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黒沢 翔太(ロッテ)投手のルーキー回顧へ






黒沢 翔太(城西国際大)投手 180/78 右/右 (秩父出身)





                「さすがに、これだけだとね・・・」





 恐らく高校時代や大学時代の何処かで、この投手を観たことがあるような気がするのだが、今回改めて映像やメモを探したところ、簡単には見つけることができなかった。また詳細なデータも揃わず、今回は、本当に寸評を作成するほどの材料が揃わなかったことは、誠にお心苦しいところである。今回は、そんな僅かな情報からのみではあるが、この選手のイメージに、少しでも近づけられればと思い寸評を作成致しました。


(リーグ 実績)

 3年春の千葉大学リーグで、最多勝と最多奪三振のタイトルを奪う。ただ4年時には、春・秋共に投手10傑にも入っておらず、あまり登板していなかったのだろうか?私が確認しに行った千葉大学選抜チームの試合でも、多くの城西国際大の選手は出場していたが、最後まで登板することはなかった。




5分45秒~5分59秒ぐらい

 
今回参考にさせて頂いたのは、この映像のみ。この動画自体が、今年のものかどうかも確かではない。


(投球スタイル)

 この動画は、対左打者ばかりなので、球数も少なく傾向は掴み難い。ただ両サイドへの投げ別けはしっかり出来ている、正当派の本格右腕と言う印象を受ける。

ストレート

 MAXは141キロと言われる投手だけに、普段の投球は130キロ台中盤ぐらいなのだろう。ただ別の写真では、かなり肘を下げており、現在は下がっているのか?それとも動画のような高い位置から投げ込んでいるのかは定かではない。ただ本人のコメントからも、球の伸びが自慢であり、動画でも結構勢いのある球は投げ込めている。

変化球 スライダー・フォーク(縦スラ?)

 動画を観る限り、武器と言われるスライダーと、縦に落ちるフォークらしき球種も投げ込んでいるように見える。緩急を使えるかはわからないが、腕の振りもシャープで、キレのある変化球も投げられているように見える。

(投球内容)

 僅か4球の動画ではあるのだが、外角一杯にストレートを決めたり、左打者の内角を厳しく突くなど、普段から両サイドを広く使った投球が伺われる動画となっている。素材型と言うよりは、かなり実戦型の好投手なのではないのだろうか。





(投球フォーム)

 上記の動画の投球フォームを参考に、フォーム分析をさせて頂きたい。

<踏みだし> 
☆☆☆

 足を大きく引いてノーワインドアップから投げ込みます。足を引くと言うことは、制球よりも球の勢いを重視して投げ込みたいと言う彼の意識が感じられます。足を引き上げる勢い・その高さは平均的だと言った感じです。ただ投げ終わった後のフォームは躍動的で、どちらかと言うとリリーフタイプに見えます。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆

 足を引き上げた際に、軸足の膝から上がピンと伸びきることなく立てている。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと

1,フォームに余計な力が入り力みにつながる

2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい

3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い

などの問題が生じる。全体のバランスや軸足への体重乗せは、膝が余裕がある割にはあまり良くないのが残念。

<お尻の落としと着地> ☆☆☆

 引き上げた足を、地面に向けて足先が伸びているので、お尻が一塁側に落ちるタイプではない。ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながる。

 ただステップの位置・着地のタイミングとしては悪くない。着地を遅らせる意味としては

1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。

2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。

3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆☆

 グラブは内に最後まで抱えられており、動画の通り、両サイドの制球は安定しているタイプではないかと考えられる。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。

 やや見づらいのだが、足の甲での押しつけも、深く長く押さえつけられているように見える。足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。

<球の行方> 
☆☆☆☆

 テイクバックを大きく取りすぎている点とやや肩のラインよりも後ろまで入り込んでいるので、身体への負担は大きそう。ただテイクバックした時に、前の肩と後ろの肩を結ぶラインが、打者に真っ直ぐ伸びておらず、身体の開きは早くない。すなわちボールの出所を隠せていそうだ。

 ただ必要以上に腕を高い位置から投げ降ろそうとしており、身体への負担は大きそう。球持ちに関しては、少々わかりづらいのだが、けして悪いようには見えない。ボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

などがあげられる。

<フィニッシュ> 
☆☆☆☆

 腕もしっかり振れており、投げ終わったあと身体に絡んでいる。また地面の蹴り上げが素晴らしく「体重移動」も、かなり上手く行っているのではないのだろうか。


(投球フォームのまとめ)

 お尻が一塁側に落とせるタイプではないので、将来的に緩急を使ったり、縦の変化で投球の幅を広げて行けるのかは微妙。ただグラブを内に抱えられたり、足の甲の押しつけは素晴らしいので、制球力は高そうだ。

 最も気になるのは、故障への可能性。最終学年にほとんどアピールできなかったのは、故障を抱えていて、思い通りのパフォーマンスを示すことができなかったからではないのか?少なくてもプロ入り後は、その危険性は否定できない。

 投球の4大動作ある「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でも、高いレベルでまとまっており、かなり実戦的なフォームをしていることが伺われる。


楽天


(最後に)

 動画を見る限り、確かな制球力・実戦的なフォームのため、威圧感・球の勢いがあるのかは別にして、かなり完成度の高い投手ではないかと言う印象を受けた。

 その反面、最終学年でのアピールができなかったのは、根本的な能力と言うよりも、故障などが原因ではないかと勘ぐりたくなる。実際のところはよくわからないが、もう少し負担を軽減したフォームにして行かないと、これから先も故障の危険性は否定できない。

 ぜひその投球を確認してみたいものだが、実際現在どの程度投球できるのかは不明。そういった意味では、かなりリスクの大きな指名だったのかもしれない。ただ力を出せる状態になれば、意外に早い段階から結果を出してこられるだけの下地は秘めていそうだ。ぜひ来春は、その完成度の高さを、じかに確認してみたい。


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