10kp-1
一二三 慎太(神奈川・東海大相模)投手 185/85 右/右 |
「野手で評価って・・・」 昨秋神宮大会でその力を全国に知らしめ、世代NO.1の称号を得た 一二三 慎太。しかし選抜では調子が上がらず不甲斐ない投球をすると、更にその後は調子を悪化させていった。 そして気分転換で投げてみたサイドスローが、復活のきっかけになる。しかしそれは、あくまでも復活への過程であって、けしてサイドスローの彼の投球が、評価できると言うことを指すわけではない。それは、まだ投手としての可能性を残すと言うだけのものでしかなかった。しかしここに来て、甲子園で復調気味だった一二三に対し、野手として評価すると言う球団が増えてきたのだ。そこで投手としては、昨秋の神宮大会ほどのできでなかったこともあり、初めて野手として、彼を考えてみることにする。 (プレースタイル) 恵まれた体格は、ガッチリしていて骨格も太く、すでに高校生にして身体ができあがっている印象さえ受ける。そのため技術云々は別にして、身体に強さがあるので、ボールしっかり捉えれば軽々スタンドに叩き込むパワーを持っている。天性の才能よりも、身体の強さで結果を出す。超高校級の素材には、そういったことケースは少なくない。だからと言って、それが通用するほどプロは甘くもないのだが・・・。 (守備・走塁面) なかなか一塁まで全力で駆け抜けないので、正確なタイムは計測できない。自分は投手だからと言う気持ちがあるのだろう、投球に影響しないように走塁への意識は低い。ただ相手の隙をついてパッと盗塁を決めるなど、秘めたる走力はけして遅くはなさそうだ。ただだからと言って、プロで足を売りにするようなタイプではないだろう。 投手としても、最初の一歩目のスタートの良いフィールディングは際だっていたし、素早い牽制の身のこなしからみても、動きの良さは光る選手。クィックも1.0秒前後でできる高速クィックの持ち主で、大型でも自分の身体を自在に動かせる高い身体能力を持っている。プロで二遊間を担うようなスピード感があるかは疑問なものの、三塁もしくは外野あたりならば、充分こなして行けるポテンシャルはありそう。 プロ側が、野手として高い評価をする背景には、185センチの体格ながら高い運動神経があるからだろう。ただ個人的には、あまり打撃センスは感じない。 (打撃技術) 個人的には、野手としては正直ピンとこない。その理由について、考えてみた。 <構え> ☆☆☆ 前の足のつま先を地面から浮かしながら、スクエアスタンスで構えます。グリップの高さは平均的で、腰の据わり・全体のバランス・両目で前えを見据える姿勢はは平均です。 この選手の構えで評価できる点は、打席ではリラックスして立てており、自分の間合いでボールを待つことができる点です。これは、野手としてのプレッシャーから解放されているからなのか、元来彼の性格なのかはわかりません。 <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の重心が下がってきて底に到達したときに始動 これが、最も平均的なタイミングでの始動となる。このスタイルは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備える万能型。主に中距離打者や打点を多く稼ぎたいポイントゲッターが多く採用するスタイルだ。ただ一見完璧そうに見えるこのスタイルも、実はアベレージ打者なのか、長距離打者なのか、どっちともつかずの特徴の見えにくいスタイルに陥りやすい。個性のない打者の多くが、このスタイルを採用しているケースが多い。 まさに私が、一二三に抱く疑問はここで、長距離打者なのか、アベレージ打者なのかの方向性が見えず、特徴が感じられないからに他ならない。 <下半身> ☆☆☆ 軽く足をまわし込むことからも、ボールを捉えるまでの「間」があるので、緩急にはある程度対応できるタイプのように思えます。ただそれほど、足を降ろすタイミングを図っているわけではないので、際だって対応力が高いようには思えません。 軽くアウトステップで踏み出す選手であり、基本的に真ん中~内角よりの球を巻き込む打撃を得意とします。それでも外角の球をライト方向にはじき返したりと、広角に打ち返す打撃を魅せます。ただ気になるのは、インパクトの際に足下がブレてしまうことが多く、身体の開きが充分に我慢仕切れていない点。エネルギーを内に貯めることができずカベを早く崩してしまうので、本当の意味で外角に逃げて行くスライダーや、外角に厳しいストレートなどを捌くのは苦しいタイプだと思います。 <上半身> ☆☆☆ 打撃の準備段階である「トップ」の形を作るまでに、少し遅れ気味です。そのため一定レベル以上の球速・キレには差し込まれやすいタイプだと考えられます。ボールを捉えるまでのスイングも、大きな破綻はありませんが、けして非凡なものは感じません。 スイングの弧の大きさ・ヘッドスピードの鋭さも並です。ただ興味深いのは、フォロースルーの段階で、かなりグリップを高い位置まで引き上げており、ボールを遠くに運ぶ術を持っている点。ただ仕掛けの観点からも、天性のスラッガーではない彼には、それほど重要な要素ではないように思えます。 <軸> ☆☆☆ 目線がブレないまま、その場で綺麗な軸回転で打てるのは、彼の打撃の大いなる魅力です。ただ身体の開きを我慢できないので、外角の捌きには不安を覚えます。また軸足も前に突っ込み気味で、けして安定した打撃を望めるタイプではないようです。 (打撃のまとめ) それほど膝やリストワークが柔らかく天性のミートセンスがあるとか、技術的に秀でていて、ボールを捉える術が優れているわけではありません。 それでいて、仕掛けや身体の各部位の特徴からも、それほど天性の長距離砲としての才能は感じられず、フォロースルーのボールの後押しが、どの程度功を奏すなのかは疑問です。 ボールを捉えるセンス・選球眼・スイングのキレなどの観点から見ても、私には野手・一二三に魅力を感じる部分がないのは、これらの理由からだと思います。 (意識づけ) そして野手・一二三を推さない理由は、彼の打席への入り方にあります。彼自身、野球への姿勢・意識は、けして低い選手だとは思いません。打席に入る前の素振りなども、けしてチャランポランには見えませんし、そうかと言ってチェックポイントを決めて振っていると言う感じも致しません。 打席のラインを踏まないようなきめ細やかさからも、投手らしい繊細さがある選手です。むしろ気になるのは、打席に入る時に足場をしっかり馴らすような打者としてのこだわりを感じなかったことです。きっと彼の中には、自分は投手なんだと言う意識が強いのだと思います。もし彼を野手として鍛えて行くとするのならば、まず本人が野手で飯を食って行くんだと言う意識に変えさせないと、中途半端な結果で終わることになるでしょう。 (最後に) と言うことで、私は野手・一二三 慎太は、買いません。あくまでも彼の評価は、投手としてのものであり、それも彼のMAXは、2年秋の時の内容を評価いたします。 タイプ的には、東海大相模から近鉄に2位指名された 吉田 道 投手を彷彿させます。彼は故障で大成しなかったのですが、同時期の投手としての内容は、吉田選手の方があった気が致します。万が一の場合は、野手としての潰しもきく可能性を秘めている点では、当時の吉田選手よりプロで大成する可能性は高いと思います。 いずれにしても、投手としてどの程度の上積みが残されているかは疑問なのですが、上手く立て直せれば、総合力の高い先発型として3年以内に一軍ローテーションへの可能性も秘めていると思います。また一年目から、ファームでローテーションに入るだけの、基礎体力・基礎技術があります。ただこの選手、春からの不調を見る通り、プロでどう転ぶかも正直読めません。個人的には、投手としても、上位で獲るには怖いタイプだと思います。あくまでも現時点での内容では、中位~下位ならばと言う評価に留めたいと思います。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |
一二三 慎太(神奈川・東海大相模)投手 185/85 右/右 |
秋の明治神宮大会で、一躍世代NO.1として注目されるようになった 一二三 慎太。しかし私は、彼が世代の中心選手としては、少々物足りないとその成長には疑問を持っていた。そこで、一冬超えた成長が注目された選抜大会。しかし一二三は、成長どころか、秋よりも劣化した内容しか示すことができなかった。一躍高校生の目玉から、一ドラフト候補に転落した男の、この春の投球を振り返ってみたい。 (ピッチングスタイル) 一二三の良さは、骨太の骨格とバランスの取れたフォームから、MAX149キロを誇る速球を投げ込めること。そして腕の振りの良さを活かし、速球と変化球の見分けが難しく、球速がありながら、いわゆる試合を作ることができる投手なのだ。更に秋には、内角を厳しく突いたり、ボール球を振らせるなど、その投球術にも磨きがかかり、隙なしの投球をすることで、世代屈指の投手と呼ばれるまでに成長してきた。 (投球内容) しかしこの春は、練習試合から調子が上がらず、更に連戦を意識して力をセーブした省エネピッチングを強く意識しての大会だった。そのためフォームのバランスを崩しているだけでなく、球威・球速・球の伸びにも欠け、秋よりも明らかに劣る投球内容を露呈することになる。秋の神宮大会のピッチングが10ならば、5や6分といった程度の内容であり、あれが一二三の実力だと勘違いすると、それはそれで大きな過ちになる。 そんな選抜では、球速も130キロ台後半~MAXで146キロ。その数字以上に、球が手元まで来ていない印象を受けた。カーブ・スライダー・フォークなどをおりまぜた投球も、神宮大会で魅せたような内角への厳しい攻めも見られなければ、球の勢いがないのでボールになる変化球も振ってくれない。この悪循環の中、ピッチングを組み立てなければならなかった。そういった状況下でも、試合を作るだけの投球術は、まだまだ持ち得ていなかったことになる。 相変わらず、牽制・フィールディングはよく鍛えられており、クィックも1.0秒前後と言う超高速クィックは健在だったのだが・・・。 元来内角を胸元を突くはずの速球が、高めに抜けてしまうケースが目立った。外角への投球も高めに浮き、この球を踏み込まれて打ち込まれる。恐らく体が突っ込んで開きが早くなり、ボールが見やすかったのだろう。そのヒットの多くは、右打者から打たれたもの。むしろ左打者には、内外角への制球は安定し、痛打を浴びる機会は少なかった。しかしながら、投球の軸となるストレートが走らなければ、高校球界屈指の総合力と言われた一二三の投球も、全国レベルの相手には通用しない未熟さを露呈した。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、以前はもっとゆったり始動する感じのフォームでしたが、選抜ではあまりメリハリが感じない一辺倒なフォームになってしまいました。静~動へのギャップが、一見オーソドックスなフォームでも、投球のメリハリを生んでいたのですが、この選抜では淡々とダルそうに投げていたのか、単に状態が悪かったのか?何か新しい試みを行ったものが、まだしっくりこなかったのかは定かではありません。 お尻を一塁側にソコソコ落とせるフォームなので、見分けの難しいカーブや縦の変化も期待できます。ただ現時点でそういった球を投球に織り交ぜることができておりますが、その持ち味がでるのは、腕をしっかり振れたからです。選抜では、その腕の鋭さにも陰りが見えました。 グラブも内に抱えられているのですが、最後ほどけてしまい両サイドへの制球にも甘さが見られました。足の甲の押し付け自体は悪くないのですが、上体は沈みきらず下半身を生かせているように見えませんでした。この辺もイマイチ体重が乗れていないなあと言う印象を強く受けました。 秋は「着地」「体重移動」も悪い投手ではありませんでしたが、春はその辺が不十分で粘りに欠けました。「球持ち」自体はそれほど変わっていなく良いのですが、それが返って下半身が伴わないので、小手先だけで抑えている感じが致します。最大の課題であった「開き」も、より着地までの粘りの無さが、更に早くボールが見える大きな要因だったと思います。 ようは長所は薄れ、より短所が際立てしまったと言う感じで、秋からの成長どころか、更に悪くなっていました。その辺を夏までに、如何に改善し更に高めて行けるのか注目したいです。 (今後に向けて) まずは、秋の状態まで戻すことです。秋並みの内容を示せれば中位級ぐらいで指名されると思います。更に秋以上の内容を夏までに示すことができれば、やはり上位指名されると思います。それだけのものが示せれば、非常に投球の基礎ができている選手なので、比較的短時間(2,3年目ぐらいにはローテーション)で一軍の戦力になれるだけの期待も持てます。 ただもし、この選抜内容から上がってこない場合は、下位指名もしくは、本人サイドから大学進学を表明するかもしれません。本人が、どのような意識を持って野球に取り組めるのかで、大きくこれからの評価は別れて行きそうです。ただ実戦派だと思わせるだけの投球を魅せた秋から、悪ければ悪いなりの投球ができるわけではなかったと言うことも露呈してしまったこの春。まさに本当の真価が問われる最後の夏が、今近づいて来ている! 蔵の評価:☆☆ (2010年 選抜) |
一二三 慎太(神奈川・東海大相模)投手 185/85 右/右 |
(どんな投手?) 1年生から名門・東海大相模のマウンドを任され、スーパー1年生として注目された投手です。しかし今年は、調子が上がらず、ようやく頭角を現したのは、新チームになってから。しかし復帰してからは、この世代を代表する本格派の一人と言えるのではないのでしょうか。 (投球内容) 中学時代は、ジャイアンツカップの優勝投手と言うことで、マウンドを上手くハズしたり、経験豊富なマウンド捌きは、単なる速球派投手ではないです。時々シュート回転する球もあるのですが、球威のある130キロ台後半~MAX149キロの速球を投げ込み、カーブ・スライダー・チェンジアップなど、多彩な球種の持ち主です。 クィックも1.0秒弱~1.1秒前後と高速であり、スタート良いのフィールディング・牽制の上手さなど、投球以外の部分も極めて高いです。マウンドでも気持ちの強さなども感じられ、投手としての資質を高い条件で満たしております。 ノーワインドアップからゆっくり足を引き上げるのですが、そこからいち早く地面に向けて重心を降ろしつつ、前にグィッと大きくステップする腰に負担のかかりそうなフォームです。始動はゆっくりながら、エンジンがかかってからは、素早く腕を強く振るのが大きな特徴です。 「着地」・「球持ち」はそれなりで、「体重移動」は並ぐらい。しいて言えば「開き」が、やや早いかなと言う印象があります。特筆すべきポイントはありませんが、大きな破綻もないフォームかなと。腕を強く振れるので、スライダーなど変化球の曲がりもハードなのではないのでしょうか。 (今後は) かなり筋肉の付きも良いので、あまり今後の爆発的な伸びしろは感じられません。イメージ的には、同じ東海大相模時代の吉田道(近鉄2位)に、似たタイプ(フォームの感じは違うけど)かなと思います。ただ投球センス・気持ちの強さなどは、上手く行けば松坂大輔のような、高いレベルでの総合力投手への変貌を期待出来なくもない投手だと思います。 素材としての「奥行き」「面白み」は、あまり感じられませんが、内角を狙って突けたりと、ある程度投球の出来る選手で、選抜大会ぐらいまでは「世代を代表する投手」として引っ張って行けると思います。その後の可能性については、また選抜までの成長具合を確認して考えてみたいです。「センス」・「強さ」「総合力」を兼ね備えた投手であり、不思議とその体格・球速の割にスケールを感じないだけに、あとは「器」がもう少し大きくなることを期待したいかなと思います。 (2009年・神宮大会) |
(どんな選手?) 中学時代は、ジャイアンツカップの優勝投手として活躍した選手で、1年生の頃から将来を嘱望されていた大型右腕です。ただ今年になり、どうも伸び悩んだのか、まだ相模でも特別な存在ではありませんでした。 (投球内容) この夏は、中々出てこないので、相当状態が悪いのかなと思っていました。しかしいざ登板してみると常時135~140キロ強ぐらいのストレートには、さすがに力強さを感じます。 変化球もスライダー・チェンジアップなどを織り交ぜ、さすがにマウンド経験・実績豊富な投手だと印象づけられます。勢いづいた横浜高校打線も、彼の球威・球速には押されておりました。 (今後は) 新チームの時点で、彼レベルの球威・球速の投手が出てきたら、中々神奈川県下でも攻略は厳しいかもしれません。上手く立て直し、センバツにつないで欲しいです。やっぱり持っているものは素晴らしい投手なので、来年のドラフト候補としてマークしたい存在でした。 (2009年・夏) |