10sp-9
牧田 和久(25歳・日本通運)投手 178/75 右/両(平成国際大出身) |
「下手投げはプラス15キロ、これ大事!」 下手投げの球速は、プラス15キロを加えると、大まか上手投げ投手の球速に置き換えられる。そう考えると、牧田 和久が、イニング数以上の奪三振を奪う説明も付くと言うものだ。 単純にはフォームの構造上言えこともあるが、付加価値的な見方をするならば、私は各フォームの選手を次のように置き換えて球速表示てみている。 左スリークオーター・右サイド + 5キロ 左サイド +10キロ 右下手 +15キロ 左下手 +20キロ ただ左投手は、一般に+5キロと言われるが、ただ左で投げているだけの投手もおり、全く有難味がない左腕もいるので、私は左上手に関しては+換算では考えないことにしている。そう考えると、常時120キロ台後半~130キロ強の牧田の速球は、コンスタントに140キロ台~145キロ強のストレートで押している換算となる。下手からグイグイストレートで押す牧田のピッチングも、これでなんとなく説明がつくのだ。 (投球スタイル) 下手投げと言っても、コースを丹念に突く制球重視のサブマリンではなく、相手に考える隙すら与えないほど早いテンポから、ストレートでグイグイ押してくる速球派投手なのだ。 ストレート 120キロ台後半~130キロ台前半 下手独特の浮き上がって来る球筋を武器に、上手投げの140キロ台~MAX145キロ強級の威力あるストレートを投げ込んでくる。この選手の凄いのは、このストレートを軸に、イニング数以上の奪三振を奪う球の威力にある。 変化球 カーブ・シンカー 変化球は、一度浮き上がって沈むような独特のカーブと左打者の外角に沈むシンカー。カーブは、思わずタイミングが崩されて手が出ないケースが多いが、シンカーは、意外に打たれるケースが多い。 その他 下手投げだとモーションが大きく盗塁しやすいと言われるが、彼の場合クィックは、1.05~1.10秒ぐらいでしか始動からボール到達までかかっていない。通常プロ投手の基準が、1.2秒ぐらいだから、充分にその基準を満たしている。更に牽制も鋭く、安易にリードを大きめにとると、刺される危険性すらある。下手で社会人レベルで主戦をはるには、こういった部分の技術も長けていないと難しい。 <右打者に対して> ☆☆☆ それほど細かいコントロールはないが、両サイドに大体投げ別けられる投手。右打者には、速球中心に、カーブを織り交ぜると言うスタイルで、あまりシンカーなどは見られない。あくまでもこの投手の投球は、ストレート中心で成り立っている。 <左打者に対して> ☆☆☆ 左打者に対しても、両サイドに球を散らせて来る。変化球は、主にカーブではなく外角低めに決めるシンカーに変わる。ただこの投手、球種やコンビネーションは意外に単調な上に、ストライクゾーンの枠の中で勝負したがる傾向になり、もう少しボールゾーンに逃げて行くような変化球を身につけたい。 (投球のまとめ) コントロールに破綻はないが、実は投球の多くが速球で構成されている。変化球は、時々織り交ぜる程度で、三振もストレートで奪っているケースが多い。逆にボールゾーンに切れ込むような変化球がないので、渡辺俊介のように、幅広く投球を組み立てるようなタイプとは、少々違う気がするのだ。こういったタイプの下手は、アマでも殆どいないので、その評価には迷うところだが、アマでは先発タイプでも、実はコンビネーションの単調さから、実はリリーフの方が持ち味が出るタイプかもしれない。 (データから考える) 09年度 5試合 21回1/3 8安打 22奪三振 7四死球 防御率 0.00 10年度 2試合 18回 6安打 20奪三振 7四死球 防御率 0.00 09年度は、故障していたのか公式戦の登板数は控えめ。10年度のは、都市対抗予選の数字を参考にしてみた。 1,被安打は、イニング数の70%以下 ◎ 09年度 37.6% 10年度 33.3% と極めて被安打率が少ないことがわかる。如何に何度も同じ相手と対戦しているはずの社会人選手達でも、この独特の球筋に対応するのに苦労していることが伺われる。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ○ 09年度 32.9% 10年度 38.9% 速球派である一方で、意外に微妙なコントロールには優れていないことがわかる。けして破綻のある数字でもなければ、基準を満たすか満たさないか程度と、それほどピンポイントで突く制球力はない。下手にありがちな、コースを厳しく丹念に突くと言った傾向は薄い。 3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 ◎ 09年度も10年度も、イニング数を上回る数の奪三振を奪っている。実は、社会人レベルになると、イニング数以上の奪三振を奪っている投手は、全体でもほとんどおらず、非常に稀な存在だと言えるのだ。それだけ彼の球の威力が、社会人では突出していることの現れだろう。 4,防御率は、1点台が望ましい 今回これに関しては、ややサンプルが少ないので、あまり当てにならない。しかし都市対抗予選と言う、社会人で最も重圧のかかる試合を2試合とも自責点0で完投した実績は、高く評価したい。 (データからわかること) それほど細かいコントロールはないが、球の威力・安定感は、社会人でも図抜けていることがわかる。データの上からは、かなり頼もしい数字が浮かび上がってきた。 楽天 (最後に) プロにもほとんどいない、速球で押すサブマリン。ただそれほど細かい制球力・攻めのバリエーションの乏しさを考えると、先発よりもむしろ、打者一巡ぐらいまでのリリーフの方が、向いているのかもしれない。 けして破綻はないが、細かい制球力はないと言う点では、社会人時代の渡辺俊介に似ており、彼が本格化するのに3年ぐらいかかっていることを考えると、大活躍するのには少し時間がかかるかもしれない。彼のように、如何にプロで生き残るための術を見出して行けるのかにかかっている。 ただこれだけの球の威力・適度なまとまり、独特のカーブなどもあり、プロの一軍打者でも、それなりに戸惑う可能性は高い。そういった意味では、一年目から一軍である程度は通用することが充分に予想される。 ローテーションの一角となると微妙だが、精神面でも体力面でも、プロで即やれるだけのものはあるはず。彼のようなタイプが、プロで一年目からどのぐらいの数字を残すのか、個人的には大変興味深い。40試合・3点台ぐらいのリリーフでの活躍を期待してみよう。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・都市対抗) |