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藤谷 周平(ロッテ)投手のルーキー回顧へ






藤谷 周平(南カルフォルニア大)投手 190/77 右/右 





                  「メジャーも実力を認めた男」





 昨年の時点で藤谷 周平は、パドレスからドラフト18巡目で指名されていた投手。その時は、大学に残り野球を続けることを選択した。中学で父の仕事でアメリカに渡り、そこでベースボールと出会った青年が、母国のプロ野球球団から指名される。誠にドラフトも国際的になったものと感慨深いものがある。私もこの選手の存在を知らなかったわけだが、このたび彼の動画が一部UPされていたので、それらを参考にしながら、そのイメージを膨らませて行きたい。当然試合の模様を見られていないので、評価づけはできないことをご了承願いたい。


(大学成績)


年度 試合数 勝ち 負け イニング 被安打 四死球 奪三振 防御率
08年度 11 22回 24 17 4.91
09年度 21 22回2/3 20 15 29 3.97
10年度 19 27回 45 10 18 7.67

 むこうの大学リーグのレベルが、正直よくわからないので、数字がどのような意味を持つのかは掴み難い。そこでここでは、大まかな傾向についてのみ考えたい。

被安打について考える

 08年・09年は、イニング数前後の数字に留まっている。通常打者をある程度力で圧倒しようと思えば、被安打率は70%以下に抑えたい。しかし10年度の27イニングで45安打は打たれすぎ。少なくても大学リーグにおいて、球の威力で相手を圧倒していた形跡はない。

四死球について考える

 ある程度試合を作るのならば、イニングの1/3以下ぐらいには四死球率を抑えたい。08年度(41%)・09年度(66.3%)・10年度(37.0%)と悲観するほどではないが、けしてコントロールで相手を翻弄していると言うほどではない。細かい制球力はないが、ストライクゾーンにはそれなりに集められると言った感じだろうか。

奪三振を考える

 09年度こそ、イニングを上回る奪三振を奪い決め手のあるところを魅せていた。しかし08年度・10年度の成績からすると、それほど三振を奪うタイプには思えない。このギャップが、参加したリーグレベルの差なのか?ピッチングスタイルの変化からだったのかは定かではない。

(データから考える)

 どうも3年間の成績に、はっきりした傾向がみられない。ただパワフルな米球界において、特別球の威力がある方ではなく、そうかといって投球術・制球力などで翻弄するほどのものもない。まだまだ、素材型の域は脱していないのではないのだろうか? 


 アメリカの大学球界が、日本のファームよりレベルが高いとは考えづらい。少なくてもこのぐらいの実績の選手で、日本で即戦力になるとは考えにくい。



(投球内容)

 YOUTUBEやMLBの公式ページにも、彼の投球の模様が少しだけUPされていたので参考にして欲しい。そこで見た印象。

ストレート 

 メジャーのスピードガン表示だと88・89・90マイルだったことからも、常時140~145キロぐらいが、この投手の平均球速ではないのだろうか?MAX154キロと言われるほどの勢いがあるかはわからないが、YOUTUBEで魅せた高めのストレートなどは、140キロ台後半ぐらい出ているような球の勢いは感じられる。ただ球全体が、真ん中~高めに集まる傾向が強そうなので、甘い球を痛打される可能性は、日本でも否定できない。

変化球

 
メジャーページの投球練習を見ると、カーブだかスライダーのような球を併せ持つ。それにYOUTUBEでも紹介されていた落差のあるフォークボールを武器にしているようだ。ただ日本人以上に縦の変化への見極めが下手な米球界において、あまり三振が奪えていないのは何故なのか?まだまだ野茂英雄直伝と言われるスプリットの精度は、それほど高くないのかもしれない。





(投球フォーム)

 実際の投球がよくわからないので、フォーム分析をすることで、そのイメージを膨らませて行きたい。さすがに向こうで指導を受けてきた選手なので、まさに上半身主導の上体投げであることは否めない。

<踏みだし> 


 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んで来るスタイル。クィックでもないのに、足をほとんど浮かすことのないフォームであり、足を引き上げる勢い・高さがない日本ではありえない投球フォームと言えよう。

<軸足への乗せバランス> なし

 ランナーがいなくクィックをする必要性もないのに、この動作を端折っている。これでもある程度の球威・球速を誇るのだから、秘めたるポテンシャルは極めて高い

<お尻の落としと着地> 
☆☆

 足をピンと伸ばした時に、地面に向けて足を伸ばしている。これでは、お尻が一塁側に落ちるはずもない。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に落ちるフォークの修得に苦労する。もしくは、身体への負担が大きいフォームとなる。彼の場合、カーブやフォークを投球に織り交ぜるスタイルなので、その辺は気になる材料だ。

 着地も、メジャーの一流投手に共通するような、着地までの粘りがあるわけではない。こういった身体を捻り出す時間やスペースを確保しないのに、縦の変化やカーブを投げることは危険だし、その精度にも不安を覚える。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆

 グラブを最後までしっかり内に抱えられているわけではないのだが、身体の近くには留まっている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになる。

 ただ腰高の外人投げのため、足の甲が完全に地面から浮いてしまっている。足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。

<球の行方> 
☆☆☆

 セットポジションだが、グラブを斜め前に突き出すことで、ある程度ボールを長く隠すことができている。着地の段階でも、ボールが見え始めるのは平均的から少し早いぐらいか?思ったほど開きが極端に早いわけではないようだ。

 腕の角度もそれほどでもないのだが、ストレートの時は腕を横に切る感じ、フォークの時は縦から振り下ろす感じと明らかに違っており、日本のプロレベルならば、その違いをすぐに見分けるだろう。

 球持ちも悪くなく、思ったよりは実戦的なフォームをしていると言う印象はある。ちなみにボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

などがあげられる。

<フィニッシュ> 
☆☆☆

 ストレートの時は、振り下ろした腕が思いのほか絡んでこない。ただフォークの時は、しっかり絡みついて来る。すなわち腕の振りが明らかに違うのだ。

 足の甲の押しつけができず、しっかり「体重移動」ができていない。そのためしっかり体重が乗らず、手元までのボール勢いが物足りないものになってくる。


(投球フォームのまとめ)

 日本ではありえない指導をするので、その弊害は大きい。ただこれをしなくても、ある程度の球速を誇るのは、この選手のポテンシャルの高さだろう。しかし20歳を過ぎた選手に、このフォームの根本を変えさせることは不可能に近く、如何に微調整を重ねながら日本で通用する術を磨くのか注目したい。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「球持ち」はまずまず。「開き」「着地」は、やや物足りないが悲観するほどではなく、最大の課題は外人投げである「体重移動」にある。ただこれを修正して行くことは、ほとんど無理だと考えるべきだろう。

 身体に染みついてしまったフォームを根本的に直すことは、持ち味を損なう危険性だけでなく、故障への可能性を飛躍的に増すことになる。少なくても1,2年は、日本の常識にはあてはめず、外国人を指導していると言う感覚で接するべきではないのだろうか。


楽天


(最後に)

 日本人離れした体格から、球威・ボールの勢いはある程度ある選手なので、そこで何処まで打者を圧倒できるかだろう。細かい制球力・投球術はまだまだようなので、少なくても数年はファームで育成することになりそうだ。

 マイナーを経験していたマイケル中村あたりとは、明らかに実績では劣る選手。そのため2位で入団したマイケルと違い、6位で指名されたのがその力を物語っている。逆にこのぐらいの成績の選手が、日本でどの程度やれるのかは今後の大きな物差しにはなりそう。そういった意味では、大変興味深い指名であります。できれば来年は、イースタンでその勇姿を間近で観てみたいと思う。ただ選手の選択の幅が広がることは、誠に歓迎すべきことではないのだろうか。


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