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田中 太一(巨人)投手のルーキー回顧へ



田中 太一(大分・大分工)投手 179/77 右/右





                 「九州NO.1!」





 春先から、九州NO.1は、この田中 太一 だと、関係者の間から話題になっていた。しかし春季大会以後、肘痛のため一ヶ月投球練習もできず、なんかと夏に間に合わせた、そんな感じの夏だったようだ。春の好調時の投球はわからないが、甲子園での投球から垣間見られる、この投手の将来像について迫ってみたい。


(投球内容)

 スリークオーターから投げ込んで来る速球派です。ジワ~と足をゆっくり引き上げる、独特のうねり上げるようなフォームが印象的でした。

ストレート 常時140~145キロぐらい

 けして力一杯投げ込まなくても、コンスタントに140キロ台を記録できる馬力は、さすが九州NO.1と評される投手だと思います。肘の使い方が柔らかく、好調時には浮き上がるような球の勢いがあると言います。しかし甲子園やこの夏の大分大会の投球を観る限り、意外に打者には苦にならない感じの球質であり、高めの浮いた球が予想以上に飛んで行く印象がありました。この夏の球を観る限りは、それほど威圧感は感じません。

変化球 スライダー・シンカーなど

 けして空振りを誘うような、絶対的なキレがある変化球はありません。スライダーもあくまでもカウントを整えたりするためのものであり、低めにこそ集まれば痛手は食らいませんが、甘く入れば長打を食らう可能性は高いです。シンカーも曲がりこそ悪くありませんが、まだ全幅の信頼がおけるほど、完成度は高くありません。そう考えると、上のレベルを意識するのであれば、まだまだ変化球の精度を向上させる必要性を感じますし、決め手に欠けます。

その他

 牽制は、平均的。フィールディングも、それほどドラフト候補としては上手くないように思えます。クィックも1.15~1.25秒前後と基準レベル。制球力も、四球で自滅するようなタイプではありませんが、甲子園では高めに浮いたり甘く入る球も少なくありませんで、破綻のない程度と言った感じです。


(投球のまとめ)

 この投手は、ストライクゾーンにボールを集めることは苦になりませんが、ゾーンの中での投げ別けに関しては、基本的にアバウトで甘い球も少なくありません。甲子園でも、球も高めに浮きがちでありましたし、縦の大きな変化があるわけではありません。球種も少なく緩急にも欠け的が絞りやすい投手のようで、投球にイヤらしさは感じられません。

 またコンスタントに球速を出せる馬力はある一方で、投球に強弱を付けるような要所を締めるセンスにも欠けます。そのため淡泊な印象は否めず、よほど球が走っていないと、相手に馴れられてしまう恐れは感じます。もっと投手としての引き出しを増やして行かないと、上のレベルでは、かなり苦労するのではないのでしょうか?





(投球フォーム)

 スリークオーターと言うこともあり、お尻を一塁側に落とせるタイプではありません。そのため将来的に見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォーク系の修得は厳しいと考えます。典型的なスライダー・チェンジアップ系のフォームなので、球種が増やせず伸び悩む可能性は否定できません。

 グラブはしっかり内に最後まで抱えられているので、両サイドの投げ別けは元来悪くないのかもしれません。ただ甲子園では、球持ちもイマイチで、指先までしっかり力を伝え切れていなかったのが影響したのかもしれません。足の甲で地面を押しつけることができず、足のつま先が微妙に地面を捉えているだけの腰高のフォームなので、ボールは高めに集まりやすい傾向にあります。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」などをの観点からも、「着地」までもそれほど粘りが感じられないので、打者はタイミングが合わせやすいです。「球持ち」もさほど好くないので、ボールが手元まで伸びるとか、微妙な制球力を司る指先の感覚に優れたタイプにも見えません。特に身体の「開き」が早く、ボールが見やすいので、いくら速い球を投げてもその効果は薄いです。足の甲で地面を押しつけられない上に「体重移動」も上手く前に乗っていっていないので、ボールが手元まで伸びて行く勢いがありません。ただこの辺が、彼の元来の姿からは、程遠かったのかもしれません。ただ上のレベルを意識すると、実戦力を司る4つの動作のいずれからも欠点を感じます。これではプロ入り後、球は速くなっても苦労ことが予想されます。


楽天


(最後に)

 確かに故障の影響もあって、この夏は元来の出来ではなかったのかもしれません。しかしそれを割り引いても、制球の繊細さ・マウンドセンス・実戦的なフォームと言う観点では、将来的に伸び悩む危険性は否定できません。

 またこの手のタイプにしては、スライダーやシンカー系の変化球レベルも低く、武器になる球がないのは気になります。速球は速くて変化球がイマイチと言う意味では、高校時代の増渕 竜義(鷲宮高-ヤクルト1位)投手にだぶります。ただフォームの躍動感・速球の迫力と言う意味では、増渕と比べるとワンランク・ツーランク落ちる気が致します。

 ただ故障の問題さえなければ、将来的に150キロ級の球を連発できる資質はあり、そういった意味で、短いイニングでエネルギーを爆発させた時に、どんな投球ができるのか注目されます。時間はかかるとは思いますが、高校からプロに入る力は充分あると評価します。ドラフト当日は、3位前後での指名があるのではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


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(2010年・夏)