10ky-23
三ツ俣 大樹(東東京・修徳)投手&遊撃 177/83 右/右 |
「如何に自分の色を見つけて行けるか?」 投手としてもMAX146キロのストレートを投げ込み、野手としてもプロ注目のスラッガー。そんな高い資質を投打に示しながら、イマイチ特徴が見えてこないのが、この 三ツ俣 大樹。これからプロと言う世界を前に、如何に自分の特徴を見出して行けるのか、今回は考えてみたい。 (プレースタイル) 投手としては、淡々と140キロ前後のストレートをコンスタントに投げ込み、集中力を切らせない、意外に投手らしい側面を持つ選手です。しかしその将来性は、完全にパワフルな打撃にあります。遊撃手を務めることが多いのですが、スピード感・繊細さなどから考えると、将来的には、強打の三塁手といったタイプではないのでしょうか。 (走塁面) 一塁までの塁間は、おおよそ4.6秒前後。これを左打者換算に置き換えると4.3秒前後になる。通常塁間の目安となるのは、 3.9秒弱 プロで足を売りに出来るレベル 4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類 4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム 4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、そのタイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。 実際彼のプレースタイルを観る限り、走力を全面に押し出すタイプではない。それだけにプロ入り後も、足を売りにするタイプにはならないと考えられる。 (守備面) 打球への反応・素早い動作などを見ると中々のものがあり、将来的にも内野手として続けて行けるタイプではないのだろうか。ただスピード感・きめ細やかさはそれほど感じられない選手だけに、二遊間の候補と言う感じはしなく、将来的には三塁・一塁あるいは右翼などを担って行く素材ではないのだろうか。まずプロ入り後、自分はどのポジションでアピールして行けるのか、模索する日々が待っているだろう。 走力に関しては、あまり期待できそうもない。ただ守備に関しては、センターライン以外のポジションならば、それをこなすだけのポテンシャルはあるだろう。特に投手として、コンスタントに140キロ前後を投げ込める地肩は、プロに混ぜてもA級だろうから、その辺を活かしたポジションに落ち着くことになりそうだ。 (打撃内容) 高校レベルでは、身体の強さや金属バットの反発力を活かしてスラッガーとして位置づけられているが、プロの領域としてはどのような選手になるのだろうか? 基本的に、腕っ節の強さを活かしたプルヒッターとの印象が強い。すなわち三遊間間に引っ張る打球が目立つ、パワフルな打者といった感じだろうか。その打撃はパワフルだが、本質的にはボールを運びスタンドインさせるような長距離打者ではないなと言うのが、この選手を見ていての印象。もの凄く当てるのが上手いとか、長打力があるといったタイプではないので、打者としての位置づけは難しい。 (打撃フォーム) <構え> ☆☆☆☆ 前足を軽く引きつつ、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰の据わりもよく、少し開き気味に構えるも両目で前を見据える姿勢も悪くありません。軽く身体を揺らぎ、自分のリズムで打席に立てており、適度にリラックスしつつも、しっかり集中した良い構えだと思います。 <仕掛け> 遅すぎる仕掛け 投手のリリース前後に始動 多くの欧米人やキューバ人などは、このタイミングで始動する。狙い球を絞って、打てる球を引っぱたく、そんなスタイルを取る。ただこのようなスタイルは、非常に脆く打てる球は限られる。 また始動~インパクトまでの時間が極端に短いので、スイングに不可欠な動作を端折ることで、インパクトに間に合わせようとすることになる。それでも打ててしまう欧米人のヘッドスピードと筋力の強靱さは、残念ながら日本人には真似出来ない。日本人の場合このタイミングでは、プロレベルの投手を相手には通用ないと私は考えてている。ただし、もしこのタイミングでの始動を使いこなす日本人が現れた時、パワーで世界のスラッガーと対峙出来る存在になっているだろう。 <下半身> ☆☆☆ 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏む込みます。足を上げて地面を捉えるまでの「間」が少ない選手なので、基本的に打てるポイントは限られます。ただ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」はある選手です。また真っ直ぐ踏み込むと言うことは、内角でも外角でも捌きたいと言う、彼の意志の現れです。 踏み込んだ足下が、しっかりインパクトの際にもブレないで捌けます。そのため引き手の強さを活かして引っ張る打球が目立つのですが、けして右方向への打撃ができないわけではありません。むしろ技術的なところよりも、右方向へも状況次第では打つんだと言う意識を持つことが、この選手の打撃の幅を広げて行くことになりそうです。 <上半身> ☆☆☆ 比較的早く「トップ」の近くにグリップを持ってきております。ただ実際に少しバットを引くのは遅れがちです。そのためプロレベルの投手相手になると、そのスピードやキレに差し込まれることは多そうです。 気になるのは、バット寝せて腰が開くのが早く、ボールを捉えるまでに遠回りな軌道になっている点です。そういった軌道を辿るわりに、スイングの弧が小さめなのは残念です。ただボールを捉える時にバットの先端が下がらないので、ボールを的確に捉えられるのとインパクト後のスイング軌道にはロスを感じさせません。 ただスイングの弧が小さく、フォロースルーを活かすタイプではないので、強い打球は飛んでも、ゴロで引っかけることが多く、打球があまり上がるタイプではありません。最後までしっかり振り切るので、ヘッドスピードは並でも、身体の強さも相まって打球はパワフルです。 <軸> ☆☆☆☆ 足の上げ下げが小さい選手なので、頭の動きは小さく目線のブレは少なそうです。身体の開きも我慢できますし、軸足にも強さは感じます。頭の軸を起点に、綺麗にまわる打撃を得意とします。 (打撃のまとめ) フォームを分析する限り、スラッガーではないことが改めてわかりました。最大の課題は、仕掛けを幾分早め「遅めの仕掛け」ぐらいには始動したいところ。またボールを捉えるまでのスイングに課題があり、スイング軌道の修正が求められます。 ボールを捉えるセンスは、身体の柔軟性もイマイチで物足りないものを感じます。ただボールを見極める選球眼は高く、じっくりと狙い球を絞って甘い球を逃しません。現時点では、際だつヘッドスピードのキレはありませんが、身体の強さはあるので打球の強さはあります。ボールに差し込まれないような、鋭いスイングを身につけたいところです。 将来的には、粗い対応力を如何に向上させて行くのか、そこにかかって行くと思われます。あとは、自分がどんな特徴を売りにして行くのかと言う、明確な方向性を示すことができるかにかかっていそうです。個人的には、勝負強さを売りに、打点を多く稼ぐ中距離打者としての位置づけが、この選手には合っていると思います。 (意識づけ) この選手で一番推したいのは、この部分です。チームのエースで4番と言う絶対的な柱でありながら、それほどガンガン行くタイプではありません。むしろじっくりと状況を見極めてから、行動に移すタイプのように思えます。 ネクストバッターボックスでも、しっかり相手投手の投球をみつめ、次の打席への意識を高めて待っております。試合にも集中して、うまく入って行ってました。 慎重に見える中にも、適度な積極性も感じます。入念にチェックポイントを決めて日々行動していえるようには感じませんでしたが、素振りを入念に行うなど次への準備は怠りません。その所作には、相手のことを意識できるきめ細やかさも兼ね備える珍しいタイプの強打者です。 集中力を切らさない野球への姿勢は、高校生としてはかなり自覚の高い選手だと評価します。 楽天 (最後に) 素材としては、対応力・柔軟さに欠ける部分が気になります。またポジション・打撃の特徴的にも、何を売りにして行くのか見えてこない点が気になります。 その反面、身体の強さ・地肩の強さ・精神的な成熟さなどの部分では、高校からプロに入るべき資質がある選手だと考えます。現時点では、課題も多く時間のかかる素材だとは思いますが、その壁を乗り越えて行けそうな人間的な幅と精神的な強さはあるように見受けられます。あとは、それを可能にするセンス・素材としての柔軟さがあるのかどうか?極めてその判断には迷います。 そこでヒントになるのが、投手としてのピッチング内容。けして投手らしいフォームの選手ではないのですが、肉体のポテンシャルだけに頼らず、淡々と気持ちを切らさないよどみのないムラのないピッチングスタイル。また勝負どころでは、力を入れられるメリハリも感じます。制球・投球術に幅はなくても、試合を壊さない破綻のないまとまりもあり、その辺が野球人としてのバランス感覚を感じさせます。 けして器用ではないのですが、何かそれを越えた部分を見出して行けそうな選手であり、不安な部分は多分にあり時間もかかりそうですが、それを一つ一つ乗り越えて行けるタフさがあるのではないかと期待します。そういった部分を評価して、あえて指名リストに名前を連ねてみたいと思います。ぜひ球団には、少し長い目で見て頂きたい選手です。 蔵の評価:☆ (下位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |