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森越 祐人(名城大)内野 178/70 右/右 (愛知啓成出身) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「あんまり記憶にないのだけれども・・・」 愛知啓成時代から、それなりに名の知れた選手でした。名城大に進んでからも、1年春からレギュラー。それだけに何度か生で見ているはずなのですが、正直印象が残っておりません。今回まさか指名されるとは思っておらず、全くノーマークの選手でした。 そこで今年観戦はしていないはずなので、高校時代の映像などが残っておりましたので、そういった過去の資料や彼が残して成績や動画などを元に、どんな選手なのか考えてみたいと思います。もちろん今年度未確認の選手なので、評価づけを行わないことは、あらかじめご了承くださいませ。 (プレースタイル) 高校時代は、4番などを任されるなど、強打の遊撃手として知られておりました。ただタイプ的には、長打力を売りにするような選手ではなく、上手く右方向中心にはじき返す打撃が持ち味で、むしろ上のレベルでは2番あたりが合っている選手だと思いました。それだけ打撃には目を惹くものは当時なく、私自身全く取り上げたことがなかったのは、「打力のない野手は評価しない」の範疇に入っていたものと思われます。 彼の売りは、非常に安定した遊撃守備。今でもそこにあるのではないかと思っております。もしこれに走力や打力が伴っていれば、2010年度の大社内野手不足の現状からすれば、もっと早く名前があがっていたはずです。 (リーグ成績)
上記のリーグ戦成績はの左の赤字は、二部リーグに所属していたことを示します。 (走塁面) 下記の動画では、三塁到達タイムが、11.7秒台と、かなりの俊足であることがわかります。三塁到達タイムは、12秒を割るかどうかが、一つ大きな目安になります。しかし上記の成績表を見る限り、ほとんどのシーズンが、盗塁は1個か0個と言う内容。走力があるないと言うことに関わらず、盗塁するセンスがないのか?意欲がないのかはわかりませんが、足を売りにするタイプではないことが伺われます。 (守備面) 高校時代から、非常に安定したスローイングが自慢です。キャッチング・フットワークに、それほど派手さはなく、むしろ丁寧に堅実を心がけるプレースタイルです。好きな選手は、ヤクルトの宮本慎也選手だと書いておりますから、そのプレーの方向性が垣間見られます。どんな状況でも、スローイングの球筋が安定していることからも、強肩をアピールすることはなくても、地肩はかなり強いものと見て良さそうです。高校時代から、プロで二遊間を担うことができるディフェンス力は持っておりました。当然大学の4年間で、更にその守備が磨かれていることは、想像に難くありません。 残念ながら大学時代の守備は、この動画でしか確認することができませんでした。しかし高校時代から遊撃守備に関しては、A級のものがあった選手。順調に伸びていれば、守備に関しては即プロ級の実力を身につけていてもおかしくはありません。ただ上記にある動画で、元中日の法元スカウトが、隠し球として、この森越をあげておりました。彼によると、派手なプレーをする選手と評しており、かなり高校時代のイメージとは違います。ただこの中でも遊撃守備は高く評価しているようなので、やはり守備が売りと言うのは間違いなさそうです。 (打撃内容) 下記の動画は、今年のもののようです。基本的に、野手の間や外野の前にはじき返すような打撃をするようで、生粋のアベレージヒッターでもなければ、当然長距離ヒッターではありません。 上記の成績表を見てみても、いくらレベルの高い愛知リーグとはいえ、打率が3割を越えたシーズンは僅か1シーズン(それも.304厘)。ドラフト指名されるような選手であれば、平均して3割台は残して欲しいですし、一度ぐらい4割以上の抜けた数字を望みたいところです。 ただ毎シーズンのように本塁打を記録しているように、ツボにはまればスタンドインのパンチ力は秘めていそうです。特に3年秋・4年春のシーズンで、10打点以上を稼ぐなど、勝負強い一面も見られます。ただこの選手の持ち味は、基本的に右方向への打撃にあるといった感じで、プロでは二番タイプなのかなと思っております。 (打撃フォーム) 高校時代の打撃フォームと、上記の2010年度の映像を見比べると、技術的には当時から驚くほどいじっていないことがわかりました。恐らく1年春からレギュラーを務めてきた彼に、このチームは大きくいじることをしてこなかったのだと思います。そのため大学のスピードに馴れた2年春以降、それほど対応力が上がっていないのも、このせいではないかと考えられます。 <構え> ☆☆☆☆ 前の足を軽く引いて構え、グリップは平均的な高さに添えます。腰もしっかり据わり、全体のバランスも良く、両目でしっかり前を見据えるので、ボールを的確に追うことができております。グリップ付近を適度に動かして自分のリズムを刻みながら構えます。非常に理に適った構えであり、緊張感がありながら、力みは感じさせないバランスの取れた構えです。 <仕掛け> 早めの仕掛け 投手が足を降ろし初めて~一番底に到達する間に始動 これが、現在採用される仕掛けの中では、最も早い仕掛けとなる。打者が足を地面から浮かし~着地するまでの時間(間)が長いほど、打者はいろいろな変化に対応出来る可能性が広がる。そのためアベレージ打者は、この仕掛けを採用するケースが多い。ちなみに今回の熊代選手は、この段階での仕掛けを採用しており、現在アベレージ打者の傾向が強いことがわかる。 <下半身> ☆☆☆☆ 早めに足を引き上げ、足を回し込んで踏み込みます。足を引き上げてから地面を捉えるまでの「間」が充分あるので、様々な緩急に対応でき、打てるポイントの多いタイプだと考えられます。ただ右打者には珍しく、アウトステップを採用するスタイルです。一見内角の捌きを強く意識しているように見えるのですが、ボールをよ~く引きつけて、ポイントが後ろでボールを捉えることが目立ちます。すなわちアウトステップ打者なのですが、右方向を強く意識したスタイルです。 かの落合博満(中日監督)の現役時代も、こういった打撃をしておりました。ただアウトステップ打者が外角を捌けるのは、基本的にベルトから上のストライクゾーンの球、恐らくそこに絞ってボールを叩いているものと思われます。ですからボールゾーンに外れていく変化球や、外角低めで沈む球に対し、如何に見極めて行けるのかがポイントになります。落合選手は、そのゾーンの球をことごとくカットする技術を身につけておりましたし、見極めるのかカットする割り切りができれば、生き残って行ける可能性はあると思います。踏み込んだ足下はブレないので、ボールをよ~く手元まで引きつけて叩くことができます。 <上半身> ☆☆☆ 早めに打撃の準備段階である「トップ」の位置にグリップは持ってきています。ただそこからグリップが更に奥に入り込むので、その分速い球に差し込まれやすいものと思われます。グリップが奥に入り込んで、ヘッドがスムーズに出てこないのですが、これはあえてポイントを後ろに置いていることを意識して、彼の場合わざとやっている節があります。 それでもドアスイングにはならないように、バットを上から振り下ろすことでボールを捉えるまでのロスをなくそうとしております。ただボールを捉える時に、バットの先端が下がってしまいがちで、広い面でボールを捉えにくいので、意外にタイミングがあっていても、フェアゾーンに落ちないでファールになることが多いタイプかもしれません。スイングはシャープでありヘッドスピードは鋭いので、けして二番タイプでも非力な印象は受けません。フォローまできっちり振り抜いており、ボールを遠くに運ぶ打者ではありませんが、当てに行くようなタイプではないようです。 <軸> ☆☆☆☆ 頭の動きは小さく、目線のブレは少ないと考えられます。身体の開きも我慢できておりますし、軸足にも粘りが感じられ、右方向へのしぶとい打撃を可能にします。 (打撃のまとめ) 技術的にけして低い選手ではありませんし、ヘッドスピードなどもプロで通用しそうなものはあります。ただかなり特殊な打撃をしており、本人がどのぐらい割り切りを持って、ボールを絞り込めるのかにかかっているのではないのでしょうか。ただこのスタイルを確立して久しい割に、図抜けた成績を残していない点は、やや気になる部分ではありました。 楽天 (最後に) 高校時代から、自分の打撃を確立しており、その後あまり大きな進歩が見られなかったのは、プロでカベにぶつかった時に、それを乗り越えるだけの引き出しを持っているのか?それを可能にする柔軟性・センスがあるのか?と言う不安にはかられます。 ただ持っている技術は悪くないので、ちょっとしたプロの指導と本人の意識次第では、大きく打撃内容が変わる可能性も秘めていると思います。そういった変化を受けれる人間的な幅とそれをこなす器用さが求められます。 走力・打力は、現状プロレベルにあるとは考えづらく、即売りにできるのは守備であるようです。ただ落合監督という人は、かなり選手の長所を生かして起用するのが上手い監督だけに、まず遊撃守備でアピールできれば、一年目から一軍で起用される可能性は充分あると思います。 ただ残している成績や打撃フォームを観る限り、現時点で打力がプロ級と言う評価には至らなかったでしょうから、恐らく実際に観戦していても「野手は打力がなければ評価しない。」と言う私のポリシーには引っかからない選手だったと考えられ、恐らく指名リストに載せることはなかったものと考えられます。 打力の無さから、一般的に考えればファームで鍛えてからと言うことになろうかと思います。ただ大学では、ほとんど打撃指導をされてこなかったような感じなので、プロの指導者が教えた時に、どんな化学反応を起こすのか楽しみではあります。この指名は、守備という一芸を高く評価した、育成枠に近い指名だったと捉えたいと思います。プロの舞台で、ここに作成した寸評が的を得ているのかどうか、ぜひ来年は確認してみたいところです。 この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・秋) |