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大原 慎司(25歳・TDK)投手 174/66 左/左 (常磐大学出身) |
「何処かで観たことがあるような?」 しかしこの大原 慎司は、3年連続都市対抗に出場するも、東京ドームでの登板はなし。日本選手権での登板はあるものの、確かこの試合は、私自身観ていないはず。それならば常磐大時代かと思って少しメモをひっくり返すも、別段気にしたことがないのか?チェックを入れた形跡もない。ただはっきりした記録もなく、今年チェックできていない選手なので、具体的な評価づけはできないことを、今回もご了承願いたい。 (投球スタイル) 実際観たことがないので(記憶がないので)、紹介されている文章を参考にするしかない。 ストレート MAX142キロ 彼に関係あるものを読む限り、ストレートへの記述はほとんどない。MAX142キロと言うことは、その投球の殆どが130キロ台であるのではないのだろうか。またそれほどストレートの球威・キレに光るものがないのではないのだろうか。これまで殆どドラフト戦線でも話題になったことがない投手であり、見た目の派手さは極めて薄い投手なんだろうなと言う印象を受ける。 変化球 スライダー・スクリュー この二種類の変化球に、自信を持っている投手だそうです。特に左打者に対するスライダーに絶対的な自信を持っていると言うことは、恐らく左打者の外角に、ストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込むスライダーを活かすのが上手いものと想像いたします。 またスクリューも投げると言うことで、これは対右打者対策と言うことなのでしょう。プロでも左殺し、もしくはショートリリーフの起用が期待されます。 (成績から考える) TDK在籍時の3年間の実績がわかったので、今回はその数字を参考に考えてみたい。 08年度 20試合 74回1/3 61安打 79奪三振 32四死球 防御率 3.27 09年度 34試合 145回2/3 116安打 124奪三振 37四死球 防御率 2.22 10年度 22試合 91回1/3 75安打 69奪三振 21四死球 防御率 2.66 1,被安打は、イニング数の70%以下 ☓ 被安打率は 08年度 82.4% 09年度 80.0% 10年度 82.1% と言うことで、このファクターを満たしていない。このファクターは、私がファームの選手が一軍を想定した時のものであり、それ以下の打力だと思われる社会人の打力を考えると、ちょっとこの数字は厳しいことになる。ただ彼の場合、対左打者への起用が多くなるのだろうから、問題は左打者にどの程度打たれているのか?と言う方が問題だが、ここではよくわからない。ただそう考えると、それほど悲観する数字でもないのかもしれない。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ◯ 四死球率は 08年度 43.1% 09年度 25.4% 10年度 23.0% 09年度・10年度の成績を見る限り、このファクターを満たしている。絶対的なコントロールとは言えないまでも、四死球で自滅するタイプではない。左のリリーフで最も大切な、試合を壊さない制球力はあると考えられるのではないのだろうか。 3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 ◯ 08年度 1.07個 09年度 0.86個 10年度 0.76個 と言う数字になっている。四死球率が向上しているのに比べると、奪三振率は落ちていることがわかる。このことからも、制球を重視することで三振を奪えなくなったのか? あるいは社会人3年目と言うことで、研究され投球パターンを見切られてきた可能性も否定できない。 4,防御率は、2点台が望ましい ◯ 大学リーグや独立リーグ系の選手のデータの場合、1点台~0点台の図抜けた数字が望ましいファクターにするが、社会人の場合かなり得点能力が高いので、2点台を一つ目安にする。勿論その中で、一点台の防御率を残すことは、かなり図抜けた能力の持ち主だといえよう。 09年・10年度などは、制球力の向上もあって安定感を増してきた印象がある。絶対的な能力はないにしろ、大崩れするようなタイプではないのではないのだろうか。 (データからわかること) やはり球の威力に際立つものはないものの、制球・安定感と言う意味では、大崩れしにくタイプだと言うことがわかってくる。ただプロと言う圧倒的な打力を持つ相手を考えると、この安定感も何処まで通用するのは微妙だと言わざるえない。しかし私が左腕を考えるときに一番重視するポイントである「左腕は、まず制球力が好いこと」。この条件は満たしていると言えるのではないのだろうか。 (投球フォームを考える) <踏み出し> なし 上記の動画は、すでに軸足に体重を乗せた段階からのものなので、この構え~踏み出しの段階はよくわからない。 <軸足への乗せとバランス> ☆☆ 軸足の膝から上がピンと伸び気味で、膝に余裕がないのは残念。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと 1,フォームに余計な力が入り力みにつながる 2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい 3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い などの問題が生じる。足の引き上げの高さが低いのを、背中を後ろにかなり傾けることでYの字のバランスをとろうとしている。ただ軸足への体重の乗せは、もう一つと言う印象が強い。それほど球威・球速で押すタイプではないのも、この辺からも伺える。 <お尻の落としと着地> ☆☆☆ それほど引き上げた足をピンと空中でしっかり伸ばすタイプではないのですが、かなり高い位置で足を伸ばしているので、お尻が落ちやすい体勢はできている。しかしかなり引き上げた足を二塁側に送り込んでいるので、結果お尻の落としは甘くなっている。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しにくい。彼の場合、スライダー・スクリューが武器と言うのも、この辺のフォームの構造からも理解できるところ。 地面に着きそうなところからの、前への一伸びは観られており、着地を遅らせることができている。着地を遅らせる意味としては 1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。 2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。 3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。 彼のような実戦派にとっては、まさにこの部分が核となって、打ちにくさを作り出している。 <グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆ 体の陰に隠れ、グラブを内に抱えきれているか見えないが、最後の場面でも体のところにあり、抱えきれていることがわかる。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。 ただ足の甲の押し付けは、つま先のみが地面を捉えており、やや腰高なフォームであることが伺われる。足の甲で地面を押しつける意味としては、 1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ 2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える などの働きがある。そのため速球を中心に、球が上吊る傾向がある可能性が高い。被安打がある程度多いのも、球威のない速球の球筋が高めに集まりやすいからではないのだろうか? <球の行方> ? テイクバックした時に、前の肩と後ろの肩が、打者には真っ直ぐ伸びておらず、ボールを長く隠すことができるはずだ。ただテイクバックした際に、握りが背中越しから見えないように注意すべきだろう。 残念ながら「着地」の瞬間の写真がないので、はっきりした事は言えないが、このフォームならば球の出どころは、かなり見難いものと想像される。 ただだリリース時の写真がないので、腕の角度に無理があるのかはよくわからない。また「球持ち」に関してもよくわからない。ただボールの伸びよりもキレで勝負するタイプらしいので、それほど「球持ち」は好いタイプではないのかもしれない。 <フィニッシュ> ☆☆☆ 振り下ろした腕が体に絡んでいることからも、それなりに腕の角度があることが伺われる。この写真を見る限り、足の甲の押し付けができないわりに、それほど「体重移動」が悪いようには見えない。 (投球フォームのまとめ) ボールを隠すことに主眼を置かれたフォームであり「開き」が遅いのが特徴なのだろう。そして「着地」のタイミングから見ても、けしてタイミングが取りやすいタイプではないようだ。 「球持ち」「体重移動」が、それほどはっきりはわからなかったが、極端に悪いと言う感じは後の動作を見る限りしない。少なくてもフォームに関しては、かなり実戦的だと言えるのではないのだろうか。 楽天 (最後に) かなりイメージはできてきた。やはり当初のイメージ通り、適度なまとまりのある実戦派左腕なのではないのだろうか。この順位まで残っていたことから、ストレートを注視して見てみると、かなり物足りない球威・球速なのかもしれない。あとは、それでも技術・変化球・フォームなどで、プロの打者を翻弄するだけの術を持っているのかと言うことにかかっている。 果たして対左打者に対して、どのぐらいのピッチングができるのか、すべてはそこにかかっている。もしそれが可能であれば、充分にこの順位での投手だけに、獲るに値する選手だったと言うことだろう。ぜひ来春、この寸評と実際の投球を見比べてみたい。 この記事が参考になったという方は、ぜひ! |