10ky-25





阪口 哲也(阪神)内野手のルーキー回顧へ




阪口 哲也(和歌山・市和歌山)二塁 178/70 右/左





                  「課題の克服が・・・」





 下記の昨夏寸評にも書いたように、守備ではスローイングの精度向上・打撃ではインパクトの強さと言う課題を克服できるのかがポイントだと述べた 阪口 哲也 。あれから一年経ってどのように成長したのだろうか?阪神から育成枠されることになった 阪口 哲也 のその後を追いかけてみた。


(プレースタイル)

 チームの3番・二塁手を務める選手です。三拍子バランスの取れた好打者タイプですが、私の見た南部戦では、ライトポール際に本塁打を放っておりました。高校レベルでは強打者だと思いますが、プロレベルではアベレージヒッターと言うのが、その本質だと思われます。





(走塁面)

 一塁までの塁間は、セーフティバントを決めた時で3.9秒弱。通常セーフティバントのように、最初から一塁側に走り出しているような時のタイムは参考にならないが、もし参考にするのならば、0.3秒ぐらい上乗せすると、元来のタイムに近いものが導き出される。昨年も4.2秒前後だったことからも、この数字はかなり信憑性を持って来る。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類


4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。

 左の好打者タイプにしては、走力はプロ基準では平均的。それだけに、プロで足を売りにするのは厳しいのではないのか。あくまでも、足を引っ張ることがない平均的な脚力といったレベルに落ち着きそうだ。

(守備面)

 今夏も、昨年同様に二塁手として出場。守備範囲自体は狭くなく、キャッチング・フットワークなども悪くない。昨年は強弱が付けられないスローイングだと述べたが、今年はその辺はよくわからず。ただ深い位置からの踏ん張りは弱く、本当の意味での地肩は強くないように感じられる。

 走力は平均的で、守備はまずまずだが、地肩はやや物足りない。それだけに好打者タイプなものの、何処までプロで守備・走力を売りにできるのかには疑問が残る。特に昨夏から課題であった、スローイングの精度はあまり向上しているようには見えなかった。





(打撃フォーム)

 綺麗にバットを振り抜く、捌きの良さがこの選手の最大の魅力です。昨夏からの変化を中心に考えて行きたいと思います。

<構え> 
☆☆☆☆

 アゴをグッと引いて前を見据え、足を引いた左オープンスタンス。グリップの高さは平均的で、腰の据わり・全体のバランスも悪くない。昨夏までは、やや力が入り過ぎだった構えも、少し自分をリズムを刻む意識が持てるようになり、緊張感の中にも適度な脱力のある良い構えになってきた。

<仕掛け> 早めの仕掛け  投手が足を降ろし初めて~一番底に到達する間に始動

 これが、現在採用される仕掛けの中では、最も早い仕掛けとなる。打者が足を地面から浮かし~着地するまでの時間(間)が長いほど、打者はいろいろな緩急に対応出来る可能性が広がる。そのためアベレージ打者は、この仕掛けを採用するケースが多い。


 昨夏は「遅めの仕掛け」を採用していたが、今年はより彼のプレースタイルに合致した「早めの仕掛け」を採用するなど、仕掛けにも変化が見られた。

<下半身> 
☆☆☆☆

 小さかった足の引き上げも、早めに引き上げて長く回し込むスタイルに大きく変化。これにより、様々な緩急に対応しうる打てるポイントの多い打撃に移行できました。また昨夏までは、外の球を意識したインステップを採用していたものの、今年は左の好打者らしくベースから離れた方向に踏み出す「アウトステップ」を採用することで、内角の捌きをスムーズにすることに成功。

 踏み込んだ足下もブレも抑えられ、外の球にもある程度対応できそうです。しっかりタイミングが合えば、打ち損じの少ないフォームだと思われます。

<上半身> 
☆☆☆

 バットを引くのが遅れ気味で、打撃の準備段階である「トップ」を作るのが遅れがちです。そのため、一定レベル以上の球速・キレのある投手には、少し立ち後れる可能性があります。

 ボールを捉えるまでのスイング、そして捉えてからの軌道にも大きな破綻はなく、綺麗に振り抜けるのがこの選手の魅力。ただボールを元々捉えるセンス・ボールを見極めるセンス・基準レベルの力強いスイングには欠けます。

 課題であったスイングの強さは改善できていないのが気になりますが、ヘッドスピードはそれほどでもなくても、ヘッドの走りが鈍らないのがこの選手の魅力です。ようは振りだしからフォローまで、ほぼ同じスピードで振り抜けるスイングなのです。

<軸> 
☆☆☆☆

 足を上げ下ろしするスタイルの割には、頭の動きは小さく目線のブレは少ないはず。身体の開きも我慢でき、軸足にも粘りが感じられ、低めの球を上手く拾うことができます。体軸の安定感と言う意味では、良いものがあります。


(打撃フォームのまとめ)

 技術的には、昨夏からの改善もみられ、結構高いものがあります。ただ天性の才能や肉体の成長をあまり感じない点で、まだまだ物足りない部分が目立ちます。


楽天


(最後に)

 特に試合を見ていても、何か訴えかけてくるようなものはありませんでした。ただアゴをぐっと引いて、打席での集中力は感じさせる選手ですので、けして意識が低いわけではないと思います。

 ただ課題であったスローイングの精度やスイングの「強さ」と言う欠点は充分改善できているとは言い難いです。それでも「仕掛け」を始め、多くの技術的な問題点を改善しようと言う意欲は感じられました。

 ただ好打者タイプにしては、それほど走力・肩に特徴がなく、どうしても高校からプロに入るような図抜けた素材には見えません。育成枠で指名された通り、まだ「旬」とは言えず、ファームで試合に常時出られるようになるには、少し時間がかかるのではないのでしょうか。個人的には、昨年からの大きな上積みに乏しく、指名リストに残すほどのインパクトは受けませんでした。それだけ球団には、少し長い目見守って欲しい選手でした。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・夏)








(どんな選手?)

 力強さは感じないのですが、振り抜きの良さが綺麗な好打者です。チームの核弾頭を務める俊足・好守の二塁手でした。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.2秒前後とちょうどプロの基準レベルです。ただ上のレベルで足を売りにするほど、絶対的なスピードは感じません。

 また二塁手としては、キャッチング・フットワークなどは、まずまず上手い部類だと思います。ただスローイングの強弱がつけられない選手なので、そういったミスは少なくなさそうです。それに肩はあまり強くないのか、力をセーブしないとコントロールをつけられないのか不安な部分は残りました。

 守備・走力に関しては、上のレベルでも通用するレベルにはあるようです。ただそこから、売りにできるほどかといわれれば、まだまだ物足りないものがありました。今後の精進を期待したいところです。

(打撃内容)

 ボールを的確に捉え、綺麗に捌く技術に優れた選手です。前足を引いて構え、投手の重心が下がる時に、つま先立ちに切り替えます。腰の据わり・全体のバランスも好いのですが、ボールを肩口が見据える姿勢なので、ボールを的確に追えるかが微妙。また非常に集中した意識の高さを感じさせる構えなのですが、揺らぎはなく、もう少し「柔らかさ」を意識した構えでも好いのではないかと思います。

 仕掛けは「遅めの仕掛け」を採用。強打者・スラッガータイプなのではなく、生粋の2番打者タイプと言うのが、本質なのかもしれません。足を小さく浮かし、インステップして踏み込みます。踏み込んだ足元がブレないのが好いですし、インステップでも低めの球を上手く拾える選手なので、あまり内角が窮屈に見えません。

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのも平均的ですし、ヘッドを立てながら、綺麗に振り抜きます。頭のブレも小さく、開きも我慢。あとは、もう少し軸足に強さなり粘りが出てくると好いと思います。またスイングに「強さ」が足りないので、その辺が改善されてくると面白いと思います。

(今後に向けて)

 守備ではスローイング・打撃では「強さ」が、大きな課題です。これさえクリアできれば、非常にセンスのある打者なので、将来は面白い存在だと思います。夏には、大きくクローズアップされてくる可能性を秘めた好打者ではないのでしょうか。その成長が、非常に気になる存在です。

(2009年 夏)