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阿部 俊人(楽天)内野手のルーキー回顧へ








阿部 俊人(東北福祉大)遊撃 180/74 右/左 (花咲徳栄出身)





                   「徐々に成長!」





 2010年度のドラフト戦線においては、大学・社会人の二遊間候補は、極めて不足している。そんな中、春のオープン戦から、今年はひと味違うと感じさせてくれていたのが、阿部 俊人 だ。そんな彼が、大学選手権でも魅せてくれたのである。今回は、少しずつ着実に成長する男について考えてみたい。


(どんな選手?)

 走攻守三拍子バランスの取れたプレーヤー。ただ別の言い方をすると、どれも中の上レベルで、プロで売りにするほどの絶対的なものがない選手。打撃も生粋のアベレージヒッターでもなければ、バリバリのスラッガーでもない。広角に打ち返す中距離タイプといった印象。何か売りにできるものを身につけるか、総合力を更に引き上げることで、プロへの道が切り開いて行けるタイプなのだろう。


楽天


(守備・走塁面)

 毎年関東に春先遠征して来る東北福祉大。阿部は、昨秋の二塁から遊撃にコンバートされていた。しかしその守備力は、なかなかもの。派手さはないが、球際にも強く、地肩も基準以上ものがある。プロで数年間、遊撃のレギュラーを担えるかは微妙なものの、ユーティリティープレーヤーとして、内野の何処でも起用できるだけのディフェンス力はありそうだ。大学選手権の佛教大戦ではほとんど見せ場はなかったが、春先のオープン戦や世界大学選手権の選考会では、確かに成長したディフェンス力を披露してくれた。

 また大学選手権ではよくわからなかったのだが、この選手は4.05秒前後で塁間を到達するような俊足の持ち主。通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。

 守備・走力に関しては、絶対的なものはないものの、プロでも充分やって行けるだけのものは持っている。


(打撃スタイル)

 守備・走力が、中の上レベルならば、指名の鍵を握るのは打撃内容。これまでは、守備・走塁同様に、やや特徴に欠ける傾向があった。しかし今春からは、明らかに打撃でも成長の跡が見られるなど、上のレベルを意識できる内容になってきている。また派手さはないが、粘ったり、状況に応じた打撃ができるのも、この選手の最大の魅力。

 今春のリーグ戦では、打率.353厘 0本 10打点と勝負強さを披露。大学選手権では、ドラフトNO.1左腕 大野 雄大(佛教大)から、一人2安打と気を吐いた。これまでは、ちょっと払うような、ひ弱さを感じさせるスイングの持ち主。しかし今回は、大野の150キロ級のストレートを打ち砕き、右中間を抜けて行く三塁打も放って魅せた。これまでのアマ仕様のスイングから、プロでも通用するスイングを身につけたのか、考察してみたい。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆☆

 ほぼスクエアエアに足を揃え(若干引いていますが)、グリップの高さは平均的な位置に添えます。腰の据わり・バランス・両目で前を見据える姿勢なども悪くなく、昨年には見られなかった、自分のリズムで打席に立てるようになりました。コンパクトにまとめ、自然体を意識した、良い構えになってきるのではないのでしょうか。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け 投手のリリース前後に始動

 多くの欧米人やキューバ人などは、このタイミングで始動する。狙い球を絞って、打てる球を引っぱたく、そんなスタイルを取る。ただこのようなスタイルは、非常に脆く打てる球は限られる。強靱な筋力を持つ外人や日本人離れしたヘッドスピードを持たない限り、このタイミングでプロレベルの球をはじき返すのは厳しい。

 彼の場合、この始動でも大野レベルの投手の球をはじき返していたので、一応の評価はできるだろう。ただ長い目でみれば、やはり始動をもう少し早める必要性はあるのではないのだろうか。

<下半身> 
☆☆☆

 リリース直前に始動し、小さく真っ直ぐステップしてくる。小さくステップすると言うことは、打撃の「間」が取れず、打てるタイミングのポイントは限られていることがわかる。甘いストレートを逃さず叩く「鋭さ」は身につけているものの、緩急などに脆さを示す可能性は充分考えられる。

 最大の成長は、踏み込んだ足のつま先が閉じられ、インパクトの際にもブレなくなったこと。これにより外の球でもきっちり叩けるようになって、打ち損じも減ってきたのだろう。

<上半身> 
☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのは平均的。ただボールを呼び込む際に、少しグリップを引き上げヒッチ気味になるので、その分差し込まれやすいのではないかと気になるところ。スムーズにヘッドが出てくるタイプではないので、内角の捌きは窮屈ではないかと思われる。外角の球に対しては、バットの先端を下げずヘッドを立てて、上手くフェアゾーンにボールを落とすことができるタイプ。

<軸> 
☆☆☆☆

 頭の動きは小さく、目線のブレは少なそう。身体の開きも我慢でき、軸足にも粘りを感じさせるなど、体軸の安定感はなかなかだ。

(打撃のまとめ)

 昨年から比べると、自分のリズムを刻めるようになったこと。踏み込んだ足下がブレないなど、下半身の安定感が増したことが、打撃にも良い影響を及ぼしているようだ。

 その一方で、仕掛けの遅さは相変わらず。ヘッドスピードも、昨年からそれほど変わっていないように思えるのは、上のレベルを意識すると少々気になる材料。それでも大野級のストレートに力負けすることなく二安打放ったこと(右中間オーバーもあり)で、ストレートへの不安は、大いに拭うことができた。むしろ今は、緩急や内角への対応の方が見てみたい。プロで即戦力とは期待しずらい内容だが、ボールを当てるセンスには優れた選手だけに、プロの技術を習得できれば、いずれはソコソコの成績を残して行けそうだ。





(今後に向けて)

 今秋のドラフトとなると、ボーダーライン上の選手ではないかと考える。それでも、昨年よりも確実に成長を感じさせてくれた向上心。状況に応じた野球センス。ボールを当てる天性の能力など、プロで生き残って行けるだけの能力はあると評価する。今年のドラフト戦線において、数少ない指名を意識できる二遊間候補ではないのだろうか。


蔵の評価:
 (下位指名級)


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(2010年 大学選手権)






(どんな選手?)

 俊足・巧打の二塁手で、来年のドラフト候補として注目されている内野手です。リーグ戦では1年秋以降レギュラーで、ここまで3回のベストナインを獲得。全日本に招集されるなど学生球界を代表する存在になってきました。

(守備・走塁面)

 もともと二塁手でしたが、今秋は遊撃手として活躍しました。フットワーク・キャッチングなどもそれなりで破綻はありませんし、地肩も基準以上で悪くありません。上のレベルでは、二塁手向きかもしれませんが、打撃でも守備でも安定感が、この選手の魅力です。

 一塁までの塁間は、4.05秒前後。際立って速いわけではありませんが、その打撃能力と粘れるプレースタイルから、一番を任されているようです。もう少し足でアピールできると好いのですが、プロの基準を上回る俊足選手です。

 現在は、守備・走力共に中の上レベル。悪くはないが、売りに出来るほどではないかといった感じです。最終学年で、どの程度まで引き上げ、アピールできるのか注目したいと思います。

(打撃内容)

 非力だったスイングも、かなり「強さ」が出てきました。それでもプロを意識するには、まだ芯の入ったスイングとは言い難いです。ただ非常に粘ることができるなど、ミートセンスと考えたプレーができる選手なので、その辺の高い野球センスに、力強さが加わって来ることを期待したいです。

 前足を軽く引いて構えます。特に体を動かしてリズムを刻むわけではないのですが、リラックスして構えられているのは好いと思います。ただ残念なのは、投手の重心が下がる時にベース側につま先立ちし、本格的な始動はリリース前後という「遅すぎる仕掛け」を採用。これだと一定レベル以上の投手のスピードボールに対応するのは厳しいだけでなく、彼のような非力なタイプが、この仕掛を上のレベルで扱うのは厳しいように思えます。

 また足を小さくステップさせて、真っ直ぐ踏み込んできます。実際のところ「間」が短い選手なので、打てるポイントは限られているように思えます。また踏み込んだ足元が、インパクトの際にもブレてしまうことがあり、打ち損じも結構ありそうです。

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのも遅れがちですし、ボールを捉えるまでのスイング軌道も、最短距離というタイプではありません。ただボールを捉えてからフォロースルーまでのスイング軌道や振り切りは悪くなく、スイング自体は好いと思います。動作が小さい分、頭の動きは小さいので、あとは軸がブレない下半身の安定を期待したいですね。

(今後は)

 もともと持っている野球センス・リストワークの柔らかさを活かしたミートセンスは悪くないと思います。ただ動作全般が立ち遅れることが多く、すべての動作を早くして、余裕を持ってボールを迎えられる打撃に移行することが求められると思います。

 非力なのは、肉体的な問題だけでなく、そういった動作のメカニズムにも、いろいろ課題を抱えていることがわかりました。また守備・走力・打撃共に、まだまだプロを意識するのには売りにできるものがありません。ドラフト候補だとは思いますが、現状では社会人タイプなのかなという印象が強いです。最終学年で、どんなプレーを見せてくれるのか期待してみたいと思います。

(2009年・神宮大会)