイプかと。アイランドリーグでは

76試合 10本塁打(2位)32打点(8位)・29盗塁(2位) 打率.314厘(4位)

と打撃各部門で、優れた数字を残している。


(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆

 
前足をベース側に軽く置く、クローズスタンス気味な構えです。クローズスタンスで気をつけないと行けないのは、高めの力のない変化球以外は、徹底的にセンターから右方向にはじき返す意識を徹底させることです。そうじゃないと、ボールをことごとく引っかけることになります。ただこの選手、打球の多くが二遊間に引っ張る巻き込み型なので、かなり矛盾スタイルであることが気になります。

 ただグリップの高さは平均的。腰の据わりもよく、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。自分のリズムを刻むようなことはないのですが、打席で隙なしの集中力が感じられ、けして悪い構えではありません。

<仕掛け> 
平均的な仕掛け 投手の重心が下がってきて底に到達したときに始動

 これが、最も平均的なタイミングでの始動となる。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備える万能型。主に中距離打者や打点を多く稼ぎたいポイントゲッターが多く採用するスタイルだ。ただ一見完璧そうに見えるこのスタイルも、実はアベレージ打者なのか、長距離打者なのか、どっちともつかずの特徴の見えにくいスタイルに陥りやすい。個性のない打者の多くが、この仕掛けを採用しているケースが多い。

<下半身> 
☆☆☆

 足をしっかり引き上げて回し込みます。始動してから地面に踏む込むまでの「間」が作れるタイプなので、いろいろな球速の変化に対応できるポイントの多さがある選手です。

 外角の球を強く意識し、ベース側に踏み込むインステップが特徴です。ただ強烈にインステップしながら、踏み込んだ足下が早く地面から離れるのが早いタイプで、完全に引っ張って巻き込む傾向にあります。打球もボールを引っかけて三遊間に転がることが少なくありません。かなり打てるコースに関しては、限られていると考えられます。最大の特徴は、踏み込みの強さ。強い踏み込みが、強烈な打球を生み出します。そういった意味では、NPBレベルの投手相手でも、力負けはしないのではないのでしょうか。

<上半身> 
☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのは平均的です。ただトップの段階になると、グリップがかなり内に入り込んでいるので、ボールに差し込まれやすいかなと言う印象は受けます。バットを上から振り下ろしますが、その時に少し身体から離れたところを軌道するので、最短距離でボールを叩くと言うタイプではありません。

 むしろスイングの弧は大きく、最後までしっかりバットを振り切る強打者スタイルです。元来ボールを遠くに運ぶスラッガーではありませんが、二塁打・三塁打などの長打は、結構期待できるタイプかと思います。あとは、けして踏み込んだ足下がブレるわけではないので、もっと右方向への打撃を意識したいところです。それができる下地は、充分あると思います。

<軸> 
☆☆☆

 足を上げ降ろすスタイルなので、頭が動き目線はブレやすく、ボールを的確に捉えられません。踏み込んだ足下がブレないしインステップなので、身体の開きは早くはありません。それなので右方向への意識も徹底できれば、それは充分可能な下地はあります。軸足の崩れも小さく、打撃には癖がありますが、安定して能力を発揮できるタイプだと考えられます。

(打撃のまとめ)

 技術的には結構癖がある選手で、打てる球は限られている印象があります。ですが元来ボールを当てるセンスは悪くなく、ボールに食らいつく気持ちの強い選手です。

 ヘッドスピードも鋭く打球も強烈で、NPBレベルの投手相手でも、その球威に力負けするようなひ弱さはありません。ただヘッドが結構内に入り込むのと引っ張り傾向が強いので、差し込まれたりボールを引っかけるケースが今よりも増えそうです。そのため打撃に関しては、一軍となると修正が必要で、即戦力と考えるのは厳しいと考えます。


楽天


(最後に)

 守・走は、一年目からNPBで通用するものがありそうです。それでいて気持ちや身体も強く、プロ向きな素材かと思います。いろいろ紆余曲折あって、ここまで野球を続けてきた選手。そういった精神的なタフさは、さすが独立リーグ出身の選手との印象を受けます。

 その一方で、かなり打撃に癖があり、けして打力がない選手ではありませんが、プロ入り後の修正が求められます。26歳と形のできている年齢なので、これを改善できる器用さやセンス・柔軟さがあるのかと言われると微妙だと言わざるえないでしょう。

 そういった修正を求められる選手でもあり、彼が大卒ぐらいの22、23ぐらいの年齢ならば、
も付けたいところです。しかしどこまで変化が期待できるかわからない年齢に達しつつあり、かつこの年齢でも一軍の即戦力となると難しいことを考えると、指名リストに載せると言うわけには行きませんでした。

 実力的には育成枠レベルぐらいの選手だと思いますが、ナイスガイであり面白い存在ではあると思います。大学・社会人などを含めても(高校生を除く)、今年ドラフト指名された内野手では、最も良い選手の一人ではあると思います。軌道修正ができるのかが一つポイントになりますが、7位指名ならば悪い指名ではなかったのではないのでしょうか。


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(2010年・春)