榎田 大樹(24歳・東京ガス)投手 179/82 左/左 |
「実戦力NO.1サウスポー!」 福岡大時代は、ほとんどの無名の選手だった 榎田 大樹。しかし東京ガス入社間もない、3月のスポニチ大会でいきなり頭角を現してきたサウスポー。その勢いのまま、社会人の新人王にあたる、若獅子賞を受賞。更に今年は、絶対的なエースとして都市対抗の舞台に戻ってきた。今や社会人NO.1左腕とまで評価され、ドラフト1位指名の有力候補にまで成長。僅か2年もの間に、彼を取り巻く環境は劇的に変化した。 (投球スタイル) けして球威・球速で魅了するような、素材が魅力の左腕ではありません。むしろ地味な部類のタイプであり、あくまでも勝つための投球に徹したタイプの実力派です。オーソドックスなフォームながら、そこに内包されている技術に、キラリと光るものがあります。 ストレート 140~MAX146キロ 球速表示の厳しい東京ドームでも、コンスタントに140キロ台を記録するように、けして球速がない投手ではありません。腕をピュッと振ることで、打者はワンテンポ差し込まれるような感覚に陥るストレートは実戦的です。ただけして球威があるタイプではないので、甘く入れば痛打を浴びる可能性はあります。ただそういったミスショットは、かなり少ない投手だと言えるでしょう。その辺は、都市対抗予選の19イニングで被安打10と言う、被安打率52.6%からも伺えます。アマレベルの投手の被安打率の目安は、70%以下であることが、一つ目安だと考えます。 変化球 2種類のスライダー・スクリュー・カーブ カウントを稼ぐスライダーと、ストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込む振らせるスライダー、更にスクリューボールやたまにカーブなどを持ち球にしているようです。一通りの球種を自在に操れる選手であり、最大の魅力は、その球の切れ・威力よりも、同じ腕の振りで、これらを使い別けられる点にあります。 その他 左腕らしく、牽制もまずまず。フィールディングの動きも悪くなく、一塁へのベースカバーなども早いです。クィックも1.15~1.20ぐらいとプロの基準以内で投球でき、投球以外の部分も大きな破綻はありません。試合をまとめるセンス・投球組み立てる技術などもまずまずで、凄みはなくても、よくまとまっていると言う印象を強く受けます。 <右打者に対して> ☆☆☆☆ この投手の素晴らしいのは、右打者の外角で微妙な出し入れができる点です。左腕でこの技術をしっかり持っている投手は稀であり、私が彼を推す最大の理由がここにあります。 右打者の外角一杯に、ストレート・スライダー・スクリューを巧みに集めてきます。そして時には内角にも、ストレート・スライダーを使い、右打者低めに切れ込むスライダーで空振りを誘います。攻めのバリエーションも豊富で、制球にも甘さがなく、まさにプロのローテーション級の配球ができる投手と言えるのではないのでしょうか。 <左打者に対して> ☆☆☆ 一方左打者に対する攻めは、イマイチです。左対左でありながら、被安打の多くは左打者から打たれます。ようは、左打者にとって苦にならないフォームなのでしょう。 右打者同様に、外角にストレートとスライダーを集めます。元来ならば、左打者外角低めに切れ込むスライダーを空振りさせたいところですが、球が見やすいのか?都市対抗では、この球が見極められておりました。 内角にはスライダーを使うのですが、高めに浮き巻き込まれて痛打を浴びておりました。右投げ左打ちの打者の内角を突けば、思いっきり引っ張り込まれることを考えると、左打者内を突くのはストレートかシュート系の球が効果的なはずです。それができないところが、彼の一つの課題でしょうか。 左打者に対しては、球が見やすいだけでなく、シュート系の球やカーブなども殆ど使わないので、単調な投球に陥りやすいです。都市対抗では、スライダーなど変化球を左打者に狙い打ちされておりました。けして左打者への制球が悪いとは思いませんが、もう少し配球を工夫しないと、プロでも苦労しそうです。 (投球のまとめ) 右打者への攻めは一級品である一方で、左投手ながら左打者への攻めに課題を残すことを考えると、左腕としての有難味は薄いです。ただ器用な投手ではあるので、今後の工夫次第では、その点も改善できるかもしれません。そこを改善できれば、プロでも二桁を意識できる投手になるのではないのでしょうか。少しフォームや球質は違いますが、東芝時代の高橋尚成(巨人-メッツ)を彷彿させます。彼が、一年目に9勝できたことを考えると、それに近い数字は期待できるのではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今度は、技術的な観点から簡単に考えてみたいと思います。先にも述べた通り、この選手の一番素晴らしいのは、同じ腕の振りでスライダーやスクリューボールを投げられる点にあります。 お尻を三塁側にしっかり落とせるタイプではないので、将来的に見分けの難しいカーブやフォークのような縦に鋭い変化を身につけるのは厳しいと思います。 ただフォームに無理はないので、故障の可能性は少なそうですし、安定した成績を期待できるタイプではないのでしょうか。 グラブを最後までしっかり内に抱えられているので、両サイドへの投げ訳は別けは確かです。ただ足の甲で地面を押しつけられないフォームなので、やや低めへの押し込みに不安を感じます。それでも「球持ち」が好い投手なので、その辺は気にしなくても好いかもしれません。 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で考えると、「着地」までの粘りが作れておりますし「球持ち」も好いです。「開き」に関しては平均的で「体重移動」に関しても並でしょうか。前にグッと体重が乗って来るような、ボールに勢いはあまりありません。むしろ腕を鋭く振ることでギャップを作り、相手のタイミングを狂わせます。 (投球フォームのまとめ) 腕の振りも好いですし、技術的に大きな欠点はありません。少しボールが見やすいタイプかなとか、フォームのタメがないタイプかなとのイメージもありましたが、フォーム分析をする限り、そんなこともありませんでした。プロでも即戦力で働けるだけの、実戦的なフォームだと言えるのではないのでしょうか。 楽天 (最後に) 2010年度の候補の中でも、最も即戦力として計算しやすい投手ではないかと思います。投球にスケールとか、今後の大きな上積みを期待するとか言うことを考えなければ、一年目から7~12勝ぐらい期待できる上位候補に相応しい選手です。順調にキャンプ・オープン戦を乗り切れば、開幕ローテーションが濃厚だと評価いたします。 大学時代無名でも、チームの主戦投手に成長。そして2年目の今年は、チームの不動のエースへと成長してきました。そういった成長力・努力できる才能も、プロへの大きな弾みとなりそうです。左打者への投球に改善が見られれば、新人王の有力候補として、期待大です。 蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・都市対抗) |
(どんな選手?) 福岡大出身の新人で、春先のスポニチ大会から、キレのある球で気になっておりました。大学時代は、あまり気にしたことのない投手でしたが、予選では、5試合に登板し防御率 2.81。まさにチームのエース格として、都市対抗出場の原動力になった左腕です。 (投球内容) オーソドックス左腕投手ながら、球速は135~MAX143キロ。中々キレのある球を投げ込んで来る実戦派です。変化球は、カーブ・スライダー・スクリューと一通りあり、外角と低めに球が集まるのが、良い選手です。 左腕らしく牽制も鋭く、クィックも1.2秒前後と基準レベル。マウンド捌きも良く、適度に試合をまとめるセンスもありそうです。ただ少々身体が突っ込む時があるようなので、その辺を常に注意したいですね。 (今後は) 来年のドラフト候補として注目される存在だと思います。ただどちらかと言うと、先発タイプと言うよりは、プロではキレを活かしてリリーフタイプといった感じです。更にもうワンランク・総合力を引き上げて来るようだと、上位指名候補にまで昇りつめられるかもしれません。 (2009年・都市対抗) |