08ky-14





金子 侑司(西武)内野手のルーキー回顧へ






 金子 侑司(立命館大)遊撃 178/70 右/両 (立命館宇治出身 





                  「こんなもんじゃないだろ」





 立命館宇治時代に ☆☆☆☆ その年の高校NO.1野手だと絶賛した 金子 侑司 。しかし私には、その後の彼のプレーを見ていると「お前、こんなものじゃないだろ」と、歯がゆさを感じずにはいられない。何か今持っている能力だけでこなしてしまい、大きな成長は感じられないのだ。そんな思いは、今春のオープン戦を見ても変わらなかった。果たしてあれから三ヶ月、彼はどのように変化しているのか、大学選手権の舞台で再び確認するチャンスが訪れた。


(守備・走塁面)

 彼の最大の武器は、塁間4秒を切るような脚力にある。ただ彼のリーグ戦の成績をみると、3年秋の8個を除けば、毎シーズン5個弱の盗塁。プロで足を売りにするならば、何処かのシーズンで10個以上の数字を残して欲しい。ちなみに、今春のリーグ戦でも5個だった。

 春のオープン戦でもこの大学選手権でも、実際に盗塁する場面を観たが、いずれも刺されている。この選手を見ていると、あまりスタートセンスに優れていない。確かにラップを測ればそれなりの数字は出すのだろうが、盗塁を決めるということに関しては、それほど図抜けていない。現状は、足は速くてもプロに混ぜてしまえば中の上・もしくは上の下レベルであり、プロですぐに足を武器にできるかは疑問が残る。

 高校時代は、中堅手としてのプレーを評価。立命館だい入学後からは、遊撃をずっと守っている。実際試合前練習から見ていても、グラブ捌き・スピード感・フットワーク・地肩なども、中の上レベルぐらいで、これまた売りにするほどの精度ではない。この大学選手権でも、スローイングが乱れたりと安定感はもうひとつ。こちらも、プロで磨かないと、守備を売りにしてゆくのは難しいだろう。地肩自体は、中の上レベルはあり、けして肩が弱いわけではないのだが。

 現状、走力・守備力ともに中の上~上の下ぐらいであり、プロでの育成・進歩が求められるレベル。彼の指名の有無は、打撃内容にかかっていると言っても過言ではない。


(打撃内容)

 高校時代は、まるで 前田 智徳(広島)を彷彿させるような中距離打者だったが、今は何処かボールをなでるような、弱々しい合わせるだけのバッティングが気になっていた。しかしこの大学選手権では、その辺の意識が少し変わってきたのか、強く叩けるようにはなっている。この辺は、少しプロを意識したスイングだと思うのだが、成績の方は、.217厘と低迷した。

<構え> ☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップを高めに添えて構えます。腰が据わりつつ背筋を伸ばし、両目で前を見据える姿勢・全体のバランスも程よく、構えとしては悪くありません。ただ高校時代に魅せたような、隙なしの凄みはまだ感じられませんでした。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下る途中で始動する「早めの仕掛け」を採用。中距離打者の臭いがした高校時代に比べると、少し始動を早めている。これを意図的にやっているとするならば、より対応力を重視しているからだろう。彼のここまでのシーズン最高打率は、3年秋に残した.333厘。彼の潜在能力を考えれば、4割越え期待したくなる。彼のプレーが物足りないというのも、こういった実績からも裏打ちされている。

<足の運び> ☆☆☆

 早めに始動して、足を上げてから下ろすまでの「間」は取れているので、速球でも変化球でも合わせやすいはず。真っ直ぐ踏み出すことからも、内角の球でも外角の球でも捌きたいタイプ。ただこの辺は、アベレージ色の強い打者ならば自然な選択。

 ただ今回気になったのは、外角の球をレフト方向に流したにも関わらず、インパクトの際に足元がブレていたこと。これでは充分「開き」を我慢できないだけでなく、パワーロスもして打ち損じも多くなるだろう。元々足元がブレなかった選手だけに、この上半身と下半身のバランスが損なわれていることが、最終学年の不調につながったのではないのだろうか。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速いボールに立ち遅れる心配はない。バットの振り出しも悪くなく、大きな弧を描いて最後まで振り切れている。この選手のスイングは、けしてインサイドアウトで最短距離で当てるというタイプではなく、大きな弧を生かしブンと振る中距離打者の名残りがスイングからも見受けられる。これ自体けして悪いことではないし、更に春のオープン戦の頃に比べると強くボールを叩けるようになり、この辺は成長の証ではないのだろうか。ただ強く叩くことを意識するがばかりに、全体のバランスを損なった可能性は否定できない。

<軸> ☆☆

 その証に、この大会では頭が結構動いていて、目線は動きがち。更に足元が踏ん張れず、開きが我慢できていない。軸足には粘りを感じられても、軸が不安定なり打撃が安定しなかったように思える。

(打撃フォームのまとめ)

 強く叩くことを意識し実践できたことは評価に値するが、その分土台である下半身や軸である頭が動いてしまっていれば、打撃は安定しないだろう。これでは、せっかくの成長分もプラス・マイナス0になってしまう。もう一度原点に戻って、自分の打撃を足元から見つめなおして欲しい。


(最後に)

 評判ほど、走力・守備力のレベルが高いとは、私自身思っていない。更に打撃にも課題を残し、個人的には指名リストに名前を残すのかは正直迷っている。高校時代高く評価した選手だけに非常に残念ではあるが、秋のリーグ戦まで、その評価は据え置きとしておきたい。もしこのまま確認できないまま終わったら、指名リストに名前は残さなかったということにして頂きたい。現状の評価はボーダーラインであり、球団によっては指名して来る球団もあるのかもしれないが。いずれにしてもファームで少し鍛えないと、プロでは厳しいだろう。


(2012年 大学選手権)