08ky-13









坂口 真規(巨人)内野手のルーキー回顧へ




坂口 真規(東海大)三塁 187/95 右/右 (智弁和歌山出身) 





                     「意識は変わりつつあるが・・・」





 智弁和歌山時代は、スカウト達から熱い視線を浴びたスラッガー。鳴り物入りで東海大に進学も、長く下位打線を任されるまま上級生になってしまった。さすがにこのままではヤバイと、バットを短く持ったり、プレーの意識にも変化が見られ始める。長打よりも勝負強い打撃に、少しプレーに欲が出てきた。

 正直智弁和歌山時代から、私はあまり彼に魅力を感じなかった。それでも、高校時代から注目のビッグネーム。試合に出場していれば、それなりに注目してみていたが、チェックを入れようと思ったことは殆どなかった。そのため彼の大学に入ってからの寸評は、今回が初めてになる。


(守備・走塁面)

 一塁までチンタラ走っていた高校時代に比べ、今は当たり次第では一所懸命走る姿が増えてきた。一塁までの塁間は、4.45秒強ぐらい。これを左打者に換算すれば、4.2秒強に相当。これは、プロのスカウトが左打者に求める基準レベルのタイムとなる。そう坂口は、純粋に走るだけならば、ドラフトの基準レベルになる。ちなみに2012年のドラフト指名された右打者の到達タイムを偏差値に直すと、坂口の走力は基準を満たすものの、全体での走塁偏差値は 43 ぐらいと遅い部類になる。

 今でもアウトだと思うと、勢いを緩めてしまうことも少なくない。まして盗塁をバシバシ仕掛けて来るタイプではないので、走力でのアピールは正直薄い。

 高校時代は一塁手だったが、東海大進学後は三塁手に。実際三塁手としては、打球への反応・キャッチングなどに大きな欠点はなく基準レベル。更に地肩もまずまずなので、こと守備が極端に劣っている印象はない。他のポジションは期待し難いが、三塁・一塁あたりならば、プロでも問題なくこなせそう。


(打撃内容)

 実際こうやって見てみると、彼の評価を決定づけるのは、やはり打撃ということになる。高校時代は、引っ張って上手く巻き込めればスタンドインという感じの打者だったが、今はセンターや右方向にも打ち返すことができ、勝負強さを売りにしている。勿論ツボに入ればスタンドインの長打力は、彼の魅力の一つ。以前ほど脆い印象はなくなり、それだからこそ東海大では4番を任され、春季リーグでは10打点を残すことができたのだろう。

<構え> ☆☆☆☆

 ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスであり、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスも程よい。特に力んで構えている印象はないのだが、あまり自分のリズムを刻むのが上手くないのか、何処か固い印象は否めない。構え自体は好いのだが、何処か物足りなく感じるのは高校時代から変わらない。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下がる時に始動する「早めの仕掛け」を採用。これは、典型的なアベレージヒッターが採用する仕掛けであり、彼のプレースタイルからすると、かなり意外な印象。より対応力を求めてきた結果なのだろうが、実は高校時代から早めの仕掛けを採用している。身体の強さがあり長打を放つが、本質的にはスラッガーではないことがわかる。

<足の運び> ☆☆☆

 足を引き上げて、真っ直ぐ踏み込んで来る。足を上げてから降ろすまでの「間」は取れているので、速球でも変化球でも、幅広くボールに合わせられるタイプ。ただ残念なのは、足を引き上げた時に、膝を内に閉めてしまうので、せっかく図ったタイミングが狂いやすい。

 踏み込んだ足下は、インパクトの際にブレないので、外角の球を右方向にも打ち返すことができる。ただ今年の大学選手権では、右方向よりも長打を意識して引っ張りにかかっていたのは残念だった。彼の打撃を崩すときは、大きなのが打ちたいという気持ちが勝って、引っ張りにかかった時ではないのだろうか。

<リストワーク> ☆☆

 打撃の準備である、「トップ」を作るのは遅くない。ただ「トップ」の形を作ってから更にグリップを後ろに引く癖があるので、その辺がタイミングを狂わせる要因ではないかと思う。

 バットの振り出しも、やや身体から離れて振られて来る。またボールを捉える時も、バットの先端であるヘッドが下がって下を向いているので、ボールはフェアゾーンに落ちにくい。それでもドアスイングにならないのは、踏み込んだ足下がインパクトの際にブレずに地面を捉え続けているからだろう。

 上手くボールを捉えられれば、大きな弧のスイングとフォロースルーを活かし、ボールを遠くに強く運ぶことができる。

<軸> ☆☆☆☆

 足を上げ下げする割には、頭の動きは小さく目線は安定。身体の開きも我慢でき、軸足も安定している。軸を起点に、クルッと上手く腰の回転で打つことができている。

(フォームのまとめ)

 足下がブレなくなったのは成長の証だが、膝の閉めやトップの移動・ヘッドの下がりなど、打ち損じが多くなる要素を多分に含んでいる。本質的には、それほど高校時代から大きく打撃フォームをいじっているわけではない。

 ついつい色気が出てきて引っ張りにかかろうとすると、フォームのバランスを崩し始める悪癖がある。それでも本塁打を連発できるような、天性のホームラン打者ならばそれもありだろう。しかし彼の場合、本質的にはスラッガーではないので、そういった打撃はできるだけ慎むべきではないのだろうか。


(最後に)

 昨年の秋ぐらいから、意識が変わってきたなと思える場面も増えてきた。今春のリーグ戦も、けして悪くはなかった。しかし大学選手権では、ちょっと色気が出てしまい、持ち味を発揮しきれなかったのだと思う。それは、外の球を引っ張りにかかり、空振りする場面が目立ったから。

 大学の4年間ので中で、少しずつでは成長の跡は伺えた。ただプロで期待に応えるだけの技術は、まだ身につけていないと考える。まずは社会人で腕を磨き、プロを目指すのが得策ではないのだろうか。「「急がばまわれ」 である。


(2012年 大学選手権)