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武藤 祐太(中日)投手の藁をも掴むへ!



武藤 祐太(中日)投手のルーキー回顧



武藤 祐太(21歳・HONDA)投手 178/85 右/右 (飯能南出身)





                「尋常じゃない球の伸び!」





 昨秋の日本選手権、そして年を明けて行われた3月の東京スポニチ大会。私の目を魅了した、尋常ではない伸びのあるストレートを投げ込んでいたのが、高卒3年目の 武藤 祐太 だ。

 ただ今年の都市対抗緒戦・JR四国戦では、ストレートで押す投球スタイルから、変化球主体の投球で挑み失点を重ねた。春先や秋口ほどのボールの勢いに欠けていたのは、単に調子が悪かったのか?それともまだ、本当の意味での体力が備わっていないのか?今回は、成長途上の注目株について、考えてみたい。





(投球内容)

 それほど身体は大きくないのですが、ノーワインドアップから腕の振りを活かし、メリハリのある投球をしてきます。ただ高卒3年目の投手にしては、非常にマウンドでは落ち着いており、冷静に投球するタイプです。

ストレート 常時140~148キロぐらい

 都市対抗では、先発と言うこともありましたし、変化球主体のピッチングで、140~145キロぐらいと、やや物足りませんでした。しかし春のスポニチ大会では、140キロ台中盤を連発し、MAX148キロまで到達。ただこの選手の持ち味は、そういった球速や球威ではなく、手元までしっかり伸びて来る球質にあります。そして勝負どころでは、低めにしっかり伸びて来るストレートは、今年の候補の中でも1,2を争う存在です。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク

 投球のほとんどは、カウントを稼ぐ横滑りするスライダーと、少しドロンとしたフォークとのコンビネーションで組み立てられます。スライダーの精度は低くないのですが、打者の空振りを誘うような曲がりではありませんし、フォークも多投するようになりましたが、落ちきらず痛打を浴びる場面も少なくありませんでした。自慢のストレートの割合を減らし、発展途上の変化球を多く混ぜたことが、都市対抗での失点につながりました。

その他

 牽制・フィールディングの技術もプロの基準を満たします。特にフィールディングは、落ち着いてボールを処理できるところに好感が持てます。クィックも1.0秒前後~1.1秒ぐらいでまとめられることが多く、相当素早いモーションで投げ込めます。

 マウンド捌きも、適度にマウンドをハズしたりとけしてセンスは悪くありません。制球にも大きな破綻がありませんし、淡々と自分の投球に徹するタイプです。


<右打者に対して> 
☆☆☆

 右打者には、外角に速球とスライダーで投球を組み立てます。そして追い込むとフォークを使うのですが、都市対抗ではこの球が落ちきらず痛打を浴びる場面が目立ちました。

 基本的に緩急を効かせる球がなく、内角への厳しい攻めが見られないので、甘くない外角球を踏み込んで打たれるケースがあります。ただスライダーなどは真ん中~低めのゾーンに集まっているところには好感が持てます。また内角への投球に関しては、スポニチ大会の時には見られていたので、むしろ安全策をとりすぎて、都市対抗では失敗したと考えた方が妥当なのかもしれません(それだけの球の伸びがなかったから、あえて内角を使わなかったかもしれません)。

 フォークの精度・内角への投球・緩急など課題も多くありますが、投球を組み立てる基礎的な配球はできております。同じ外角でも、微妙にストライクゾーンで出し入れできる術を身につけられると、投球もだいぶ変わってきそうです。


<左打者に対して> 
☆☆☆☆

 左打者に対しては、両サイドに球を投げ別けます。特に外角には、ストレートとフォークをチェンジアップように使ってカウントを整えることが多いです。それに外からスライダーを決めて、カウントを稼ぐ時もあります。

 内角にも速球とスライダーで突くことが多く、追い込むとフォークと言う投球パターン。緩急に欠けるのとフォークの精度の問題がありますが、これを克服して来ると面白い投球が期待できそうです。


(投球のまとめ)

 まだ本当の意味での、フォークの精度に課題があったり、夏場に一番の力を発揮できるような基礎体力に欠けていたかもしれません。しかし素材としては素晴らしく、しっかりとした指導者・環境が整えば、大きく化ける可能性も秘めている有望株です。





(投球フォーム)

 この投手のフォームの良さは、腕の振りの良さと「球持ち」の良さにあります。そして欠点は、「開き」の早いフォームです。

 上げた足を地面に向けて伸びているので、どうしてもお尻の一塁側への落としが甘めです。そのため緩急を効かすカーブや縦に鋭く落ちるはずのフォークのキレが、もう一つなのだと思います。元々手もあまり大きくはないのでしょうから、フォークも抜けることが多いのかもしれませんが。

 腕の振りを重視しているのか?グラブが最後までしっかり抱え込めておりません。もし抱えても腕の振りが鈍らないようならば、しっかり最後まで内に抱えられている方が制球は安定すると思います。足の甲での押しつけも、先端部分のみが地面を捉えているので、安定して低めにボールを押し込めるわけではありません。ただ天性の「球持ち」の良さが、これを補うことはできております。足の甲で地面を押しつけられるぐらいまでになると、もっと制球・体重移動などもよくなって行くと思います。

 腕の振りなどからも、腕の角度の割に無理がありません。アフターケアを怠らなければ、それほど故障の可能性は低いのではないのでしょうか。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「体重移動」に大きな問題もないですし、何より「球持ち」は素晴らしいです。あとは如何に「開き」の部分を改善して行けるのかが、この投手の大きな課題と言えるでしょう。


楽天


(最後に)

 昨秋の日本選手権・都市対抗予選と、チームの主戦として活躍してきた実績があります。投球の基礎的な部分もしっかりしておりますし、まだまだ発展途上の投手ではありますが、充分に指名リストに入れられる選手です。

 現状は、まだ変化球の精度・体力的な部分で、1年ぐらいファームで漬け込む必要があるかもしれませんが、素材としてはピカイチです。そこで確かな土台を構築できれば、プロでも大いなる活躍を期待できる有望株です。この選手を3位で指名できた中日は、とても良い指名をしたと思います。また育成力には定評のある球団だけに、発展途上のこの投手としては良いチームに指名されたのではないのでしょうか。1年目からの成績よりも、2年目・3年目以降の成長力に期待が持てます。また一人楽しみな投手が、ドラゴンズに加わった感じが致します。個人的には、2010年度の候補の中でも、イチオシの推薦株です!


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・都市対抗)





武藤 祐太(20歳・HONDA)投手 178/80 右/右





            「最上位で消えるじゃないの。」





 ドラフト終了後に行われた日本選手権を見ていて、私は一人の男の投球に魅了された。その男の名前は、武藤 祐太 。

高卒2年目の20歳ながら、球持ち良く打者の手元までビシッと伸びてくる球質は、まさにプロで飯の食える本物の速球を投げ込んでくる。その球を、外角一杯・低めにコンスタントに投げ込める制球力・落ち着いたマウンド捌きは、プロで入団一年目からローテーションを意識できる素材。とかく2010年度は、斎藤佑樹を中心とした大学生投手が話題の中心だが、それより若い高卒3年目を迎える武藤 祐太には彼らに負けない魅力がある。現時点では、アマ球界の上位12名に間違いなく入る、力の持ち主だ。


(投球内容)


 ノーワインドアップから、すべての球が140キロを超えてくる。それでいて、打者の手元まで、クッと伸びてくる球質は、その球速表示よりも確実に早く感じられる。最速では、MAX146キロを記録。その球を、打者の外角一杯や低めにコントロールしてくる。

 変化球も、右打者には外角低めに小さく逃げるスライダーを、左打者には外に軽く沈むチェンジアップを織り交ぜる。内角を厳しく突いたり、緩急を効かせたりする球はないが、セットポジションになっても制球が乱れることなく、実に冷静に投げ込んで来る投手。

 埼玉の公立高校出身の投手だが、クィックも1.1秒台と素早く、マウンド捌きも洗練され、制球も非常に良い。無名校出身の素材型と言うタイプではけしてない。高い投球センスとポテンシャルを兼ね備えた、理想的な先発投手だ。


(課題をあげるとすれば)


 投球においては、緩急を効かせるカーブを織り交ぜたり、内角を厳しく突いたりする球に欠けるので、それほど甘くない球でも山を張られて打たれてしまうことがある。もう少し攻めのバリエーションを増やし、野手の的を絞らせないようにしたい。

 投球フォームにおいては、「開き」が早いのが残念。むしろボールが見えてから、予想以上に伸びてくる、この球筋がギャップを生んで良いのかもしれない。「着地」は悪くなく、「体重移動」「球持ち」には、中々素晴らしいものがある。ボールを隠す意識・技術が持てると、手がつけられなくなる。

 あとは、お尻を一塁側に落とせないタイプの投手なので、基本的に見分けの難しいカーブや、空振りを誘えるようなフォークを習得しにくい。仮に投げられても、体への負担は大きいので、アフターケアに充分注意したい。

(今年度のチェックポイント)

 ドラフト解禁を迎える今年は、年間を通して活躍ができるのかが、一つ大きなポイントになる。日本選手権での活躍で、春先の大会から活躍が期待されるだろう。一年間を通して、特に一番大事な都市対抗の時期に、ちゃんと自分の力を発揮できる状態にあるのか注目したい。年間通して力を示せるようだと、最上位での入団も充分意識できる、社会人NO.1の若手投手になりそうだ!


(2009年・日本選手権)