10dp-1





大野 雄大(中日)のルーキー回顧へ




大野 雄大(佛教大)投手 182/72 左/左 (京都外大西出身)





               「明らかにパワーアップ!」





 下記の秋の神宮大会の寸評の時よりも、この春の大野 雄大は、確実にワンランクパワーアップされていた。球のバラツキや高めに集まる制球・下半身の使えないフォームなどには大きな変化は感じられなかったものの、身体をいじめ抜くことで、更にワンランク上の球威・球速を増すことに成功。まさに、ドラフトの目玉に相応しい実力を身につけつつある。

(投球内容)

 相変わらず立ち上がりは不安定ながら、イニングを重ねるにつれてエンジンがかかって来る本格派。球速もコンスタントに145~150キロ台を記録するようになり、アベレージで確実に2~3キロ強は速くなっている。それに加え、球威も増しており、まさにプロのボリューム感を身につけつつある。

 ただその球筋が、真ん中~高めのゾーンにしか集まらなかったり、ばらつくのは以前と変わらない。それでも四球で自滅するようなことはなく、要所を締めることができるのが、この投手の最大の良さ。

 110キロ台の大きなカーブでカウントを整えつつ、低めのボールゾーンに切れ込む120~130キロぐらいのスライダーで空振りを誘う。速球は高めに、変化球は低めにと言うピッチングができている。一端エンジンがかかってしまえば、左腕からこれだけの投球ができれば、プロとはいえ容易にはつけ込めないだろう。





(更に進化)

 課題である粘りのないフォーム・高めにしか集まらないストレート・一辺倒な投球などは、充分に改善できているとは言い難い。しかしながら、それらの欠点を自らのパワーで押し切ってしまったところに、この男のふてぶてしさを感じさせる。

 プロで通用するだけの技術を改善できるだけの器用さはないが、自らの資質を伸ばすことで圧倒。常に努力を怠らない姿勢は、素直に評価して良いポイントだろう。また一見荒削りな素材型に見えて脆そうなのだが、崩れそうで崩れない精神的なタフさ、要所を締められるメリハリは持ち合わせていることは忘れてはいけない。

(今後に向けて)

 まだまだプロの即戦力としては、不安な要素はたくさんある。しかしながら注目されるなか、最終学年に向けて更に資質を伸ばしてきた点は高く評価したい。まして先発をしながら力で押せるほど左腕は、2010年度において、彼の他にはいないだろう。そういった意味では、それなりの評価をしてしかるべき存在。少なくても大学選手権・世界大学選手権の選考会と見てきた大学生の中では、彼が2010年度のシーズンにおいて、最も素晴らしい投球を披露した大学生であることは疑いのない事実。プロでも開幕ローテーション入りを期待できるだけの力を、身につけつつある。上位指名に相応しい、数少ない男だ!


蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名級)


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年 大学選手権)





楽天



大野 雄大(佛教大)投手 182/72 左/左 (京都外大西出身)





              「売りは、クセ球だよね?」 





 MAX151キロのストレートを投げ込む 本格派左腕 大野 雄大 。とかく彼を語る時に、その球速のことが話題になる。しかし私にとってそのストレートは、それほど有難味のあるものではなかった。 

 むしろバックネット裏で、その球筋を一球一球見ていて印象的だったのは、150キロ近い球の勢いではなく、右打者内角に食い込んで来るカットボール気味の球筋、右打者の外角に投げる時に、外に微妙に逃げるクセ球にあった。 

 はっきり言えば、渾身の力で投げ込んでくるストレートの回転は悪く、高めに甘く入る球も少ない。そんな彼のストレートは、内外角に投げ分けて初めて、その威力が発揮される代物なのだ。 

 それは、神宮大会の立正大学戦でも顕著に現れていたのだが、ストレート自体は打順が二回り三回りすれば目が慣れて来る代物であり、甘く高めに入ってくる球を待っていれば攻略できる。そうプロの打者ならば、充分に対応しうるレベルの速球なのだ。 

(意図して投げているのか?) 

 神宮大会の九州産業大戦、この試合で大野は、ほとんどストレートのみで討ち取ったと言われている。しかしバックネット裏で見つめる私には、どうもそれは違うように見えていた。彼は、意図的にカットボールを織りまぜていたように思えたからだ。 

 神宮のスピードガンが、安定して140キロ台後半を刻まず、ガンの調子が悪かったと指摘をするものもいたが、130キロ台後半~140キロ台前半の球は、意図的にカットボールを投げていたか、わかってクセ球である速球を投げていたように思える。 

 それを確認すべく、家に帰ってビデオで試合の模様を見たが、次の立正大戦も含めて、それは確信に変わった。彼は、ナチュラルに変化するだけでなく、意図的にも球速を微妙に殺し、球を操作しているのだ。これは、スピードガンの誤差と言うよりは、彼の意図的な戦略だったのではないかと。 

 この秋の投球では、スライダーらしい120キロ台のスライダーはあまり投げ込んでこない。投球のほとんどを、速球・カットボール・そして大きなカーブで構成している。特にストレートの勢い・球速はあるので、思わずカーブが来ると打者は手を出してしまう。それもストライクゾーンから大きく・鋭くボールゾーンに切れ込んでくる。この球は、プロでも有効に使えるだろう。 

(暗い陰) 

 アバウトに、両コーナーに球を散らすことはできている。ただ足の甲が地面に押し付けられない腰高のフォームのために、彼の球のほとんどは、真ん中~高めの高さに集まる。そのため少しでも甘く入ると、打者の餌食になる。それでも球が手元でグ~ンと伸びたり、スパッと切れたりすれば空振りも誘えるのだが、彼の球は非常に回転が悪い。 

 しかも、体重がグッと前に乗らない体重移動の悪さや、腕を外からブンと強引に振る乱暴なフォームからも、指先まで力を加えてボールに回転を加えるような質の良い球は期待できない。これは、恐らく生涯変わらない彼の特徴だろう。それ故に、この回転の悪さを逆手にとって、意識してクセ球使っているところは、己を知った利口な選択だと評価したい。 

 もう一つ決定的な欠点は、着地までの粘りがなく、打者は「イチ・ニ・サン」のリズムでボールを待っていれば良いのだ。プロで一流になる投手の多くは、「イチ・ニ~のサン」の「ニ~の」タメというか「間」がフォームの中にある。しかしこの大野には、そういった「間」が投球にないのだ。このことに気がつかない限り、プロで活躍するのは厳しいだろう。 

(明るい兆し) 

 昨年は、140キロ~145キロぐらいだった球速が、確実に150キロ近い速球をいつでも投げられるまでに成長。更に、昨年まで出来無かったクィックなどの動作もできるようになってきた。そういった意味では、けして力任せな投球でも、野球への意識が低い選手ではない。それは打者として、一塁まで全力で駆け抜ける姿からも伺われる。 

 だいぶ春の大学選手権の時と比べても投手らしくなってきて、全国レベルで勝てる投手になってきた。元々ピッチングセンスがなかった投手ではないので、不器用だが試合をある程度まとめられる能力はあったと記憶する。 

(ただ・・・) 

 野球への意識・取り組みも悪くないように思えるし、最低限のまとまりも持っている。ただどうかな?集中力が切れると言うか、それを長く持続できない性格なのか?雑な面があるのが気になる。エネルギーを短集中してにぶつけている時は良いのだが、それが長い時間になると、フッと抜けると言うか詰めが甘い部分がある。そういったところは、プロは見逃してはくれないはずだ。 

 あとは、やはり身のこなしからも、根本的に不器用なタイプだと思う。ただその不器用なことを、自分がよくわかっているので、己にあった方法で、対処しようと言う意図が感じられるところに救いがある。 

(今年は、ここに注目!) 

 高めに甘く入る球筋や、手元でキレない球質は、恐らく今年も改善はできないだろう。ただそんな中、如何にその欠点を補う投球に徹しられるかなと思うのだ。 

 速球がキレないならクセ球で、速球が高めに浮くなら、変化球は低めに集める。フォームが単調ならば、フォームを改善するか、その分他のことで補おうとするのか? 

 そういった欠点を、欠点と感じさせない術・創意工夫と言うものがあるかどうかが、一つこの選手がプロで大成できるかどうかの大きな鍵になるのではないのか。このことは、私が良く口にする「人としての引き出しの多さ」と言う言葉に集約される。 

 単調で一辺倒な投球に、何か創意工夫が見られた時、この選手はプロでも一流への階段を昇って行くだろう!
 


(2009年・秋) 









大野 雄大のフォーム分析!

 150キロ近い球をすでに投げられる能力をもち、技術よりも感覚重視で投げているようなポテンシャルの高い投手に対し、技術的な解説が意味のあることかは疑問ではある。

 実際に、彼のフォームを見れば、下半身が使えないのを使えるようになれればとか、よく耳にするが、私の経験上、下半身が使えなかった投手が、下半身が上手く使えるようになった投手など、この20年間のあまり見たことがない。こういった体重移動なども、一つのセンスであったり、癖であったりと捉えた方が極自然であるように思える。

 今回は、そのことを重々承知の上で、あえて技術的考察を、この選手にしてみたい。

<踏み出し> ☆☆

 ノーワインドアップで構えた時に、足の横幅は狭く、それでいてしっかり足を引いて立っているわけではないので、バランスを崩しやすい立ち方になっている。彼のバランスの悪いフォームは、すでに「構え」の時点から始まっている。

 足を引き上げる勢いは平均的で、その高さも並。これは、意識して行っていると言うよりは、彼自身すんなり入る形を選択しているのだろう。何か動作一つ一つに対し無頓着で、野球への深い探究心が感じられない。それでも、あれだけのパフォーマンスを示せるのだから、才能豊かな投手だと言う見方もできる。

<軸足への乗せとバランス> ☆☆☆

 足を引き上げて軸足一本で立った時に、軸足の膝から上が、ピンと真上に伸びるようなことはない。膝から上がピンと伸びきって余裕がないと

1,フォームに余計な力が入り力みにつながる

2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい

3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い

などの問題が生じる。とかく野球界では、真っ直ぐ立てと指導することが多いようだが、私には、その部分に関しては大いに疑問を持っている。

 ただ彼の場合、膝に力みが感じられないものの、全体のバランス・軸足の股関節への体重の乗せ具合は、あまり良いとは言えない。軸足一本で立った時には、後ろから見て、Yの字になるようなバランスが望ましい。

<お尻の落としと着地> ☆☆☆

 意外だったのは、足をピンと伸ばす位置が高い場所で行われていること。足を高い位置で伸ばすと、自然とお尻は三塁側(左投手の場合)に落としやすくなる。ただ彼の場合、その足をニ塁側に送り込み過ぎているので、お尻の落としは少し甘くなっている。ちなみに、お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しにくい。ただ彼の場合は、それまでのバランスの悪さを、この二塁方向へ大きく足を送り込むことで修正しているようだ。

 投球フォームの核でもある「着地」に関しては、足を上手くまわし込み、逃がし方は思ったほど悪くない。ただ彼の問題点では、ステップする幅が狭いことで粘りが生まれず、体重移動を阻害している点だろう。足を逃そうと言う意識はあるようなので、もう少し工夫して、理想のステップを見つけられれば、上半身と下半身のエネルギーが一致する箇所が見つかり、もっと爆発的なボールが投げられるはずだ。

 ちなみに、着地を遅らせる意味としては

1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。

2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。

3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。

<グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆

 グラブは、腰のあたりで抱えられているので、意外に左右の投げ分けはできている。グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。

 問題は、足の甲の地面への押し付けで、上体の高い彼のフォームだと、足のつま先のみが地面を捉えて回転しているのだ。足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。彼の球の多くが、真ん中~高めに上吊ってしまうのは、この部分に大きな原因がある。

<球の行方> ☆☆

 特にボールを隠れたフォームにはなっていないが、「着地」の瞬間には打者からボールは見えておらず、からだの「開き」は早くない。その上、長身から投げ下ろすように、腕を振り下ろすので、左打者にとっては、大変厄介なフォームをしている。ただ必要以上に過度に腕の角度をつけているので、体への負担は大きく故障の可能性が高いのと、球質がどうしても悪くなってしまう。

 腕が体から離れたところをまわり、外からブンと振り下ろすタイプなので、どうしても「球持ち」は悪くなり、制球はアバウトになってしまう。ボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

などがあげられる。

<フィニッシュ> ☆☆

 腕をあれだけ角度をつけて、ブンと振っている割に体に最後絡んでこないのは、やはり「球持ち」が悪いからだろう。また下半身の「体重移動」が不十分なので、ボールが前にグ~ンと乗ってこない、いわゆる棒球になってしまう。ただこの理に適っていないフォームが、ストレートが微妙に変化すると言う、副作用を及ぼしている。これが、彼の打ち難さの大きな要因になっているのだから、野球と言うものは奥深い。

(投球フォームのまとめ)

 意外だったのは、お尻が三塁側にある程度落ちている点。彼が、非凡なカーブを投げられる一つの要因を作っているのかしれない。極端なニ塁側への足の送りをやめ、更に「着地」までの「間」を作り時間を稼げれば、もっと良い変化球を習得できる可能性も広がる。

 最大の欠点は、ステップ幅が狭いことでの「体重移動」が上手く行かないことと、上体が高いフォームになっている点。球が、みんな上吊ってしまうのは、足の甲で地面を押し付けられないほどの、腰高のフォームだと言えよう。

 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点からみれば、「開き」を除く、「着地」「球持ち」「体重移動」と、いずれも大きな課題を抱えている。この部分を改善せずして、プロで通用できるのかは疑問が残る。

 ただ今後、この欠点を少しずつ修正して行くのか?それとも、そういったことはお構いなしで、ひたすらパワーアップを図るのか?極めて難しい選択に迫られる。少なくても前者の修正を図って行くことは、リスクも大きければ、本人の地道な努力・しっかりそれを指導できる環境にあるかなど、様々な条件が求められる。

 この一年、彼がどの方向に向かって行こうとするのか、静かに見守ってみたい。



(2009年・秋)





大野 雄大(佛教大)投手 182/72 左/左 (京都外大西出身)

 (どんな選手?)

 京都外大西時代から、非常に注目されたサウスポーです。昨年までは、神宮でコンスタントに140キロを超えて来ると言う感じから、今回の大学選手権では、球速表示の厳しい東京ドームで、145キロ級の球速を連発致しました。明らかに球威・球速が増しており、来年のドラフト最上位候補です。

(投球内容)

 腕を外からブンと振って来るような強引なフォームながら、常時140~MAX147キロを記録した球威のある剛球を投げ込んで来ます。また低めに結構行くことが多いのですが、この低めに決まる速球は、少し沈むような独特の球筋で中々打者は捉えにくいなどの特徴があります。変化球は、カーブ・スライダー。殆どはスライダーなのですが、速球の勢いがあるので、思わず振ってしまうようなキレはあります。

 制球は完全に荒れ球タイプなので、細かいコースの投げ分けは出来ませんが、四球で大きく自滅するようなことはありませんし、外へ外へと球が散っているので、それほど悲観する必要はありません。ただ牽制・クィックなど相変わらず下手で、その辺の課題が修正出来ていない点が気になります。

 元々は、もっと投球をまとめることが出来たタイプの投手でしたし、元来フィールディングも下手投手ではないはずです。パワーアップする反面、そういった投手としての総合力・バランスが崩れているところが気になるところです。

 また、かなり身体に負担のかかるフォームなので、アフターケアなど充分に注意して欲しいところです。2回戦の富士大戦では、かなり一回戦に比べると、球威・球速が落ちていたところからも、その辺が気になりました。

(今後は)

 20歳ぐらいまでは、肉体の成長も続けるので、ポテンシャルは向上します。問題は、この成長が終わりをつげ衰え始める時に、如何に試合をまとめる能力・術を磨けるか、身につけられるかが、投手としては大事な要素となります。

 ここまでは、その勢いで押すスタイルでも好かったでしょうし、それでも通用してきたと思います。しかし、これからプロと言う世界を想定すると、ただ力だけで押すだけでは厳しいと思います。この選手の本当の真価が問われるのは、これから最終学年に向けて、如何に投手としての総合力・実戦力を意識的に、改善出来るのか、そこにかかっているのではないのでしょうか。小さくはまとまって欲しくはないのですが、その辺も一つ期待してみたいところです。それさえ改善して行ければ、間違いなく豊作の来年でも目玉級の存在になれる投手だと思います。


(2009年・大学選手権)





楽天




(どんな投手?)

京都外大西時代から、全国で活躍する本格派左腕でした。大学に入り一段と球速を増し、2年後のドラフトが期待される、速球派左腕です。

(投球スタイル)

リリーフでの登板でしたが、常時140キロ前後~142キロぐらい神宮大会では出ておりました。しかしその球速表示以上に、球に勢いと威力を感じさせる速球で、中々速球に関しては、打ち返すのが厳しい程の球でした。

スライダーは、曲がりながら落ちるスラーブ的なスライダー。この球とのコンビネーションです。かなり制球は荒れ荒れで、コーナーに投げ分けると云うよりは、ストライクゾーンの枠の中に、力一杯投げ込んで来るスタイルです。むしろ高校時代よりも、投球は粗くなった印象さえあります。フィールディングなどは中々上手いのですが、クィックなどは出来ないようです。マウンド捌きは良いのですが、試合をまとめると云うよりは、球の威力で押しまくるタイプです。

(素材としては)

身体が出来てきたのか、球に「速さ」が増しました。今の荒れ荒れの投球で、何処まで実戦的な投球が出来るのか疑問なのですが、素材としては2年後プロを意識出来るところまで来ております。ただ残念なのは、身のこなしが「硬い」点。そして投球に「センス」があまり感じられません。ただ高校時代は、もう少し投手らしい側面が目立っていたので、けしてそれが出来ない投手ではないと思います。

(最後に)

速球に関しては、プロを意識出来る選手です。ただ変化球は、スライダーのみ。更に制球力も、とってもアバウトです。これから上級生になるにつれ、大事なところを任されて行くことでしょう。そうした時に、如何に勝てる投球を身につけられるのか求められると思います。そういった中で、実戦力を如何に磨くことが出来るのか注目したいですね。面白い選手が、関西にいると云うことを、ぜひ皆様も頭の片隅に覚えておいて頂きたいと思います。

(2008年・神宮大会)




大野 雄大(京都・京都外大西)投手 180/66 左/左

  まるで郷土の先輩・岡島秀樹(東山高-巨人-日ハム)投手のように、首がそっぽ向いて、思いっきり上体を振って投げる大型左腕。球速もすでに常時135キロ前後投げられるようになるなど、夏に向けてプロから注目されそうな逸材だ。

(投球スタイル)

 MAX136キロの速球に加え、100キロ前後の大きなカーブと115キロ強のスライダーを織り交ぜる正統派左腕。細かい制球力はないが、球の威力と緩急で相手を牛耳る。

<右打者に対して> 
☆☆☆

 アウトコース高めのストライクゾーンから、その上のボールゾーンへ速球を集めるが、球が上吊ることが多い。インコース胸元にも速球を魅せつつ、大きなカーブを織り交ぜる。たまにスライダーを投げることもあるが、ほとんど速球とカーブのコンビネーション投手だと言えよう。

 意外に右打者に対しては、両サイドに上手く球を散らせている。けして精度が高いとは思わないが、真ん中近辺の甘いところに球が集まって来ることはない。もう一つあたり使える変化球があると投球の幅も広がるのだが。

<左打者に対して> 
☆☆

 左打者に対しては、ストライクゾーンの枠の中に投げ込むと言った感じで、コースの投げ別けは殆ど出来ていない。また真ん中高めの打ち頃のゾーンに球行くこともあり、その球を痛打されるケースが目立った。この投手の場合、左対左の有利さは、殆どないと言っても好いのかもしれない。

(投球フォーム)

<踏みだし> 
☆☆

もう少し勢いが欲しいのだが・・・

 ノーワインドアップから、両足の横幅は並程度だが、足は引いて構えられている。しかし足の引きあげ、高さはもう一つで、物足りない。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆

バランスの好い立ち方を

 軸足の膝が伸びてしまい立ち方に力みを感じる。またバランスも悪く充分に股関節に体重が乗せられていない。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

着地までの時間を稼ぐ意識を

 お尻を三塁側(左投手の場合)を落とし、身体を捻り出すスペースは確保出来ている。これにより大きなカーブをしっかり投げられる要因になっている。しかし着地が早く、軸足~踏み込み足への体重移動がままらない。当然打者からは粘りのないフォームでタイミングは合わせやすく、体重移動や身体の捻る時間もキープ出来ていない、下半身の使えないフォームとなっている。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆

もっと動作一つ一つをしっかりと

 グラブは最後まで身体の近くにはあるが、しっかり内に抱える意識はないようだ。もう少ししっかり抱えないと左右の制球力は安定し難い。足もつま先のみを地面につけて回転しているので、上体が浮きやすく球が高めに上吊る要因になる。また下半身のエネルギー伝達も悪くなる。

<球の行方> 
☆☆

身体の開き・球持ちも実戦的に

 着地が早いために、身体の開きも早くなりがちだ。腕を高くから振りおろすのが、この投手の豪快さを感じさせる部分だが、身体から遠いところからリリースしており、球持ちは好いとは言えない。球持ちが悪いと指先まで力が伝えられないので、微妙な制球力はつかないし、バックスピンもかからないので球質も低下しやすい。また打者からも粘りなくタイミングが合わされやすい。

<フィニッシュ> 
☆☆

豪快さがある一方で、バランスが悪い

 豪快に腕を振りおろすので、身体を強く叩いている。ただ足の蹴り上げは、体重移動が不充分で力の逃げ道を蹴り上げ足に求めたために高く上がっている。投げ終わった後はバランス悪く、三塁側に流れる。下半身の体重移動をしっかり行うことが求められる。

(最後に)

 体格にも恵まれており、球速・豪快さもある投手なので、スカウトによっては、ドラフト候補として引き続きマークしている球団もあるかもしれない。ただ投球術にしてもフォームにしても、非常に課題の多い素材型。夏には140キロ台の期待も充分出来そうだが、まだまだ多くの課題が残る。夏までに、どこまで課題を修正出来るのか、じっくり見守りたい一人だ。

(2006年 4月2日更新)






 秋は左腕の大野雄大投手が主戦級の活躍をしています。観戦の機会があったのですが、直球はMAX140キロ位?で低めに制球されるも、カーブは制球・変化ともに、もう少しといった感じ(その試合がたまたま悪かった可能性もあります)。

 ただ強豪の京都成章の各打者でも直球には殆ど振り遅れてました。2年時の報徳・片山君より直球の伸びは上の様な印象です。