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木村 謙吾(楽天)投手のルーキー回顧へ








木村 謙吾(宮城・仙台育英)投手 180/80 左/左





               「何かピリッとしないんだよな。」





  1年夏に初めて彼の勇姿を観て以来、私は何か彼のピッチングに物足りなさを感じていた。そんな 木村 謙吾 が、プロ志望届けを提出し、今指名リストに残っている球団があると言う。果たして最後の夏を迎えた彼が、如何なる成長を遂げたのか?改めて考えてみた。





(投球スタイル)

 少し太めの体格から投げ込んでくる正当派左腕。体型を見ての通り、その動作も何処かもっさりしていて、繰り出される球もピリッとしない。それでもこの夏の宮城予選では、40イニングに登板して奪三振52とイニングを遙かに越える三振が奪え、四死球も7個と実にイニング数に対し1/6強ぐらいと制球は安定している(1/3以下が目安)。これと言って図抜けた球はないが、このことからも左腕にしては投球の土台はしっかりしている言う見方はできるであろう。タイプ的には、球速をを落とした柳田 将利 (青森山田-ロッテ1位)投手を彷彿とさせる。

ストレート 常時135キロ強ぐらい

 特別球威・球速に優れているわけでもなければ、手元でキレがあるとか、伸びがある球質ではない。特に球質に優れているわけでもないのに、ここまでの奪三振を予選で奪えたのかはよくわからない。

変化球 カーブ・スライダー

 投球を観る限り、変化球は横滑りするスライダーとのコンビネーションが殆ど。他にカーブのような少し緩い球があるようだが、滅多に使わない。特にこのスライダーをボールゾーンに投げて振らせるとか言うことはなく、あくまでもストライクゾーンの枠の中で使っており、この球で三振を奪うケースもさほど多くない。また現状は、シュート系や縦の変化球もないように思える。

その他

 左腕投手ながら、牽制の技術・フィールディングの動きはは平均的。クィックも1.3秒台と遅く(基準は1.20秒)、それほど投球以外の総合力が高いわけではない。両サイドに適度に球を散らす制球力はあるが、ボールの殆どは真ん中~高めのゾーンに浮き、低めに集めることはできない。特にマウンド捌きにセンスを感じさせることもなく、淡々と投げ込んで破綻のないタイプといった印象が強い。

<右打者に対して> 
☆☆

 右打者の外角高めにストレートを集めて、そこでカウントを整えることが多い。カーブやスライダーも織り交ぜるが、スライダーの活かした方は右打者の内角を突く時に使うことが多い。そのため左打者の内角を厳しくストレートでズバッと決めて見逃しを誘うと言うよりは、内角へのスライダーで詰まらせるケースが多い。

 両サイドへの投げ別けは出来ているが、緩急・縦の変化、外に逃げて行く球があるわけではなく、配球としては単調な印象は否めない。イニングを重ねて行けば、的の絞りやすい投手だろう。

<左打者に対して> 
☆☆☆

 右打者同様に、両サイドに球を散らせる配球。特に外角にストレートだけでなく、外に逃げて行くスライダーを使い投球を組み立てる。内角も結構突くが、厳しく突くと言うほど、しっかりした制球力があるわけではなく、高めに少し甘い内角球を、左打者に巻き込まれるケースが多い。

 右打者よりは、しっかり配球が組み立てられているが、緩急・縦の変化にも欠け、単調な印象は否めない。少し肘が下がったフォームの割に、それほど左対左の有利さを活かしていると言うほどでもない。


(投球のまとめ)

 繰り出す球・配球・コントロール・マウンド捌きなど含めても、特に現時点では際だつ特徴は見出せない。そうかと言って、もの凄くセンスとか将来性を感じさせるタイプでもなく、単に破綻のない投球をする左腕と言う印象しかなく、分析するまでもなくピリッとしない原因は、この特徴の無さにあるようだ。





(投球フォーム)

 今度は、投球フォームを分析して、その可能性を模索してみたいと思う。


 引き上げた足を二塁方向に送り過ぎているために、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としが甘くなっている。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しにくいことにつながるが、彼の場合、足の送りをもう少し緩和させれば、お尻は三塁側に自然と落ちる気がする。そうすれば、もう少しカーブや縦の変化なども、無理なく投げられる可能性は残る。

 グラブは、しっかり抱えられていると言うわけではないが、最後まで身体の近くに留めることができている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。彼の場合、両サイドの投げ別けが悪くないのは、このグラブの抱えが大きいのだろう。

 ただ足の甲の押しつけが深い割に、ボールが高く浮いてしまうのは何故だろうか?足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。恐らく彼の場合、膝に土が着いてしまうぐらいに重心が深く沈み過ぎてしまい、その効果が損なわれている可能性が高い。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で見た場合に「着地」と「開き」は平均的、「球持ち」に関しては、基準以上ではないのだろうか。しかし「体重移動」がイマイチで、重心が上手く前に移っていっていない。そのため体重が上手く乗らず、手元までのボールの勢いが物足りないのだろう。その辺は、投球フォームの最後に、地面を蹴り上げる勢いがないことからも伺われる。

(投球フォームのまとめ)

 お尻が落とせる割に、縦の変化やカーブなどがイマイチなのは、腕が下がりスリークオーターなのも大きく影響しているのかもしれない。

 重心が深く沈み過ぎることが、かえって体重移動阻害して、ボールの勢いを殺している。

 この二つの欠点が、投球における単調なコンビネーションと球質がイマイチな最大の理由だと考えられる。逆にいえば、この二つの欠点を改善できれば、コントロールも良いので、東北人らしい粘っこい打たせて取る投球にも徹しられるのではないのだろうか。





(最後に)

 現状、投げ込む球の勢い・実際の投球内容を見る限り、特別光るものは感じられない。しかし土台となるフォームには、欠点こそあれ改善は充分期待できる内容。更に、私が左腕に求める第一条件である「左腕は、まずコントロールが良いこと!」と言う条件も満たしている。

 このことを考えると、現時点でプロ入りが「旬」だとは思わないし、プロに混ぜたら何の特徴もない左腕になりかねないものの、全く可能性がないとは言い切れない。ただプロに入るならば、大学や社会人などで確かな実力を身につけた方が好いだろう。もしプロ入りしたとしても、3,4年ぐらいで、あっさり球界を去るようなことにならなければ好いのだが・・・。そのため個人的には、プロ入りには時期尚早だと評価する。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・夏)




楽天



 少し太めのサウスポーながら、マウンド度胸抜群・投球テンポに優れ、変化球でもいつでもカウントが取れるなど、洗練された1年生と云った印象を受けた。

 球速は、125~MAX135キロぐらい。カーブ・スライダーなどを織り交ぜて来る。ただ現在は、変化球の割合が多く、ストレートにはそれほど光るものはない。そのためあと2年で、どのぐらいストレートを磨くことが出来るのかが、プロ入りへの大きな課題になりそうだ。

 マウンドでもふてぶてしい程の態度で、大物感を漂わす。きっと高校時代の大隣(近大-ソフトバンク)も、こんな感じだったのかな?と思ってしまう。今後、どのように転ぶかはわからないが、いち早く頭角を現した世代を代表する左腕として、注目して行きたい一人。


(2008年 夏)