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安田 圭佑(ソフトバンク)外野手のルーキー回顧へ




安田 圭佑(四国・九州IL高知)右翼 176/75 左/左 (別府大出身)





              「スピード感は一級品なのだが・・・」





 守備でも走塁でも、トップスピードに乗る速さは一級品で、まさに野球に適した走力を身につけているのが、この 安田 圭佑 。打っても上手くボールに合わせるのが上手く、ミート力のある打撃が身上。ただ俊足・強肩・巧打と高いポテンシャルを秘めながら、何処か思いっきりの悪さと言うか、瞬間的な判断・積極さに物足りないものを感じさせる選手なのだ。





(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.0秒前後~速い時には3.85秒ぐらいで到達するなど、アイランドリーグでも68試合で46盗塁を決め、ダントツの盗塁王に輝いた。この速力ならば、NPBに混ざっても足を売りにできるスピードがある。特に優れているのが、トップスピードに到達するまでの加速の速さは一級品。ただ盗塁のスタート・判断力に関しては、少し私自身は疑問に思う部分もある。。

 また右翼手としても快足を活かし、実に守備範囲が広い。地肩も強いだけでなく、捕ってから素早く返球できる一連の流れの速さを身につけており実戦的。左の好打者にありがちな地肩の弱さはなく、守備・走力共に、NPBで売りにできるレベルにある。ただここでも少し気になるのは、意外に球際でのキャッチングには物足りないものがあり、そういった勝負どころでの物足りなさは、この選手のプレー全体につきまとう。





(打撃スタイル)

 この選手、昨年も岩尾 利弘(別府大-西武3位指名)投手を見に行った時に、名前があがっていたので見た記憶がある。そのときは、ボールを上手く合わせる技術がある好打者だったなと言う記憶が残っている。完全にこの選手は、巧打者であり強打を自慢にするタイプではない。ちなみに今季のアイランドリーグでの成績は、

68試合 0本 21打点 46盗塁(1位) 打率.302厘(6位)


<構え> 
☆☆☆☆

 左の巧打者らしく、前足を引いてボールを呼び込む左オープンスタンス。グリップの高さは平均的で、腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢も良い。打席でも自分のリズムで立てており、構えに関しては中々良い。

<仕掛け> 
早めの仕掛け&遅すぎる仕掛け

 足を早めに引き上げる時と、一度ベース側にチョンとステップした後に始動する、二つの仕掛けが見られる珍しいタイプ。これは何を意味しているのか?私が考えるに、元々「遅すぎる仕掛け」を採用するタイプだった彼が、打撃フォームを改造中で、意識がいっている時には「早めの仕掛け」を行っているが、時々元々の打撃フォームが出てしまうことがあるのではないのか?ただ今は、「早めの仕掛け」を重視して採用していると考えると、典型的なアベレージヒッターと言うことになり、彼のプレースタイルと合致している。

<下半身> 
☆☆☆

 足の上げ方に迷いがあるのが、どうしても打撃の思いっきりの悪さにつながっているのかもしれない。足を早めにしっかり引き上げるタイプなのだが、その足を降ろすタイミングを図るような対応型ではけしてない。この選手の打撃を支えるのは、そういった下半身を中心としたタイミングの合わせ方の非凡さと言うよりは、上半身を中心と捌きの良さにあるのではないのだろうか。そのため打てるポイントは、巧打者の割に限られているような気がする。

 ただ左の巧打者らしく、軽くアウトステップする。すなわち真ん中~内角の球を強く意識したスタイルで、足のステップも狭めなので流し打ちをきっちり行うよりも、元来はボールを巻き込んで引っ張る打撃を得意にしているタイプだと考えられる。それでもインパクトの際に足下がブレないで捌けるので、左方向への打撃もそれなりにできる特徴がある。

<上半身> 
☆☆☆☆

 早めにトップに近い位置にグリップを持ってきているのだが、少しバットを引くのが遅れ気味。そのためNPBレベルのスピード・キレには差し込まれるケースも多いだろう。

 ロスなくボールを捉えられるスイングは、コンパクトで実戦的。スイング軌道自体に問題はないが、フォロースルーまできっちり振り抜くと言う力強さと言う点では物足りない。アイランドリーグで首位打者争いをするほどの打撃でも、NPBの一軍投手を想定すると、まだ非力な印象は否めない。

<軸> 
☆☆☆☆

 足を上げ下げするタイプにしては、頭の動きは小さく、目線は狂い難い。身体の開きも我慢できており、軸足にもそれなりに粘りが感じられるので、左方向への打撃も可能にしている。


(打撃のまとめ)

 技術的には、かなり完成度の高いものを持っている。ボールを捉えるセンス自体は良いものを持っているいるものの、ボールを強く鋭く叩くと言う点では、まだ物足りないものを感じる。また足の上げ方に迷いがあり、なかなか狙い球が来るまでスイングを行わない。

 それでも、もの凄く選球眼がよくボールを見極めていると感じはしなく、試合でも見逃しの三振をするケースも目立ち、積極性に欠けるきらいがある。タイプ的には攻撃的な性格ではないので、2番タイプだと考えられるが、送りバントもきっちり決められないのを見てしまうと、そういったつなぎ役を任されても期待に応えられるのかは疑問が残る。意外に何処で使うのかは、巧打者のわりに難しいタイプなのではないのだろうか?


楽天


(最後に)

 守備・走力は、一年目からNPBでも通用・アピールするだけのものはありそうだ。ただその一方で、打撃のひ弱さがあり、プロの球威・球速に対応するのには、少し時間がかかりそうだ。ただ根本的な技術・ボールの捌きは悪くないので、何年かすれば対応できる可能性は秘めている。

 やはり気になるのは、独立リーグ系の選手の割に、ガンガン自分をアピールするタイプと言う感じはしてこない。これが元来の性格なのか?それとも打撃改造中の気の迷いなのかは定かではない。ただ年齢的には即戦力と期待したい年齢には差し掛かってきており、ただそれを望むのはちょっと厳しいスイング。本当の意味で「旬」を迎えるのは、少なくても数年先だろう。そう考えると、やはり指名リストに載せるほどの評価は、残念ながらできないと言う結論になってしまう。


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(2010年・春)