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小林 寛(ベイスターズ)投手のルーキー回顧へ




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小林 寛(大阪学院大)投手 180/84 右/右 (江の川出身)


 今年の大学選手権で、最も見たかった投手が、この小林 寛(大阪学院大)投手。ようやくその祈願が適って確認できた彼の初回の投球は、実に素晴らしいものだった。しかし試合が終わってみれば9失点。この原因がなんだったのか?今回は、考えてみたい。


(投球内容)

 安定した下半身を元に、ワインドップでゆったりと始動しながら、上体を強くしっかり振るメリハリの効いたフォーム。その速球は、球威と伸びを兼ね備えたプロ仕様の球質。球速こそ、140キロ~MAX147キロ程度だが、その球質、コーナーにビシッと決まった時の速球は、まさにドラフト候補にふさわしい。

 変化球は、2種類のスライダーとフォークなどを併せ持つ。特に投球のほとんどは、スライダーとのコンビネーションで、両サイドに球を投げ分けるのが身上。牽制は平均的だが、フィールディングはまずまず。クィックも1.05秒前後と高速。マウンド捌きも悪くないのだが、全国レベル相手だと、まだまだ脆い部分も垣間見られた。


(課題)

 気になったのは、けしてコントロールも悪くなく、球の威力もプロ級の彼が、どうして金沢学院大に、ここまで打ち込まれたのか?と言うこと。特にそれほど甘くない球を、痛打されているところが気になった。こういった投手に多く見られるのは、体の開きが早く、コースに投げた球でも高めに浮いて来ると、打たれると言うこと。特に左打者の外角高めのストレートを、狙い済ましたかのように打たれていたのが印象的だった。

 また関西六大学では、防御率1.00でリーグ一位に輝いた。更に驚異的な投球回数でタフネスぶりを証明していたほどの彼が、実際にはランナーを背負ってからは、制球が甘くなったり、フィルダースチョイスなどで自滅したりと、踏ん張りがあまり効かないところを露呈。プロを想定すると、ランナーを背負ってからの粘りや打者からは、明らかに的を絞られるなど、意外に単調なコンビネーションの改善が求められる。





(投球フォーム)

 お尻を一塁側に落とせるタイプではないので、将来的に見分けの難しいカーブや、縦に鋭く落ちるフォークなどを武器にするのは厳しいかもしれない。それでも大きくステップし、着地までの時間を稼げていることからも、ある程度の変化球修得は期待できそう。

 グラブを最後まで胸元に抱えることで、両サイドの制球は安定しやすい。更に足の甲の押し付けも好いので、元来は、もっと低めに球が集まって来るのかもしれない。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では「着地」「球持ち」「体重移動」はまずまず。ただ「開き」に関しては早く、球威・球速ほどの効果は、望めないタイプなのかもしれない。

 そういった意味では、この「開き」の改善が、今後の大きな課題。これを改善できれば、プロでも通用する投球が、期待できるかもしれない。


(今後に向けて)

 精神的にも優位に立ち、自分のリズムで投げているときには素晴らしい投球をする選手。その反面、ランナーを背負ったり、状況が悪化すると、意外に単調なコンビネーションに陥ったり、踏ん張りが効かないことも。

 そう考えると素材はプロ級も、プロで通用するだけの術を身につけるには、数年かかる可能性が高い。指名リストには名前をいれるが、一年目からは多くは望めないだろう。それを覚悟で獲得する球団ならば、2,3年後は面白い存在になっているかもしれない。それだけの土台は、この選手は持ち合わせていると言えよう。

蔵の評価: (下位指名級)


(2010年 大学選手権)