10ky-4
西川 遙輝(和歌山・智弁和歌山)右翼 180/70 右/左 |
「本当に伸び悩んでいるのか?」 1年夏に鮮烈なデビューをして以来、常に注目され続けてきた 西川 遙輝。しかし度重なる故障や、最後の甲子園でも充分な結果を残すまでには至らなかった。そのため彼に対しては、完全に伸び悩んでいる。あるいは、その才能にすら疑問を持つものも少なくない。しかし私には、本当に伸び悩んでいると言う言葉が正しいのかには、甚だ疑問があった。 (プレースタイルの変化) 1,走塁への意欲 昨秋の盗塁数は、24試合で18盗塁と3試合に2個強のペースで盗塁を決めている。しかしこの夏の和歌山県予選では、5試合で6盗塁を記録と試合数を上回るペースで盗塁を決めている。また単純に数字の上からだけではなく、彼は甲子園でもスタートの良い盗塁を披露。下級生の時から秀でたベースランニングの加速だけでなく、この夏に向けスタートに重点を置いて盗塁をできる走力を磨いてきたように思える。 2,試合の入り方の変化 試合での意識の変化も見逃せない。前の打者の打席をしっかり見つめ、次の対戦を想定したり、気持ちを高めるなど、試合への入り方にも意識が持てるようになってきた。勝負は、すでにグランドに入ってきた時から始まっているんだと言う意識を、常に持てるまでになってきた。 3,打撃技術の改善 下記の寸評には選抜のフォーム分析が載っておりますが、グリップの位置をいじったり、踏み込む足の方向を変えたりと、微妙にフォームをいじっていることがわかります。特に大きな違いをあげると ただ足を上げ降ろすスタイルから、「間」を強く意識して、足を降ろすタイミングを図るような降ろし方に変わってきました。選抜までは、始動を早めることで、動作に時間的余裕を生まれることまででしたが、降ろすタイミングを図ることで対応力を高めようと言う大きな進歩が見られます。 もう一つ大きな違いは、かなりバットを引くのが遅く、トップを作るのが遅かったフォームも、若干早くなった気が致します。それにより時間的な余裕が生まれ、打撃の幅が広がってきました。 (その結果) 選抜の時に指摘した、スタートの早い走塁・長く集中力を持続する努力・打撃技術の改善の姿勢を魅せるなど、夏に向けてしっかり準備をしてきたことが伺えます。ただ残念だったのは、まだその技術を自分のものに仕切れていない、あるいは自分に合うかどうかまで見切れていない段階だと考えます。それ故に甲子園でも、まだしっくりしていない彼の姿が垣間見られた。それが、彼が伸び悩んでいると指摘されてしまい、見ている我々の高い期待ほどの結果に至らなかった要因ではないかと私は考えます。 (最後に) 私の見方としては、彼は伸び悩んでいるのではなく、発展途上の段階であると言うことです。意固地のまでに自分のスタイルに固執して伸び悩んだ先輩達に比べると、この西川には自分を常に変えて高めて行きたいと言う、高い意識と人間としての柔軟さ感じます。 更に低めの球の見極めなどを見ていると、天性の動体視力も感じます。更にボールの捌きなどを見ていると、天才肌の才能の持ち主なんだなと惚れ惚れするときがあります。彼の眠っている才能を引き出させるには、プロと言う最高レベルの対戦相手。そして最高レベルの指導者に巡り会った時ではないかと私は考えます。過去の智弁和歌山の先輩達と同じ臭いがすると言う指摘もありますが、私にはちょっと違うタイプの選手ではないかと言う気がしてきました。そして見逃せないのは、先輩達には欠けていた、守備・走力でもプロの領域でも売りにできるだけの肉体的なポテンシャルとセンスを秘めていると言う後押しがある点です。ぜひ高校からプロの門を叩いて頂き、その才能を爆発させてくれ! 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |
西川 遙輝(智弁和歌山 3年)右翼 180/70 右/左 |
1年夏に魅せた鮮烈なデビューから1年半。その後の西川遥輝は、怪我などで完全に伸び悩んでいた。しかしこの春は、久々に万全な体調で、選抜に挑んできたのである。持っている潜在能力は、誰もが認める天才肌。果たしてプロと言う領域を考えた時、一体どのぐらいの選手なのだろうか?今回は、最終学年になったことからも、ドラフトと言う観点で考えてみたい。 (プレースタイル) 走攻守三拍子ハイレベルにまとまった中距離ヒッター。そのスマートなプレースタイルは、何処かイチロー(マリナーズ)を彷彿させるような、独特の雰囲気を持っている。今回は、その三拍子のレベルが、一体どのぐらいの可能性を秘めているのか考えてみたい。 (守備・走塁面) 昨夏の和歌山予選では、僅か3試合で1盗塁と怪我の影響があったのか足をアピールできなかった。しかし秋からは、24試合で18盗塁を記録するなど、出塁すれば積極的に盗塁を試みてきたことが伺われる。このことからも、かなり体調は良かったことや、気持ちの部分でも最上級生に変わり、チームを引っ張ってゆこうと言う意識が感じられる。 実際選抜では、塁間を4.1秒前後で駆け抜けるなど中の上レベルの脚力であり、それほどプロに混ぜると際だつ数字ではない。実際にプレーを観ていても、一年の頃の走力からして、もう少し速い走力はありそうなのだが、プロで足を売りにできるかは微妙なレベル。ただプロで自分の特徴を見出す必要性に迫られれば、もっと足でアピールすることになりそうだ。何よりこの選手の素晴らしいのは、一塁までの走力以上にベースランニングでの加速にある。そのため二塁打・三塁打が多くなること。盗塁と言うくくりでは微妙だが、そういった長打に結びつける走力に非凡なものがあることは、ぜひ抑えておきたいポイント。 昨夏などは、中堅として打球への反応の良さを魅せていた守備だが、選抜では右翼手として、ライトフェンス際を恐れないキャッチングを魅せて、意外にガッツもあるじゃんと綺麗なプレーをしすぎるイメージを払拭してくれた。打球への判断力・まわり込みだけでなく、球際での上手さも魅せてくれたことは新たな収穫。また地肩に関しても、強肩ではないにしろ基準レベルは満たすものがあることも実証してくれた。 現状の身体能力に関しては、先輩である喜多や池辺と言う先輩以上のものをすでに示しているし、更に秘めたる身体能力には、更に上のものを期待できる点は、打撃以外にアピールポイントに乏しかった先輩達に比べると、プロ入りへの大きなアドバンテージになっている。 (打撃内容) 選抜緒戦の高岡商業戦では、ボール球に手を出すなど球の絞り込みが悪かったです。一年生から甲子園に出場している彼でも、選抜緒戦は力みから本来の選球眼を発揮仕切れない精神状態だったのでしょう。しかしこの試合で一本出たことで、元来の落ち着きを取り戻し、続く興南・島袋投手との対戦では、低めの見極めに絶対的な動体視力・選球眼の良さを発揮致しました。この選手、集中力を上がってきた時は物凄い能力を発揮致しますが、そうでは無いときに凡打を繰り返すように、集中力があまり長く持続しないタイプなのだと現状思われます。そのため一年夏のように、初めての甲子園でモチベーション・意識が物凄く高い時は、素晴らしい能力を発揮するのではないのでしょうか。 (打撃フォーム) 1,2年の頃と比べると、かなり打撃フォームを変えてきているおります。今回は、その辺が大変興味深いので、注目して観てみましょう。 <構え> ☆☆☆☆ 昨夏までは、スクエアスタンスだった構えを、足を引いたオープンスタンスにし、ボールをより広く見やすいスタイルに変えました。グリップを下げ気味にし、打席ではリラックスすることを心がけております。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢も良く、自分のリズムも刻め、理に適った構えとなっております。 <仕掛け> 早めの仕掛け 以前は始動が遅かったわけではないのですが、一度ベース側につま先立ちし直して、再度ステップする忙しい動作である「遅すぎる仕掛け」を採用しておりました。しかしこの選抜では、足を早めに引き上げる「早めの仕掛け」を採用することで、無駄のない動作を心がけております。これにより、対応力を意識したスタイルに移行致しました。 <下半身> ☆☆☆☆ 足を早めに引き上げて、着地までの「間」を取れるようになり、より多くのポイントでボールを捉えられるようになったはずです。ただ足を早めに引き上げている割には、着地のタイミングを図るような動作は観られず、意外に打てる球は決まっているのではないかと思います。 また下級生の頃との大きな違いは、以前はベース側にインステップしていた踏み込みを、アウトステップに変えた点です。そのため以前は、センターから左方向への打球伸びや長打が目立ったっておりました。しかし現在は、内角の捌きに余裕が持て、引っ張る打球が増えてきたと思います。左打者の場合、どちらが一概に好いとはいえませんが、一般的な左打者は、圧倒的にアウトステップ打者です。強打よりもより対応力を重視したいと言う、彼の意識の現れなのかもしれません。 踏み込んだ足下が、インパクトの際にブレないのは彼の下級生の頃からの良さ。しっかりタイミングが合った球に対しては、打ち損じなく叩けるスタイルだと言えるでしょう。 <上半身> ☆☆☆☆ 彼の最大の欠点は、打撃の準備段階である「トップ」を作るのが遅れる点にあります。トップ自体は、グリップも奥に入らないですし、深さもけして浅くはないと思います。 バットを上から出しながらも、寝かせながらスイング。それでもボールを捉えるまでの軌道に、大きなロスは感じられません。そのため彼独特の、スコーンと綺麗にボールを振り抜けます。 またインパクトの際にバットの先端が下がらないので、ボールを広い面で捉えられボールに的確に力を伝えられます。すなわちヒットゾーンにボールを落としやすいインパクトです。ボールを捉えてからは、けしてヘッドスピードが速いわけでも、筋力に優れているわけでもないです。ただミートポイントは確かなので、打球は一定の速さはありますし、フォロースルーをしっかり取れるので、ボールを遠くに後押しできます。特に彼の場合、球の捌きなどを観ていると、惚れ惚れするものがあります。 <軸> ☆☆☆☆ 頭の動きは小さめで、目線のブレ・軸運動の障害は小さいです。また身体の開きも我慢できておりますし、軸足には線が細い割に強さが感じられます。ボールが意外に飛ぶのは、フォロースルーの使い方だけでなく、この内モモの強さにも要因があるのかもしれません。 <打撃技術のまとめ> この半年あまりで、打撃を根本的に変えてきている選手です。天才と言われてきた選手ですが、自分のスタイルを変える勇気と謙虚さがあります。この点は、池辺が高校時代から全くスタイルを変えられなかったのとは対照的です。 ただ高校時点では、先輩である池辺や武内のように、文句なしの能力はまだありません。打ち損じも多いですし、期待に応えられるほどの結果も伴いません。まだ打撃フォームが、完全に自分のものになっていないのかもしれません。 まずは、打撃の準備段階であるトップが立ち後れないようにし、投手のトップのタイミングと合わせる意識を持つこと。そして踏み込むタイミングをもう少し工夫するなど、タイミングの取り方に工夫が欲しいと思います。その辺が、しっくりしてくるようになれば、持ち得る才能を遺憾なく発揮できるようになるのではないのでしょうか。 (今後に向けて) 守備にしても、走力にしても、打撃にしても、その潜在能力は素晴らしいです。ただそれを、短期的に爆発させることはできますから、集中した時のプレーは見事です。しかしその集中力を長く持続させることに大きな課題を感じます。 またプレースタイルを観ているとプレーに「鋭さ」が感じられず、先輩である喜多や池辺と言った天才的な資質を示しながら伸び悩んでいった先輩達とダブる部分が気になります。ただ先輩達よりも、身体能力を秘め三拍子の総合力が高い点や自分のスタイルを好い意味で変えることのできる人間的な謙虚さがある点は、これから彼が伸びて行く過程で、とても重要なポイントだと思います。夏までに欠点を克服して行けるのか、またそのときにどんなプレーを魅せてくれるのかと言う期待はありますが、現時点の内容でも、高卒でプロに入る器の持ち主だと判断いたします。あとは、高卒でプロに入るんだと言う「貪欲さ」を、ぜひそのプレー伝えて欲しいかなと願うばかりです。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2010年・選抜) |
西川 遙輝(和歌山・智弁和歌山)外野 180/70 右/左 |
(どんな選手?) 昨夏1年生ながら甲子園に登場し、多くの人をあっと言わせた天才肌の選手です。この夏は、故障の影響で調整が遅れておりましたが、甲子園では3番・中堅手として出場いたしました。 (守備・走塁面) 塁間を最後まで賢明に走らなかったために、正確な走力はわかりませんでした。和歌山大会に出場した3試合では、盗塁を一個記録。足自体は遅くないと思いますが、走塁への意欲は高くない選手に思えます。プレーに対する貪欲さに欠けるところが、個人的には気になります。 中堅手としては、打球への判断なども好く、上手い外野手なんだと思います。ただ、この試合では、地肩などはよくわからず、今後の試合のチェックポイントとしたいと思います。 守備・走塁に関しては、正直まだよくわからない部分が多いので、今後の試合での楽しみにしたいと思います。 (打撃内容) スクエアスタンスで構え、一度ベース側にチョンと足を持っていってからステップする選手で、本当に速い球への対応が立ち後れないのか気になるところです。ボールに向かって、しっかりインステップして踏み込め、その足下がインパクトの際にブレないのには好感が持てます。けして長距離打者ではないのですが、フォロースルーの効いたスイングをするので、打球もよく伸びる印象です。 現状、ミートする能力・綺麗な球の捌きには好いモノがあると思いますが、インパクトが弱いスイングで、まだまだスイングに非力感があることは否めません。来夏までに、いかに強さのあるプロ仕様のスイングを身につけられるのか注目したいです。 (今後は) 現状、才能が優先するタイプで、まだまだ力感・貪欲さに欠け、更にヘッドスピードや仕掛けの観点からすると、ドラフト指名確実な素材だとはいえない気が致します。自分の才能に奢ることなく、貪欲に野球に取り組んで頂きたい選手です。一つ間違えると、アマレベルの好選手で、そのまま終わるのかなと言う危惧を、この夏のプレーぶりから感じた大会でした。 (2009年・夏) |