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柴田 章吾(巨人)のルーキー回顧へ



 柴田 章吾(明治大)投手 175/73 左/左 (愛工大名電出身)
 




                 「技巧派に変わっていた・・・」





 愛工大名電時代、ベーチェット病を乗り越え頑張っていることで話題になった 柴田 章吾 。下記の寸評を読んで頂ければ、当時のことはよくわかってもらえるだろう。ただその病気抜きにしても、左の本格派左腕として、MAX142キロを投げ込む素材は魅力的。順調に明大で4年間を過ごせば、プロ入りも夢ではないと期待させた。そして4年生になって、育成枠でジャイアンツが指名。しかし今は、左サイドハンドに近いスリークオータで、技巧派左腕に変わっている。

(投球内容)

 左のサイドからスリークオーターの中間ぐらいの腕の振りから投げ込んでくる。

ストレート 125~132キロぐらい

 球の出どころこそ見難いが、球威・球速共に、ドラフト候補として物足りない。左打者の背中越しから来るような独特の球筋が特徴。ただこの手のタイプにしては、あまりボールがキレないのも気になる。

変化球 カーブ・スライダー

 神宮大会での投球では、スライダーは地面に向かって切れこむように、高めには浮いて来なかった。ただ曲がりが早すぎて、打者が手を出してくれる感じがしない。ただこの秋の成績を見るかぎり、イニングを越える三振を奪っているのは、この低めへのスライダーを上手く振らせることができるからだろう。

 またカーブも投げるのだが、スッポ抜けたりとあまり実戦的ではない。現状は、緩急・カウントを稼ぐ球と言うよりは、こんな球もあるのだというアクセントにしかなっていない。

その他

 牽制は、左腕らしく中々鋭い。ベースカバーへの入りも早く、フィールディングの反応もよく、上手いと思う。ただ高校時代もそうだったのだが、クィックができない。この部分は改善されていないのか?あえて状況に応じて、ピッチングに専念するために使わなかったのかは定かではない。

 完全に左のリリーフタイプだが、それほどマウンド捌き・投球術にセンスは感じられない。あくまでも淡々と、投げ込んで来るといったタイプだろうか。

(投球のまとめ)

 球の出所が見難いフォーム・独特の球筋はあるものの、その割にキレもなく、当然球威・球速も厳しいレベル。大まかに外角にボールを集めることはできるが、思いのほか細かい制球力がない模様。この秋の投球を見るかぎりは、プロでは厳しいだろうなと思える。


 


(データから考える)


13試合 0勝0敗 9回2/3イニング 被安打9 奪三振11 四死球10 防御率 3.72


 
これは4年間の通算成績であり、彼の4年間の活躍が、特別ではなかったことがわかるだろう。では何故彼が指名されたのか?それは、巨人と明大との交流戦で、3回を無失点で抑えた時の投球が評価されたという。

 この数字を見る限り、私が上記で記したことを裏付ける。イニング数とほぼ同数の被安打数からも、球の威力や配球に課題があることが伺われる。ただ奪三振がイニングを上回るように、三振を奪う術は持っているようだ。恐らくこれは、左サイド特有の球筋を生かし、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むスライダーを上手く振らせることができるのだろう。ただイニング数を上回るほどの制球力の無さは、中継ぎとしては致命的だ。果たして、左対左 との対戦で活路を見出すことができるだろうか。

(投球フォームから考える)

 投球の4大動作である「着地」「開き」「球持ち」「体重移動」の観点から考えてみたい。「着地」までの粘りは、正直それほどではない。そのため打者がタイミングが取り難いといったほどではない。しかし体の「開き」は遅く、ボールが中々見えてこない。このことによって打者は、球筋を予測し難い。そこが、彼の最大の武器だと言えよう。

 ただサイドハンドにしては、「球持ち」が浅く、ボールのバラツキが目立つ。すなわち細かいコントロールがないのだ。これは、今後もつきまといそうな課題。そして「体重移動」も不十分で、ボールに体重が乗らないために、手元まで生きた球が行かない。またそうだからといって、上半身や腕を鋭くは振れていないので、ボールにキレを生み出すこともできない。これでは、遅い球を速く見せることも厳しいだろう。


(最後に)

 恐らく巨人は、この三振を奪える術と、チームにこういったタイプがいないことを理由に加えてみたかったのではないのだろうか。ただチームにいないタイプという特徴はあるが、現状プロでは厳しいだろうなという結論に達してしまう。心情的に応援したいタイプだが、それだけで大成できるわけではない。残念ながら、指名リストに名前を載せることはできないという結論に至ったのである。


(2011年 神宮大会)







柴田 章吾(愛知・愛工大名電)投手 175/70 左/左





                  「先入観こそ悪!」





 柴田 章吾 は、中学時代「ベーチェット病」だと診断され、高校で野球を続けることは無理だと医者から宣告されていた。そんな中、強豪・愛工大名電に進み、甲子園のマウンドに上がるまでの活躍を魅せたことは、一躍・甲子園の美談として伝えられた。

 確かに素晴らしい美談だし、個人的にも応援したくなる話しだ。しかしスカウティングで最もしてはいけないのは、先入観を持って選手を観ることである。だから先日の寸評で触れたように、上背がないことだけを理由にするのは、偏見でしかないと書いた通り。上背がない投手には、陥りやすい傾向があるが、それはあくまでも傾向であって全員に当てはまることではない。そういった例外で欠点に当てはまらない選手まで、上背がないことだけで切り捨ててしまうことは、私は危険だと書いてきたのである。

 またいつも書くように、選手を観る時はまず性格面を除外して考えるべきである。そういったものをスカウティングの中に最初から入れてしまうと、個人の主観・感情で選手の本質を曇らせてしまうからだ。だからと云って、そういったものを無視していいわけではない。しかしまず第一は、どの選手もスカウティングにおけるチェックポイントに当てはめ、その基準をクリアしたものに対し、初めてそういった個人の感情が入る、性格的なものを観て行かないと、必ずと云って好い程大きな過ちを起こすことがある。あのダルビッシュ有(東北高)の素行が問題になり、圧倒的なポテンシャルを持ちながら、単独指名で日ハムが入札出来たのも、各球団が先入観に走り、彼の能力を実力以下に観ていたからだろう。今や日本一とも云って好いの程の投手に育ったダルビッシュの本質を見抜けた球団は、殆どなかったことになる。

 そこで話しを柴田投手に戻すと、彼にとって自分の実力を難病を理由に、色眼鏡で見られることはけして望んではいないはずだ。そこで私は、いつもと同じように彼を私のスカウティングポイントに当てはめて考えて行きたい。

(投球スタイル)

 左のオーソドックスな本格派。球速は、常時140キロ前後(試合ではMAX142キロぐらいだったか?)を記録し、この球速は、今年の左腕トップランクの
藤岡 貴裕(桐生第一)や植松 優友(金光大阪)などの投手達と比較しても、全くヒケをとらないレベルである。普段は淡々と投げている印象だが、勝負どころで投げる体重の乗ったストレートの威力・キレは、充分に上位指名候補達の球質にヒケをとらない素晴らしいものだ。

 主な変化球は、120キロ台のスライダーとのコンビネーション。それにカーブ・たまにフォークらしき球も投げているように感じられた。上体も好く振れ、その球だけを観れば何ら上位指名候補と差のない内容に見えて来る。また名門で鍛えられているだけに、フィールディング・ベースカバー・牽制なども上手い。しかし大きな課題が彼には残されている。

 クィック動作が、1.6~1.8秒と完全に出来ないのだ。彼のように試合をまとめるタイプと云うよりは、球の勢いで抑えるリリーフタイプ。それも球種・攻めのバリエーションの不足を考えると、将来的にはリリーフでの活躍が予想される。そういったタイプが、クイックが出来ないことは気になる材料だ。例えば野球名門校でない学校の逸材ならば、あえて高校時代クィックを教わらない・やらないことも考えられるが、名門・愛工大名電においては、クィックを教わらないとは考えずらく、現時点では出来ないと考える方が妥当ではないのだろうか。普段は、即戦力投手でもない限り、あまりクィックタイムを重視しないのだが、あえて触れてみた。

<右打者に対して> ☆☆

 柴田投手の投球と云うのは、この威力のある速球を全面に出した投球。しかしその速球は、アウトコース高めのゾーンでカウントを整え、その間に、カーブ・スライダーを織り交ぜて来る。基本的に縦の変化はないのに等しいので、高めへの速球は的が絞りやすいことになる。変化球の制球力・威力ともそれほど図抜けていないだけに、攻めのコンビネーションは限られていて、制球力もかなりアバウトな方だ。そこでこの制球力の粗さはいつものことなのかと愛知県予選のデータを観てみる。9回1/3イニングで6四死球。1イニングあたり2/3個確率ぐらいで四死球を与える投手なのだ。これは、プロレベルであればやはり1/3個ぐらいに四死球は抑えるコントロールが必要であり、更にレベルが格段に上がるプロの打者の打力・プレッシャー・パワーを考えると、今のレベルの四死球では済まないだろう。

<左打者に対して> ☆☆☆

 左打者に対しては、アウトコースに速球とスライダーのコンビネーションで投球を組み立てている。緩急を使うカーブやフォークは、殆ど観られない。また内角を突く球も観られず、あくまでも球の勢いで押す速球とスライダーのコンビネーションだ。

 右打者相手ほどではないが、攻めのバリエーション不足・制球力のアバウトも残り、縦の変化や緩急に欠ける点を考えると、まだまだ学ばなければ行けないことが多いことがわかる。



(投球フォーム)

 今度は、投球フォームの観点から彼を観て行こう。いつものように「野球兼
2007年8月14日更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照して頂きたい。

<踏みだし> ☆☆

 写真1のように、ランナーがいなくてもセットポジションで投げ込んで来る。やはり制球力に不安を感じているからだろう。写真2のように足をスッと引き上げる勢いは並・高さはまずまず。

<軸足への乗せとバランス> ☆☆☆☆

 写真2を観ると、軸足の膝から上にあまり余裕はないのだが、高く引き上げた足に対し、それほど背中を傾けることなく上手くバランスをとっている。そのため軸足への体重の乗せも悪くない。

<お尻の落としと着地> ☆☆☆

 写真3を観ると、お尻の三塁側への落とし(左投手の場合は)は出来ている。これによりもっとブレーキの好いカーブや縦に落差のある球を修得してもおかしくないが、それが現状出来ていない。それは、写真4の着地のタイミングが早く粘りがない。そしてステップの幅が充分でなく、体重移動や身体を捻り出す時間を充分キープ出来ていないからだ。

<グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆

 写真6を観ると、グラブは最後まで身体の近くに留めている。これにより左右の軸のブレを防ぎ、両コーナーへの制球は安定しやすくなる。ただ写真5の足元スパイクの足甲の押さえを観ると、つま先のみが地面を押さえており、充分ではない。そのため球が上吊りやすかったり、フォーム後半にしっかりエネルギーを伝えることが出来ないからだ。

<球の行方> ☆☆☆

 写真3だとグラブを斜め前に突きだし、球を隠すことが出来ている。写真4の着地の段階でも、柔らかい肩の稼働域としっかり張った胸で、ボールは中々見えて来ないはず。写真5を観ると、極端に右肩が下がってしまうリリースは、肩への負担をかけ腕の振り抜きとしては好いとは云ず、アフターフォローには充分注意してもらいたい。

 ややリリースは腕をブンと振る感じで、それほど球持ちは好くはない。そのため指先までしっかりが伝えられず、制球力はアバウトになっているのかもしれない。

<フィニッシュ> ☆☆☆☆

 写真6のフィニッシュでは、腕の振り抜き・地面の蹴り上げも悪くなかった。上体の流れも抑えられており、バランスも悪くはない。


(最後に)

 こうやってみると素材としては、中々素晴らしいものを持っている。しかし、まだ大きな課題を抱えているのも確か。

1,非常に制球力がアバウト

2,緩急・縦の変化・内角への攻めなどに欠け、攻めのバリエーションが不足している。

3,投球動作の核である「着地の粘り」や「球持ちの長さ」に特徴がない

4,クイック動作が出来ない

などの課題があげられる。難病を抱えていた云々と云う問題以前に、高卒即プロを目指すには、まだまだクリアしないと行けない課題は多い。今までは野球を続けられた喜びを噛みしめるだけで好かったが、ぜひこれから先も野球を続けるのならば、プロで通用するためには如何なることが必要なのかを意識して取り組んでもらいたい。将来的には、プロへの可能性も充分期待出来る素材なのだから。


(2007年・夏)





 


 この投手は、投げてるボールに関してはドラフト1巡クラス!!!なぜもっと騒がれないのか不思議なくらいです。

 球速自体は135~140あたりですが、キレがありほとんどの打者がさしこまれる。スライダーも鋭く、比較的コントロールも安定しており遊学館高校時の小嶋(現阪神)と実力的には遜色ないです。

(2007年 2月5日 タスケ氏)



 キレのある速球が武器のピッチャー。最速140前後の速球とスライダーのコンビネーションで、相手に真っ向勝負を挑む強気なピッチングスタイル。特にそのスライダーは左打者には攻略困難な代物、速球には打者の手元でのひとノビがあり打者を詰まらせるところが目に付いた。

 秋季東海大会では三回からロングリリーフし、八回まで一安打の素晴らしいピッチングをしながら最終回に乱れ2対3で敗北。最後の最後にスタミナ不足を露呈したがこれを糧に成長した姿を春に見せてほしい。

(2007年 1月28日 ピッチ氏)



 最速140キロ超えの本格派左腕。まだ体は細いですが、とにかく腕の振りがしなやかで柔らかい。よって非常に伸びがあるボールを放ります。

(2006年 10月29日 浜松市民氏)