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金丸 将也(広島)投手のルーキー回顧へ



金丸 将也(24歳・東海理化)投手 186/86 左/左 (中部大出身)





                 「見事にパワーアップ!」





 下記の寸評にもあるように、大学選手権で見た時のMAXが143キロだったことを考えると、この2年間の間に7キロ球速を伸ばし、MAXは150キロまで到達。すでに中部大時代には
を付けた豪腕が、再びドラフト解禁の年を迎えた。

 社会人・東海理化に進んだ彼は、一年目故障で投げられず。その才能を爆発させたのは、今年になってから。激戦の東海予選でも、4試合抑えとして登板し、無四球・無失点に抑えている。その予選では、都市対抗同様にMAX150キロを記録した。





 球離れも早く一見ラフなスタイルの投球に見えるのだが、この投手の良いのは適度にボールがストライクゾーンの枠のギリギリに散ったり、意外に四死球を出さないで踏ん張られるところ。都市対抗では、緊張からか制球を乱していたものの、その大器の片鱗を伺うことができた。


(投球内容)

 大学時代よりも体重が10キロ程度重くなり、ただでさえパワーピッチだった投球に球速が加わってきた。相変わらず恵まれた体格を生かし切れているとは言い難いフォームなのだが、スピード感溢れる投球を都市対抗でも披露してくれた。

ストレート 130キロ台後半~MAX150キロ

 かなりリリースポイントが不安定で、球が暴れる傾向にあります。ただこの選手が四球を少なく抑えてこられたのは、一見力加減がわからず投げているように見えるのですが、実は制球が定まらない時には、130キロ台後半の球速で、力抜いてカウントを稼ぐと言うことができる投手だからです。その球も狙って投げているのか微妙ですが、コース一杯に決まっているのは、偶然ではないかもしれません。

 ただ手元で伸びるとかキレる球質ではありませんが、グワ~ンと投げ込まれるボールには勢いと球威があり、その荒れ球で相手打者を恐怖のどん底に突き落とします。

変化球 

 変化球は、曲がりながら落ちるスライダー、落差はないが外に逃げるシュート気味のスクリューの2種類。緩急を効かせた球や縦に鋭く落ちる球種は、大学時代からありません。ただスライダーは、それほど効果的に使えていないのですが、曲がり自体は悪くありませんし、投球に多く混ぜるスクリューは、結構打者には厄介な球種です。

その他

 大型故に、あまりフィールディングが機敏で上手いタイプではない。クィックは、1.3秒台と遅く、それでいて鋭い牽制もあまり投げないタイプだけに、左投手とはいえランナーへの警戒心・釘付けにする技術には課題を残す。

 また元々試合を組み立てる器用さ・細かい制球力があるタイプではなく、あくまでも短いイニングでエネルギーをぶつけるタイプとの印象が強い。少なくても、プロ入りしばらくは、リリーフでの投球が多くなるのではないのだろうか。

<右打者に対して> 
☆☆☆

 都市対抗では、僅か1イニングの投球と言うことでややサンプル不足なのはご了承願いたい。右打者のアウトコース一杯に、ストレートとスクリューのコンビネーションでカウントを稼ぎます。

 都市対抗では見られなかったが、大学時代は内角にストレートとスライダーを食い込ませる芸当も見られた。また真ん中低めに切れ込むスライダーを織り交ぜるのだが、調子がよければ、このストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込んで来るスライダーで、空振りを誘いたかったのだろう。

 緩急・決め手に欠ける部分はあるものの、外角一杯・低めに球が行くので、意外に痛手を食らい難い特徴は、大学時代と同様の傾向が見られた。

<左打者に対して> 
☆☆☆

 アウトコースに速球とスライダー・インコースにも速球とスライダー・スクリューをアバウトに投げ別けて来るスタイルは、大学時代と同様。かなり腕も長く、ブンと振って来る恐怖心は、左打者には厄介な代物。コントロールも荒れ球なだけに、なかなか外の球を踏み込むのにも勇気がいるだろう。

(投球のまとめ)

 非常にラフな投球スタイルなのは相変わらずなのだが、その割にボールが枠の外に外に散って投球が成り立っている。更に要所を締める踏ん張りの効くタイプの投手で、四球で自滅しそうでしないところも、この投手の投球を成り立たせる大きな要因となっている。

 手足の長さを活かしてブンと腕を振って来る荒削りさと荒れ球が、ボールに勢いがあるだけに、かえって打者の的を絞りにくい典型的なタイプだと言えよう。








(投球フォーム)

 ワインドアップから振りかぶって、ダイナミックに投げ込むスリークオーター。投球フォームは、ほとんど大学時代と変わっていなかったので、詳細は下記のフォーム分析を見て欲しい。

 お尻の落としは、やや甘い傾向にあり、着地までの粘りがあるかと言われると微妙ではあるが、着地のタイミングが早すぎることはない。それでもステップの幅が狭いので、どうしても体重移動を阻害されている。将来的にも、見分けの難しいカーブや縦に鋭い変化を修得するのは難しいだろう。

 グラブをしっかり内に抱え込めているわけではないが、最後まで身体の近くに留められている。大学時代は、身体の後ろに抜けてしまっていたのが、若干よくなっている。足の甲では深く地面を押しつけられていないので、どうしてもボールを低めに押し込めないで抜けることが多い。ただ力を抑えて投げることができるので、その時は低めに決まることもある。

 腕の角度には無理がないのだが、腕の振りが外旋するタイプなので、やはり負担は小さい方ではないだろう。その辺を考えると、故障も経験してわかるとは思うが、アフターケアには充分注意して欲しい。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で見ると、ボールの出所の見難い「開き」の遅さが最大の特徴。その反面「球持ち」の浅さと「体重移動」の不十分さが、まだまだ能力を半減させていることがわかる。けして努力できないタイプではないようだから、将来的にフォームにも意識を持った取り組みが求められるが、けして自分の身体を器用に使いこなせるセンスがあるタイプではないので、課題を克服してゆけるのかは微妙だと考える。


楽天


(最後に)

 大学時代と基本テイストは変わらずに、パワーアップに成功したと言う印象が強い。高校~大学にかけて10キロ球速を伸ばし、更に大学~社会人でMAXを+7キロまで伸ばし少しずつ成長を重ねている。

 細かさ・繊細さに欠け、本当の意味での制球力・投球術がないだけに、プロで即戦力?となると不安な部分が残るのだが、要所で踏ん張れる精神力・投球練習時でも最後まで力を抜かないで投球することからも、しっかり気を抜かないで努力できるタイプなのだろう。

 そういった努力を惜しまない才能・要所を締められる精神力・恵まれた肉体を活かした資質を考えると、単なる素材型では片付けられない投手だと評価する。大学時代から故障を経験して、更に一回り二回り人間的にも大きくなったはず。「旬」とは言い難くても、もう社会人で何か身につけるよりも、プロの指導者・環境でその資質を伸ばす方が得策だと判断して
を進呈しようと思う。ぜひプロでも、その努力する才能でカベを乗り越えて行って欲しい!


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・都市対抗)







金丸 将也(中部大)投手 185/75 左/左 (佐土原出身)





            「マウンドでの威圧感は、NO.1なのでは?」





 今年の大学選手権。ドラフト候補と呼ばれる注目選手の中でも、実際に今季確認出来ないでいた選手の中で、この選手がどんな成長を遂げているのか、私の一番の関心事であった。その投球は、私の期待以上のものだったと云えよう。高校時代は、身体を持て余し、典型的な素材型左腕だった男が、今やプロを意識出来る領域まで成長してきた。今回は、地方リーグ屈指の大型左腕について考察してみたい。

(投球スタイル)

 とにかくマウンドに立った時に、打者はその大きさに圧倒される。何よりその上背以上に、長い手足を活かして腕をブンと振って来るフォームは、打者にとってもの凄く威圧されているはずだ。だからこそ、130キロ台後半~140キロ前半ぐらいの速球でも、打者は全く打ち返すことが出来なかった。この男の球は、とても球速表示だけでは語れない。

ストレート 130キロ台後半~MAX143キロ

 もの凄く手元で伸びて来るとか、ピュッと手元で切れるような球質ではない。長い腕をブンと振って、打者の近くでグワ~ンと押し迫る、迫力のある球がこの投手持ち味。打者は、その恐怖心から、ボールをしっかりと最後まで見切る前に、思わずバットを振ってしまうことになる。

スライダー 120~130キロ

 この迫力あるストレートを魅せられると、もの凄く曲がりが大きなわけでもないスライダーでも、大きな効果がある。確かにスライダー自体のキレも悪くないのだが、あくまでもこの速球があるからこそ、活きる代物だと云えよう。

シュート系 120キロ台前半

 右打者のアウトコースに投げ込む時に使われているのだが、ナチュラルなのだが意識して投げているのか定かではない。しかし外にこの球を投げた後に、アウトコースに140キロ近い速球を決めているのを観ると、やはり意図的に使ってはいるのだろう。ただスクリューなどと違い、落差はなく外に逃げて行く。

フィールディングは、大型故にあまり上手いようには見えなかった。しかし牽制・クィックなどは、私が観た試合では、1人も打者を出さなかったのでよくわかならい。後日登板した試合を確認して、この部分を修正しておこうと思う。



<右打者に対して> 
☆☆☆

 右打者には、外に速球とシュートを投げて、アウトコースで投球は組み立てられている。インコースにも、速球やスライダーを魅せることで、踏み込みを封じることは出来ている。やや真ん中近辺に入ることもあるが、それが低めなので痛手を食らうことはなかった。

 縦系の変化・緩急がない・制球はアバウトと云う部分はあるが、ストライクゾーンの枠の中には球を集めることが出来、天性の打ちにくいフォームも相まって、右打者にも通用するピッチングを身につけつつある。

<左打者に対して> 
☆☆☆

 左打者に対しても、アウトコースに速球とスライダー・インコースに速球とスライダーを使い、アバウトながら2分割の投げ別けは出来ている。緩急・縦系・制球力のアバウトさは、右打者同様にあるが、長い腕を外からブンと振って来るようなフォームと独特の球筋は、左打者にとっては相当厄介な投手だと云えよう。

(投球のまとめ)

 打ちにくさを全面に出したフォームなので、それを将来的に活かして行けば良いのだと思う。基本的には、スリークオーターから左サイド的なフォームで、将来は独特の球筋を活かすタイプだと認識している。

 そのため将来的にも横の変化が中心で、攻めの引き出しを今後も増やして行けるのかは疑問な部分はある。より今後は縦の変化や緩急を求めるよりも、外に逃げて行く球を磨く必要がありそうだ。

 マウンド捌き・制球力など、各動作にそれほど高い野球センスは感じられない。この選手は、そういった細かい技術よりも、圧倒的な肉体のポテンシャルで、打者を牛耳って行くタイプ。それで良いのだと私は思う。そこを更に磨く方向性で、行けるところまで行くべきではないのだろうか。





(投球フォーム)

 いつものように「野球兼」の
2008年6月17日更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照して頂きたい。

<踏みだし> 
☆☆☆

 写真1を観ると、金丸投手がワインドアップで振りかぶっている。お尻の肉の盛り上がり・背中の反り具合などからも、背筋・下半身など、かなり鍛えあげていることが伺われる。高校時代のMAXが134キロだったことを考えると、10キロぐらい球速を伸ばしたのは、こういった地道な努力があったからだろう。

 足を引き上げる勢いがあり、その高さもかなり高いところまで引き上がっている。こうやって観ると、球の勢いを重視したタイプで、試合を組み立てる先発よりも、やはりリリーフの方が適しているのがわかる。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆☆

 写真2を観ると、軸足の膝から上がピンと真上に伸びてしまっている。

1,フォームに余計な力が入り力みにつながる

2,身体のバランスが前屈みになりやすく、突っ込んだフォームになりやすい

3,軸足(写真右足)の股関節にしっかり体重を乗せ難い

などの問題が生じる。ただ彼の場合、足を高い位置まで引き上げることで、背中をあまり傾けない方がバランスが取れている。そういう意味では、全体のバランス・軸足への体重の乗せ具合は、膝がピンと伸びている割には悪くない。

<お尻の落としと着地> 
☆☆☆

 写真3を観ると、引き上げた足をやや二塁側に送りつつ、足をやや地面に向けてピンと伸ばしている。そのためお尻の三塁側(左投手の場合は)への落としは、ややバッテリーライン上に落ちて甘くなりがちだ。お尻をしっかり落とせない投手は、ブレーキの好いカーブや縦に腕を振るフォークの修得に苦労しやすいことにつながる。彼も典型的なスライダー・チェンジアップ系投手の投げ方になっており、将来的に緩急の効いたカーブや縦に落差のある球の修得は、厳しいと考えるべきだろう。

 ただ写真4の着地までに、足を前へ一伸びして着地のタイミングを遅らせることが出来ている。着地を遅らせる意味としては

1,打者が「イチ・ニ~の・サン」のリズムになりタイミングが取りにくいからだ。「ニ~の」の粘りこそが、投球動作の核となる。

2,軸足(写真後ろ足)~踏み込み足(前足)への体重移動が可能になる。

3,身体を捻り出すための時間が確保出来るので、ある程度の変化球を放れる下地になる。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆

 写真6のグラブに注目してみると、グラブは抱えられているのだが、やや後ろにすり抜けてしまって抱えが甘くなっている。通常グラブを内に抱える意味としては、外に逃げようとする遠心力を内に抑え込み、左右の軸のブレを防ぐ。すなわち両サイドへの制球は安定しやすいことになるのだ。

 また写真5のスパイクに注目してみると、足の甲の押しつけが甘いのが伺われる。足の甲で地面を押しつける意味としては、

1,浮き上がろうとする上体の力を押さえ込み、球が浮き上がるのを防ぐ

2,フォーム前半で作り出したエネルギーを、後の動作に伝える

などの働きがある。彼の制球力がアバウトな原因の一つに、これらの動作に甘さがあることが考えられる。

<球の行方> ☆☆☆

 写真3を観ると、グラブを斜め前に差し出し、ボールを長く隠すことが出来ている。写真4の着地の時点でも、ボールを持っている腕は、しっかり頭の後ろに隠れている。そういった意味では、球の出所は見えにくく、身体の開きも遅いのがわかる。人並み外れた腕の長さと、この出所の見難さが、この投手の最大の特徴だと云えよう。

 写真5を観ると、腕にあまり角度はなく、長い腕を外からブンと大きく振って投げて来る。そのため球持ちは、それほど良い方ではない。ボールを長く持つ意味としては

1,打者からタイミングが計りにくい

2,指先まで力を伝えることでボールにバックスピンをかけ、打者の手元まで伸びのある球を投げられる

3,指先まで力を伝えることで、微妙な制球力がつきやすい

などがあげられる。彼の制球力のアバウトさと、それほど手元で伸びるとかそういった球質ではないのは、このフォームに原因がありそうだ。

<フィニッシュ> ☆☆☆

 写真6では、せっかく長い腕を持っていても身体に絡んで来ないのは、腕の角度の無さと球持ちの無さから来るのだろう。ただ彼の場合は、今のようにやや肘を下げて投げる方が、独特の球筋を作れて私は良いと考える。

 地面の蹴り上げは写真を見る限り悪くはない。ただ充分に前に体重が移っているかと云われると微妙だろう。ただこれだけ腕を外からブンと振る割には、投げ終わったあと大きくバランスを崩さない下半身の安定感は評価したい。

(投球フォームのまとめ)

 この手の肉体の資質を活かしたタイプの投手に対し、あまり細々技術論を押しつけるのは、私は良いことではないように思える。こういった投手は、短所を修正するよりも、長所をより生かすことで活躍して行く場合が多いからだ。

 それでも一応フォーム分析の4大観点である、着地・球持ち・開き・体重移動で観てみると、開きの部分に最大の特徴があると云えよう。最大の課題は、球持ちであるように思える。この辺が改善して来ると、もっとねちっこくイヤらしい実戦派に進化して行けそうだ。





(最後に)

 恐らく将来的にも、そう多くの球種を身につけて投球の幅を広げて行けるタイプではないだろう。ただより左のスリークオーター・サイドハンド的な、独特の球筋を活かし自分の存在価値を切り開いて行ける投手だと考える。

 プロの打者相手に、ボールを見極められた時に、本当の制球力がないところが心配ではある。まだまだ技術的にも課題は多い、発展途上の投手であることも否めない。

 ただ左投手としての特性と恵まれたポテンシャル・それに4年間かけて、自分の資質をゆっくりと確実に伸ばしてきた野球への姿勢も評価してみたい。即戦力としては計算し難いが、上の指導者が上手く導けば、面白い存在に成り得る投手ではないのだろうか。指名リスト、ぜひ残してみたい。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2008年・大学選手権)




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打ち込めば見つかる捜し物!





 185センチの大型左腕で、MAX134キロ程度の球速だが、腕の長さを活かした打ち難い球筋と恵まれた投手体型からも、球速、制球力、投球術、技術的にも課題こそ多いが、そういった問題を改善して行きたい。

(2004年)