07kd-13





土生 翔平(広島)外野手のルーキー回顧へ




 土生 翔平(早稲田大)右翼 178/76 右/左 (広陵高出身)
 




                   「春より、良くなっている!」





 プロ入り向けて大事なシーズンだった春のリーグ戦において、打率.188厘と信じられないような低打率に泣いた、かつての首位打者。復活をきした今シーズン、土生 翔平 は、いかなるシーズンを送っているのか考えてみた。


(今シーズンの土生)

 春のシーズンは、13試合で 0本 0打点 打率.188厘に終わった土生だが、この秋はどうなのだろうか?

 ここまでの7試合で、1本 7打点 1盗塁 打率.231厘 。打率こそ低いものの7打点を稼いでおり、良いところでヒットを打っている印象を受ける。完全復調とは言えないが、春よりは数段良い形で打席に立てている。


(守備・走塁面)

 最終学年になってから、左翼だった守備が右翼に変わった。元々それほど守備に光るものがなかったが、年々ソツのないプレーができるようになってきました。地肩も際だつほどではありませんが、基準以上のものがあります。特にプロでも売りにするほでなくても、右翼や左翼のポジションが期待できます。

 一塁までの塁間を、3.9秒台~3.8秒台ぐらいで走り抜けるなど、以前よりも走塁への意識が高まりました。これは、プロでも俊足として足を売りにできるレベルにあり、元々ベースランニングの上手さや盗塁センスは悪くありませんでした。最終学年に向けて、打ち出してからの最初の一歩目を速く切れるようになり、一塁までの到達タイムを大幅に縮めてきたように思えます。ただそのことに気を取られ過ぎて、打撃に影響しているのではないかと逆に心配にはなります。こと走ることに関しては、先輩の 松本 啓二朗(横浜)よりも、上ではないかと思います。


(打撃内容)

 春は、何か形にこだわり過ぎていて、自分のスイングができていなかったように思えます。しかし今は、スイングに迷いがなくなり、随分と今のフォームが板についてきました。

<構え> 
☆☆☆☆

 スクエアスタンスで両足を揃え、グリップの高さは平均的に添えるオーソドックスな構え。腰の据わり具合、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスもよく、自分のリズムも刻めて春よりも力みが薄れているように思えます。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 春は、中距離打者が採用する「平均的な仕掛け」を採用しておりましたが、この秋は「遅めの仕掛け」を採用。ボールを手元まで引きつけてから、叩くスタイルに変えてきました。

 通常この仕掛けは、生粋の長距離打者か状況に合わせて様々な打撃が求められる二番打者に多く観られる仕掛けであり、彼の場合後者に属するタイプだと考えられます。よりフォアザチームの意識が、ラストシーズンで観られているのではないのでしょうか。その辺は、チーム1の6四死球からも伺われます。

<下半身> 
☆☆☆

 始動が遅い分、足を上げてから降ろすまでの「間」が短くなります。そのため打てる球は限られているので、あらかじめ狙い球を絞って、その球を逃さず叩く「鋭さ」が求められます。彼の場合、ストレートに追い込まれるまでは、狙いを定めているのではないかと考えられます。

 軽くステップさせた足を、真っ直ぐ踏み出します。真っ直ぐ踏み出すということは、内角の球でも外角の球でも捌きたいという彼の意志が感じられます。踏み込んだ足下も、インパクトの際にブレないなど、打ち損じの少ない良い形でスイングできています。実際試合をみていると、広角に幅広い方向に、打球を飛ばすことができています。

<上半身> 
☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を、早めに作ることができています。これにより始動が遅くても、速い球に立ち後れません。以前はもっとグリップの引きが極端で、リストワークが硬くなっていたのが、だいぶ自然体に戻りました。

 バットは、上からミートポイントまで綺麗に振り抜けています。ヘッドスピード凄みはありませんが、元々難しい球でも当てられてしまう、リストワークの柔らかさがあり、その辺は非凡なものを感じます。とにかくこの選手の良さは柔らかさですから、力んで硬くならないよう心がけて欲しいですね。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げは小さいので、目線のブレが非常に小さいように思えます。それだけ、的確にボールを捉えることができるはずです。身体の開きも我慢できていますので、左中間に打球がしっかり伸びますね。軸足にも粘りがあり、低めの球にも上手く対応できます。あとは柔らかい選手にありがちな、自分からボールに向かって行って、身体が突っ込まないことに注意したいところです。

(打撃のまとめ)

 春よりも、だいぶ自然体でスイングできるようになってきました。ただ「仕掛け」のタイミングを遅くしたのが、何処まで板についているのかはわかりません。また天性のアベレージ~中距離タイプの彼が、こう狙い球を絞り、引きつけて叩く打撃が合うのかは疑問です。しかし春からの不調を抜けるために、いろいろなことを試みている点は、高く評価したいと思います。


(最後に)


 守備に関しては平均的ですが、走塁に関してはプロでも通用しそうです。自慢の打撃は、春からの不調からは脱しつつあります。しかし、まだまだ完全脱出とは言えない状況。下位指名でもいいから、プロに入りたいというこだわりをもってすれば、指名してくる球団はあるかもしれません。ただ通常、早稲田のキャプテンまで務め、リーグ戦での実績のある選手を、なかなか下位で指名されるというケースはありません。そう考えると、まずは社会人で実績を残してからと判断されるのが、通常の例であるように思えます。私も秋も文句なしの成績を残せなかったことを考えると、その方が良いのではないかと考えます。社会人での立て直し、更なる成長を期待してやみません。


(2011年 秋季リーグ戦)





 土生 翔平(早稲田大)右翼 180/76 右/左 (広陵高出身)
 

(どんな選手?)

 斎藤佑樹の後を継いで、今年から早稲田のキャプテンを任されました。広陵時代から好打者として知られ、ミートセンスに優れた好打者です。ただ個人的には、プロで売りになるものに乏しく、ドラフト候補と言われるのには疑問を感じてきた選手でした。

(打撃内容)

 昨秋の首位打者であり、3年間の通算が.350厘と言う破格の成績を残してきた選手です。しかし今シーズンは、打率.188厘と、大学に入って初めて経験するスランプのシーズンとなりました。

 スクエアスタンスで、グリップを高めに添えます。全体にバランスが取れて理に適った構えです。しかし打席では力が入り、固くなっているのがわかります。柔らかさが売りの選手ですから、できるだけリラックスした形を心がけたいところ。

 仕掛けは、投手の重心が沈み込んだあたりで始動する「平均的な仕掛け」。ある程度の対応力と長打力を兼ね備えた中距離・勝負強さを売りにするスタイル。軽く足を上げ、真っ直ぐ踏み込むスタイル。内角でも外角の球でも捌きたいと言う幅広い打撃を意識し、打てるポイントも多い対応力のある打撃です。踏み込んだ足下もブレないなど、下半身に大きな問題はありません。

 トップは、あらかじめ捕手方向に引かれています。トップの形を作るのが遅れないようにしたいのはわかりますが、あらかじめ捕手方向に引きすぎると、上半身がガチガチになりリストワークに遊びがなくなり、かえって打てる球が限れます。この辺も、もう少し無駄を減らすことばかりを重視しないで、柔軟性を持ちたいところ。バットの振り出し、スイング軌道などは、けして悪くありません。目線のブレも小さいですし、開きも我慢でき、軸足にも大きな崩れは感じません。総じて言えば、技術的な問題よりも、精神的な部分に問題が生じたシーズンだった気が致します。

(守備・走塁面)

 昨年までは左翼手でしたが、今シーズンは右翼手でした。地肩に関しては基準以上のものはありますし、打球への反応・キャッチング等に大きな狂いはありません。

 この選手は、これまで速いタイムは計測できなかったのですが、盗塁などのセンスに優れていた印象です。しかし今シーズンは、一塁まで全力で走り抜ける意識が持て、塁間4.0秒を切るような俊足ぶりを魅せてくれました。また三塁までの到達が、11秒台前半など破格のベースランニングの上手さもあります。図抜けた脚力ではありませんが、プロでも走力を売りにできる資質はありそうです。ただ今シーズンは、あまり出塁が少なく、盗塁は僅か1個に終わりました。

(今後は)

 春の内容で、大きくドラフト戦線から後退した印象は否めません。非凡な対応力・プロでも通用するであろう走力があり、地肩もプロの基準を満たします。それまで、すべて中の上レベルで、特徴に欠けるとの印象がありましたが、けしてそうでもないのではないかと思い始めました。

 問題は、打撃の復活です。私が思うに、あまりに形にこだわり過ぎて、技術に縛られてしまっている気がするのです。そのため思いっきりの良さが薄れ、野手に不可欠な大胆な攻めが打席で観られなくなりました。打者で一番必要な要素は、技術よりも攻める姿勢です。これを束縛するような技術ならば、体の思うままにバットを振った方がましです。技術は大切ですが、気持ちはもっと大切です。もう充分な技術もありますから、あえてその型を崩してでも打ちに行く、そのぐらいの大胆さがあって好いのではないのでしょうか。そうすれば自ずと、持っているものは出せると思います。あえて恥も外聞も捨てて、ガムシャラにプレーして観て欲しいと思います。これは、土生だけでなく今の早稲田全体に言えることです。

(2011年 春季リーグ戦)



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土生 翔平(早稲田大)左翼 180/76 右/左 (広陵高出身)


(どんな選手?)

 広陵時代から注目されてきた強打者で、甲子園ベスト4チームの主力選手でした。名門・早稲田進学後も、1年生から試合に出場。2年春には、打率.318厘、この秋には、打率.400厘を残し、リーグ2位の成績を残しました。また自身初のベストナインにも輝いた充実のシーズンでした。

(守備・走塁面)

 この試合では、正確なタイムは計測できず。ただ高校時代の時のタイムは、4.3秒弱と基準以下の数字でした。しかしこの秋は7盗塁を記録するなど、実際はもう少し速いのかもしれません。ある程度走れる脚力があるようで、プロでも売りにできる程なのかどうか、今年見極めてみたいと思います。

 高校時代は、あまり上手くない三塁手でした。しかし現在は、外野にコンバート。この試合では、3番・レフトでの出場でした。ボールのキャッチング・反応などを見ていると、平均的な守備力かなと思います。元々地肩は基準以上なので、見せ場はありませんでしたが、弱いと言うことはないと思います。ただ現時点では、守備でアピールするほどのものはないように思えます。





(打撃内容)

 対応力のある打撃と、ツボにはまれば長打もあるパンチ力のある中距離タイプです。構えた時からリラックスして、バランス良く構えます。一度ベース側につま先するのですが、本格的な始動が「遅い仕掛け」程度で、極端に遅くならないのが良いです。

 足を引き上げて、真っ直ぐからややアウトステップ気味に踏み込みます。インパクトの際にも足元がブレないので、体の開きや打ち損じなどは少なそうタイプです。それほど「間」が取れるタイプではないので、打てるポイントは限られますが、甘い球を捉える鋭さはあるように思えます。

 残念なのは、打撃の準備段階である「トップ」を作るのが早いのは良いのですが、振り出しからインパクトまでのスイング軌道が外回りで、少々ロスが感じられるのが残念です。頭のブレ・体の開き・軸足の強さなど、体軸の安定感は感じますが、スイング軌道とヘッドスピードの強さに、まだまだ課題を感じます。

(今後は)

 リーグでも、その対応力は目立存在になってきました。走塁でのアピールもできるようになってきたのですが、まだ守備やスイングの強さなどに、物足りなさを感じます。最終学年でドラフト候補になるには、もう少し何か売りにできる特徴が欲しいですね。ここまでは順調に来ていますが、それに胡座をかくことなく、高い志しで突き進んで欲しいものです。それでもだいぶ、高校時代よりは成長したように思えます。


(2009年・プロアマ交流戦)





楽天



土生 翔平(広島・広陵)三塁 179/73 右/左

3番・三塁手として出場。広角に打ち返す強打者として昨秋から注目の1人。打撃は、真ん中~アウトコースの球をセンター方向に打ち返す基本に忠実な打撃をする選手。特に非凡な対応力や長打力があるとか、守備・走塁が図抜けているような選手だとは感じられない。

 三塁手としての肩は中の上ぐらい。キャッチング・スローイングともそれほど上手い三塁手とは云えない。一塁までの塁間は、4.28秒ぐらい。左打者の基準である4.2秒よりも劣り、上のレベルを意識すると足もそれほどでもない。

 現状打撃には目立つものがあるが、高卒即プロに指名されるようなスケール感、圧倒的な身体能力があるようには見えない。それだけに大学・社会人と実績を残す中で、評価されて行くタイプではないのだろうか。更に夏までに、どのぐらいの凄みを魅せてくれるのか期待したい。

(2007年・春)



 


 一部では、かなり来年の候補として期待の高い内野手のようだが、私が観た帝京戦の試合では良さがあまりわからなかった。

 基本は、真ん中~アウトコースの球をセンター方向に打ち返す、基本に忠実な打撃をする選手。特に非凡な対応力や長打力があるとか、守備・走塁が図抜けているような選手だとは感じられない。

 三塁守備に関しては、地肩・キャッチング・フットワークともイマイチで、今後かなりの成長がないと、上のレベルで三塁を担えるかは微妙だろう。打撃でも始動が遅く、上のレベルのスピードには相当苦労することが予想される。もう少し神宮大会の他の試合なども観て詳細を詰めて行きたいが、現状ではドラフト候補として観るには、厳しいのではないかと言う気がするのだが・・・。選抜で、再度その成長ぶりを確認してみたい。

(2006年・秋)