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榎本 葵(楽天)外野手のルーキー回顧へ








榎本 葵(福岡・九州国際大附)中堅 177/71 左/左





            「ミートセンスは、非凡なんだけれども・・・」





 彼を初めてみたのは、1年夏の福岡大会の模様。そこで見た時は、将来凄い打者になるかもと言う予感を強烈に私の脳裏に刻み込んだ。それから半年ばかり後、春季九州大会で、生で彼を見てみた。しかし生で見てみると、その体格、肉体のポテンシャル、雰囲気は、並の高校生だったのに落胆させられる。更にあれから一年、榎本 葵 は、何処までそのポテンシャルを高めたのか?ぜひ私自身も確かめてみたかった。





(走塁面)

 そのプレースタイル、試合ぶりを見ていると、それほど足を売りにするタイプには見えない。ちなみに一塁までの塁間は、4.25秒強ぐらい。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。

 彼の場合、走力に関しては、プロに混ぜると平均からやや劣るレベルだと考えられます。実際に高校時代のプレーを観る限り、走塁への意識はその走力以上に劣る印象があります。

(守備面)

 かなり、上手くなっていると思います。ボールの落下点にいち早く入って、余裕を持って捕球体勢に入れます。守備に関しては、プロに混ぜても中の上レベルまでは到達できる選手だと思います。

 ただちょっと残念なのは、地肩があまり強くありません。この肩に関しては、プロでは中の下から下の部類に入り、かなり弱い方だと考えられます。ですからプロに入ると守備の上手い左翼手あたりと言う位置づけになりそうです。

 けして守備・走力でアピールするタイプではないのがわかります。高校球界でもトップクラスの打撃センスの持ち主ながら、この順位まで残っていたのには、この肩・走力でのアピールに欠けることが最大の理由だと考えられます。





(打撃内容)

 昨春、生で見た時は、中背で体格も並の高校生。その打席での雰囲気は、並の高校生だったので、私を大いに落胆させました。しかしこの一年で、だいぶ体つきにも厚みを増し、打席でも強打者としての雰囲気が出てきました。

 この選手は本質的に非凡なミートセンスがありますが、パンチ力を秘めた中距離・ポイントゲッタータイプだと考えられます。

<構え> 
☆☆☆

 打席では、比較的リラックスして構えられているのは良いと思います。スクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。ただ、あまり自分のリズムを刻むような揺らぎが見られないのは、少々好打者としては気になる材料です。

<仕掛け> 
平均的な仕掛け 投手の重心が下がってきて底に到達したときに始動

 これが、最も平均的なタイミングでの始動となる。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備える万能型。主に中距離打者や打点を多く稼ぎたいポイントゲッターが多く採用するスタイル。ただ一見完璧そうに見えるこのスタイルも、実はアベレージ打者なのか、長距離打者なのか、どっちともつかずの特徴の見えにくいスタイルに陥りやすい。個性のない打者の多くが、この仕掛けを採用しているケースが多い。

<下半身> 
☆☆☆

 一度上げた足を、地面に降ろしそうな高さから中々降ろさないで、踏み込むタイミングを図る特殊なメカニズムの打者です。ここが、彼の非凡なまでの対応力を支える大きな原動力になっているものと思われます。

 強打者らしく、ベース側に少しインステップして踏み込みます。インステップすると言うことは、内角よりも外角を強く意識したスタイルです。ただ残念なのは、踏み込んだ足下がブレ気味で、結構打ち損じが多く、上半身と下半身のバランスが悪いのが気になります。この辺を修正して行かないと、ボールを捉えるのが非凡でも、上手く結果に反映できない気が致します。

 また打球の多くが、センターから一二塁間方向で引っ張る打球が多いです。そのため打球を引っかけることも少なくありません。

<上半身> 
☆☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」に向かって、グリップを高い位置に持って行きます。少しバットを引くのが遅れ気味なのが気になりますが、上からミートポイントまで無駄なく振り下ろします。ボールを捉えてからもバットの先端が下がることなく、シャープにバットを振り抜いてきます。けしてミートセンスに優れた打者でも、ヘッドスピード・打球の速さは鋭く、ひ弱さは感じません。

 フォロースルーの位置をみると、やはりこの選手はボールを遠くに運ぶタイプの打者ではないことがわかります。ミートポイントの的確さでスタンドインさせることはあると思いますが。

<軸> 
☆☆

 足を上げ下げするスタイルのせいか、頭が結構動いて目線は安定しておりません。足下のブレも見られ、身体の開きも我慢仕切れていると感じもしなく、軸足も崩れ気味なのも気になりました。


(打撃のまとめ)

 ボールを捉えるセンスは、今年の高校球界でも屈指の非凡さがあります。その反面、意外にまだ技術的な課題も多くプロ入り後の改善が求められます。好打者ですがひ弱さはなく、鋭い打球を放ち、その点ではプロの球威・球速・キレにも、比較的早く対応するものと思われます。こと打つことに関しては、入団早々首脳陣の目に留まるのではないのでしょうか。


楽天


(最後に)

 体格・肩・走力と、プロに混ぜてしまうと物足りず、そういった肉体的な資質と言う意味では、なんとも物足りない選手ではあります。

 ただその反面、まさにこういう選手がプロに行くんだと言うぐらい、非凡なミートセンスがあり、それでいて「鋭さ」「強さ」と言う意味でも、プロの基準を満たすまでになってきました。また肩ではアピールに欠けるものの、守備自体は上手く足を引っ張ることはないと言うのも、私は大きな判断材料になると思います。そう考えると、高い評価はできませんが、その非凡な打撃センスが、何処までプロの世界で通用するのか、私自身見てみたいと思います。特徴がみえずらい左の中距離打者ではありますが、彼に関しては打撃が突出しているだけに、そういったことも問題ないと考え、指名リストに名前を残してみたいと思います。


蔵の評価:
 (下位指名級)


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(2010年・夏)






(どんな選手?)


 一年夏から、九州国際大の主軸を任されていた選手で、その柔らかいハンドリングを活かした強打には、際だつものがあった選手。甲子園緒戦の常総学院戦では、内角の球を強引に力でセンター前に落としたが、打者としての片鱗は伺うことが出来た試合であったと思います。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.25秒前後と基準レベルから少し遅い程度か。福岡予選でも、7試合で1盗塁と、それほど足を売りにするタイプではない。

 中堅手としては、後ろに伸びて行く打球を好捕したりと、際だって打球の勘が良いようには見えないが、基準レベルぐらいの守備力はありそう。常総戦では、それほど見せ場はなかったが、外野からの返球を見る限り、地肩はあまり強くなさそうだ。素早く中継に返球することで、ホームアウトを成立させていた。

 現状、守備・走力は、平均レベル前後といった感じで、極端にアピールするものはない。ただ、また強打者として破綻がないのも確かだろう。

(打撃内容)

 一年夏の映像を見て、生で観たらどんな選手なんだろうと期待を持って沖縄でその勇姿を見てみた。しかし、その体格・雰囲気はまさに普通の高校生。特別な雰囲気は感じさせない選手であった。

 スクエアスタンスで構え、足を回し込むスタイルで、着地までの「間」があり、打撃の幅の広さを感じさせる。常総戦では結果こそ出なかったが、鋭いヘッドスピードと柔らかいハンドリングには、素材としての非凡さは感じさせてくれた。ただ、まだ全国レベルのスピード・キレには充分対応仕切れているとは言い難かった。

 ただ続く樟南戦では、内角のストレートを全く開かずにライトスタンドに叩き込んだ打撃は、やはりこの選手の打撃の潜在能力は極めて高いことを改めて知らしめてくれたと思います。

(今後は)

 基本的に中距離タイプの強打者で、守備・走力も並なところから、特徴を見出し難いタイプ。身体から発せられるオーラも並の高校生。それだけに、高卒プロと言うよりは、大学などに進んで大きく華開くタイプではないのだろうか。

 それでもまだ2年生。身体が一回り、二回り大きくなって、凄みが出てくると、印象もだいぶ変わって来るかもしれない。以後の試合でも要注目の打者あることは変わらないし、新チーム以後は、九州でも話題になる強打者であることは間違いないだろう。

(2009年・夏)



楽天



 4番に座ったこの日の榎本だったが、一打席目は頭部への死球。二打席目は、ファーストゴロに倒れるなどあまり参考にならないまま球場を移動することに。ただ感じたのは、177/78 の体格が、並の高校生見えて、ドラフト候補と言う存在感が感じられなかったのが気になった。あと一年の間に、どのぐらい圧倒的な存在感を示せるのか注目したい。しかし柔らかいリストワークには、その非凡さの片鱗が感じられる。

(2009年・春季九州大会