10ky-27







和田 凌汰(巨人)内野手のルーキー回顧へ





和田 凌太(広島・広島工)遊撃 179/71 右/左





                「観に行っていて良かった。」





 6月に、山口の宇部で行われていた春季中国大会。ここでは、後にドラフト会議で指名された好選手が、たくさん出場していた。夏の広島県予選の模様だけではよくわからなかった和田 凌太も、そんな一人。生で実際に見ておいて、本当に良かったと改めて思う。


(プレースタイル)

 全国的にも、トップクラスの大型遊撃手。三拍子バランスの取れたプレーヤーで、チームの4番も担っていた強打者。打席での集中力・意識の高さも加えた、高校生としてはハイレベルの選手だと言えよう。




(走塁面)

 出塁すれば、次の塁を果敢に狙います。特にベース付近で魅せる、ダイナミックなスライディングが印象的。一塁までの塁間を4.15秒前後で駆け抜けます。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類


4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。プロレベルに混ぜてしまうと、足を売りにできるだけの走力があるのは疑問。ただ走塁への意欲・意識は高い選手なので、その走力以上に走力でアピールできる可能性は残されている。夏の大会では、タイムを計測する機会がなかったので、春季大会の際に計測できていて良かったです。

(守備面)

 夏の模様では、打球がまともに飛んだのは僅か1球。そのためボールを捌く機会は、ほとんど見られなかった。それに比べ生観戦では、試合前のノックから観られたので、おおかたの能力はその時にわかってしまう。スカウトの仕事の半分は、試合前練習で決まると言われる所以がそこにある。

 フットワーク、グラブ捌き・キャッチングなどは、高校生としてはまずまず上手い部類です。ただプロレベルとなると、遊撃手を担って行くような絶対的な守備力は感じません。ただプロでも二遊間候補として、存在感をアピールしたいタイプです。特に気になるのは、それほど地肩が強くない点。こうなると、深いところからのスローイングに不安を感じます。動ける選手なので、将来的には二塁あたりが適正ではないのでしょうか。

(守備・走塁のまとめ)

 守備・走力共に、プロでも売りにできるほどの圧倒的なものがないところが、将来売りにできるものがなく不安は否めない。ただ現時点でソコソコのレベルにはあり、野球意識は高い選手なので、プロ入り後もまだまだ伸びて行ける可能性に期待したい。





(打撃内容)

 春観た時は、もっと好打者タイプだと思っておりました。しかしこの夏は、強引にボールを引っ張りにかかっており、少し雑な印象を受けたのは確かです。春季中国大会では、岩本 輝(南陽工-阪神4位指名)投手の、高めに甘く浮いた球を逃さずライト方向にはじき返すなど、幅の広い打撃を魅せてくれていました。


(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆

 
前の足を、軽く引いて構えます。バットを倒して構えているのですが、グリップは高い位置に添えられております。腰の据わり具合は良いのですが、前の足を引いて構える割に、両目で前を見据える姿勢はあまりりよくありません。恐らく身体が固い可能性があり、試合前のウオーミングアップを入念にやって故障を防ぎたいところです。

 打席では、身体を動かし自分のリズムで打席に立ててリラックスはできていたように思います。ただ責任感が強い性格なのか?夏は、力みからか強引な打撃が目立っていたのは残念でした。

<仕掛け> 
平均的な仕掛け 投手の重心が下がってきて底に到達したときに始動

 これが、最も平均的なタイミングでの始動となる。このスタイルは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備える万能型。主に中距離打者や打点を多く稼ぎたいポイントゲッターが多く採用するスタイル。ただ一見完璧そうに見えるこのスタイルも、実はアベレージ打者なのか、長距離打者なのか、どっちともつかずの特徴の見えにくいスタイルに陥りやすい。個性のない打者の多くが、この仕掛けを採用している。

 彼もこの仕掛けの例外ではなく、長距離打者なのか?アベレージ打者なのかの特徴が見出しにくい。今のところ甘い球を逃さず叩く高い集中力の持ち主なので、勝負強い打撃を売りにする中距離タイプだと位置づけられます。

<下半身> 
☆☆

 最大の課題は、上半身の豪快な振りに対し、受け止める下半身の弱さにあります。すなわちインパクトの際に足下がブレて動いてしまい、身体の開きが我慢できずボールを捉えた時にもダイレクトに力を伝えきれないスイングにあります。

 足を上げてから降ろすまでの「間」が取れるはずの仕掛けなのですが、実際にはそれほど「間」は取れておりません。そのため極端に打てるタイミングは限られてはおりませんが、そうかと言ってそれほど多くの変化に対応できる器用さ実際感じませんでした。

 ベース側に、インステップして踏み込む傾向があります。そのため基本的には、外角を強く意識したスタイルのはず。それなのに夏は、この外角の球を強引に引っ張ろうとしたため、引っかけたり空振りをするケースが目立ちました。更に足下が踏ん張れないので、カベをすぐに壊してしまい外角の球を長く観ることができず、開きがどうしても早くなる悪循環に陥りました。

<上半身> 
☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」を、早く作ることはできておりました。そのため速い球に、立ち後れると言うことはないと思います。ただバットが身体から離れて出てくるの上にインステップで踏み込むため、かなり内角が窮屈で中々バットが上手く抜けません。

 更に外角の厳しい球にも足下が踏ん張れないので、開きが早く我慢ができませんでした。そのため打てるコースは、真ん中~外角高めのゾーンに限られており、そこの球を逃さず叩く「鋭さ」が求められます。夏には、その鋭さも力みから鈍くなっていたように感じます。

 打てるコース・打てるタイミングもかなり限られていた印象はあるのですが、スイングの弧は大きいので当たった時の破壊力は高いと思います。ただフォロースルーの段階でも、けしてグリップが高い位置まで引き上がっていないので、ボールを遠くに運ぶと言うよりは、強く引っ張ったくタイプだと思います。すなわち強烈な打球で野手の間は抜けて行きますが、打球が伸びてスタンドインと言うケースは、それほど多く観られるタイプではないようです。

<軸> 
☆☆

 ボールを捉えるまで頭の動きは並ぐらいで、目線の狂いはそれほどでもありません。ただ開きが我慢できないために、ボールをしっかり捉えることが困難です。更に軸足も崩れてしまっているので、安定した打撃も期待しづらいものがあります。


(打撃のまとめ)

 かなり、課題の多いスイングをしております。最大の欠点は、足下が踏ん張れないスイングにあります。すなわち上半身の強さに下半身が負けてしまい、アンバランスなスイングがしているからです。これをまず修正することが、プロ入り後求められることかと思います。

 ボールを絞り込み、その球を逃さず叩く集中力・センスは高いと思います。ただボールを捉える
技術に欠け、スイング自体の強さ・鋭さも、ドラフト候補としては際だつものは感じませんでした。そのため打力に図抜けたものが感じられず、春季大会でもイマイチピンと来ませんでした。


楽天


(最後に)

 走攻守の三拍子のバランスは悪くなのですが、プロで売りにできるほどのものがなく、特徴に欠け埋もれてしまう可能性は否定できません。特に打撃に課題が多く、プロ入り後時間のかかる素材だと思います。

 心技体のバランスで考えるのならば、野球への意識の高さ・プレーへの集中力などは、高校生としては上位であり、プロで飯を食って行こうと言う気構えはあるように思えます。高校生ですから、技術的な部分の未熟さはそれほど気になりません。ただ根本的な素材に、図抜けたものを感じないところが残念な部分ではあります。

 個人的には、時間がかかる選手でもあり、本当は大学などを経由して確かな実績を積んでからプロ入りを目指して欲しい選手でした。育成枠での入団となると、かなり結果が早く求められます。こういった時間がかかりそうなタイプには、正直育成枠はお薦め致しません。それだけ球団が忍耐強く待ってはくれませんし、ドラフト順位での関係上、我慢して起用してくれる機会も極めて限定されてしまうからです。ただ野球への意識の高い選手でもあり、それを乗り越えて行ってくれることを期待したいと思います。果たして数年後、どんな結果を残しているのか個人的には気になる選手。注目して来季は、ファームの試合で再会できる日を待ちたいと思います。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・夏)








 第一打席から、岩本(南陽工)の高めに浮いた球をライト前にはじき返すなど、なかなか集中力のある打撃。打撃・野球センス・意識などの高い好選手なのですが、地肩・走力が中~中の上レベルの好打者タイプなので、そういった意味では、総合力で高卒プロはどうかな?と言う印象は受けます。ただ噂どおり、中々良い選手であったのは確かです。


(2010年・春季中国大会)