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前川 恭平(西武)投手のルーキー回顧へ





前川 恭兵(大阪・阪南大高)投手 184/72 右/右





               「最後まで見られずじまい」





 春季大阪大会や最後の夏にも大阪に出向き、この 前川 恭兵 を確認しようとしたが、結局最後までその勇姿を確認できずに終わった。怪我で一球も投げられずに最後の夏を終えたことも知っている。そんな彼が、まさかドラフトで指名されるとは思ってもみていなかった。

 下級生の時もみたことがない選手だったのだが、このたび動画を探していたら、2年秋のものが見つかったので、その動画を元にわかる範囲で考えて行きたい。勿論、今年試合の模様を観たわけではないので、評価づけはできないことを、改めてご了承願いたい。





(投球スタイル)

 長身でスラッした体型で、手足の長い、いわゆる「投手体型」正統派右腕。まだ2年秋と言うこともあり、上半身の力が優っており、下半身が弱いなと言うのが率直な感想だった。

ストレート 135~140キロ強ぐらい?

 動画の映像を見る限り、135~140キロ強ぐらいの球速は出ていたように観える。腕の振りがシャープで、指先までしっかり伝えられるリリースなので、球威よりもキレ型の球質。すなわち空振りは誘えるが、甘く入ると長打を食らいやすいタイプなのかなと言う印象は受ける。と言うのは、ストレートに関しては真ん中~高めに集まりやすいのかなと言う風に、動画を見る限り見えた。

 一冬超えて成長していたと過程すれば、コンスタントに140キロ前後~MAX145キロを記録するようになっていたと言うのもなるほど納得で、投手としての筋の良さは本物のようだ。

変化球 カーブ・スライダー

 主な変化球は、切れ味鋭いスライダーにあるように思えます。この球は、低めでしっかり曲がっており、痛手を食らいにくい精度があるように思えます。この動画を見る限り、スライダーも決めに行く外角低めのスライダーだけでなく、内角から曲げる内スラや、カウントを稼ぐスライダーなど、その使い方を複数持っている印象は受けました。

 ただ動画の打者の力量がわからないのですが、やや仕留めるのに苦労しているところをみると、上のレベルではやや決め手不足と言うか、粘られる可能性は高いのかなと思える部分もあります。動画ではわからなかったのですが、あとはカーブをどのように活かし、使える代物かによって、投球の幅は大きく変わってきそうです。ただ現状フォークのような縦の変化で、確実に空振りを取れる球はないのかな?と言う印象は受けます。

(投球のまとめ)

 サンプルが少ないんでハッキリしたことは言えませんが、球種や少なめですが攻めのバリエーションは複数持っているようです。ですから外角一辺倒で、球の威力に頼ったピッチングスタイルではないように思えます。それでも上のレベルを意識するのならば、緩急・縦の変化などを身につけられるのかは、一つポイントになりそうです。

 また捕手がいろいろな立ち位置でサインを出していたことからも、ある程度ボールを自在に投げ分けられる制球力はあるようです。ストライクゾーンの枠の中にボールを集めたりする制球力やストライクゾーンからボールゾーンに切れこむスライダーの活かし方ができる投手ではないのでしょうか。





(投球フォーム)

 僅か数球の投球だけではよくわからないので、実際の投球フォームを分析することで、少しでもイメージを膨らませて行きたい。


<踏み出し> 
☆☆☆

 足の横幅は、肩幅程度。ワインドアップで振りかぶり、足を引き上げる勢いは静かで、高い位置まで引き上げている。この投球動作からも、ある程度自分の「間」を重視した、先発タイプの投手であることが伺えます。2年秋の時点では、上半身に力を感じますが、まだまだそれを受けとめる下半身に課題を感じます。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆☆

 足を引き上げた時に、軸足の膝から上がピンと伸びきることなく余裕を感じさせる。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと

1,フォームに余計な力が入り力みにつながる

2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい

3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い

などの問題が生じる。彼の場合、全体的にバランス良く立てており、軸足の股関節にもしっかり体重を乗せることができている。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

 足をピンと伸ばす時に、高い位置で伸ばせている。そのためお尻の一塁側への落としも悪くない。また幾分ニ塁側へ足を送ることで、身体が突っ込むのを抑えられている。お尻を落とせる投手なので、将来的にも見分けの難しいカーブや鋭く落ちるフォークを投げ込める下地はできている。

 ただそのためには、もう少し着地までの粘りが欲しい。股関節の柔らかさと下半身の鍛錬で、着地までの時間を稼げれば 

1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。

2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。

3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。

などの恩恵を受け、投球の幅を広げられることも期待できそう。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆

 グラブを内に抱えられているのだが、最後に後ろに抜けてしまっていて、グラブの抱えが甘い。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。そのため、両サイドの投げ分けも、大まかなのかもしれない。

 足の甲の押し付けは悪くないし、結構長い時間キープできている。足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。これでも球が浮いているとなると、まだまだ下半身自身が弱い可能性が高い。しかし下半身がしっかりしてくれば、低めに押し込める可能性は高い。

<球の行方> 
☆☆☆☆

 テイクバックした時点で、前の肩と後ろの肩を結ぶラインが、打者に対して斜めに伸びており、ボールを隠すことができている。また「着地」の段階でもボールは隠れており、球の出どころは見難いタイプだろう。

 振り下ろす腕の角度には無理がないのだが、テイクバックした時に、背中のラインよりも肩がかなり奥に入り込んでいるので、そういった体への負担は注意したい。

 高校生にしては「球持ち」はよく、指先までボールに力を伝えることができている。ボールを長く持っていられる。ボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

などがあげられる。

<フィニッシュ> 
☆☆☆☆

 腕を鋭く振り下ろすことができ、体にも叩きつけることができている。柔らかく肘を使って伸びを出すと言うよりは、鋭く振ることでキレを生み出すタイプ。

 けして「体重移動」が悪いとは思わないが、まだ踏み込んだ足がブロックして、前への体重乗りには甘さを残す。下半身を強化できれば、もっと体重を乗せることができるだろう。そうすればキレだけでなく、球威の伴った勢いのあるボールが放ることも可能になるだろう。


(投球動作のまとめ)

 
課題は、下半身の粘りをいかに生み出して行けるのかにかかっている。ただ投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」において「着地」「体重移動」の課題をクリアできると面白い。特に高校生としては、「開き」と「球持ち」と言うニ点では非常に優れているからだ。


楽天


(最後に)

 投球動作などをみると、まだ甘さは残るものの、素材としての良さは感じられた。ただ順調さを欠いた最終学年において、筋力などの肉体面で、どの程度の成長を遂げたのかは不明。

 また動画に映っているように、打たれたあとに「あぁ~」とガックリするような感情が垣間見られることからも、結構自分の気持ちをマウンドで出してしまうタイプなのかなと言う印象はうけた。実際そういうった感情が、マウンドの投球に影響していたのかまでは確認できず。

 そういった意味では、心技体の三つのバランスのうち「体」である素材に関しては、プロ級の器ではないかと思う。ただ順調さを欠いた分、体力面・筋力面の部分で、何処までこの一年で充実させたのかは疑問が残る部分も。

 投球動作の甘さや感情が出やすいプレースタイルからも「心」の部分で、何処まで意識が高いのか?またチームの力もあるのだろうが、大きな大会まで勝ち上がってこられなかった地方の逸材と言う不安は拭えなかった。

 高校生の場合、それほど「技」の部分を重視する必要はないが、投球を見る限り、結構いろいろなことは出来るセンスはあるのかなと言う印象はある。また投球フォームからも、下半身の粘りが作れれば、投球の幅を広げて行ける可能性は感じさせる。

 以上のことからも、順調に最終学年を過ごしていれば、中位以上で指名されるだけのポテンシャルは秘めていたのではないのだろうか。この状況でも指名されたのだから、スカウトとしては、かなりその将来性を買っていたのだろう。ぜひ来年は、ファームでその投球を確認してみたいと思わせる素材。実際見たことはないが、プロ入り後の活躍に期待を抱かせてくれる選手だった。


蔵の評価:
未確認


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(2009年・秋)