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藤岡 貴裕(31歳・巨人)投手の 藁をも掴むへ 







藤岡 貴裕(ロッテ)のルーキー回顧へ




 藤岡 貴裕(東洋大)投手 183/85 左/左 (桐生一出身)
 




              「有終の美を飾れない中で」





春は、大学野球一番の大会である「大学選手権」を制し、名実共に日本一に輝いた 藤岡 貴裕 。しかしこの秋は、リーグ戦を優勝できず不完全燃焼のまま、大学生活を終えることになった。しかしその陰で、どんなラストシーズンを過ごしていたのか気になるところ。プロに向けて、課題は克服できたのか? 最後の 藤岡 貴裕 の投球を振り返ってみよう。

(投球内容)

率直な感想から言えば、藤岡の投球が目に見えて大きく変わった印象はありません。しかしここでは、改めて彼の投球を見なおしてみたいと思います。

ストレート 常時140キロ台~MAX150キロ前後

明らかにワンランク球威・球速を上げてきた春と違い、秋は春とほぼ同様の感じのストレートでした。彼の素晴らしいのは、これだけの球速を誇りながら、ある程度狙ったところにボールを集められる安定した制球力。普段は、コースを突いてカウントを整えるように丁寧に投げているのに、勝負どころでは力技で空振りを誘える速球も使い分けている。特に彼の素晴らしいのは、右打者外角に集まる逆クロスの球筋。ここでキッチリ投球を組み立てられるところが、この選手の最大の魅力でもある。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなどなど

基本は、スライダーとのコンビネーションに、カーブも時々織りまぜて来る。実は、カーブやスライダーなどのコントロールは、それほど藤岡の場合絶妙ではない。それでもストレートを中心に投球を組み立てているので、変化球が多少アバウトでも、速球との球速差や変化球のキレで打ち損じてくれることが多いのだ。

特に面白いのが、右打者には内角低めの膝下にスライダーを食い込ませて来る。またいつも思い通りには行かないが、左打者の外角のストライクゾーン~ボールゾーンに切れ込むスライダー。これを振らせられるときは、投球が楽になる。また投球に余裕が出てくると、縦に落ちるフォークなどもあるが、それほど多くは使って来ない。

その他

藤岡の意識の高さは、牽制の鋭さ・フィールディングの上手さ・クィックの素早さに凝縮されている。特にクィックは、1.0秒前後で投げ込む高速クィック(基準は1.2秒)、彼から盗塁を決めるのは中々厳しい。こういった細かい部分まで野球を追求できる意識とセンスを兼ね備えているのが、この藤岡という男なのだ。

「間」を上手く使ってきたり、微妙なコースの出し入れで勝負するような、ピッチングの上手さがある選手ではない。どちらかと言えば、淡々と一定のペースを守り、9回をトータルで組み立てて来るタイプだと言えよう。

(投球のまとめ)

春の寸評に書いた彼の課題は、投球が真面目すぎるということ。抜き所が少なく、ストライクゾーンの枠の中で投球を組み立て過ぎる点。これが、2011年度NO.1投手と評価する 菅野 智之(東海大)との、現時点での差となって現れていると書いた。普段から、10の力とは言わないまでも9ぐらいの力でピッチングを続けているので、肝心のピンチや勝負どころになるとピッチングがきゅうきゅうになって、普段以上の力を出せない。しかしこの課題は、最後のシーズンでも改善されずプロへの宿題として残った。

そういった意味で、春~秋にかけての目に見える成長は、私には確認出来なかった。

(しかしながら)

ただ愚直なまでに生真面目な藤岡らしく、けして己を高めることを忘れたわけではなかったのである。この秋の藤岡の成績は

8試合 6勝1敗 防御率 0.93 

この6勝という数字は、3年春・秋のシーズンと並ぶ、彼の最多勝利タイ。更に投球内容も、被安打率70%以下、四死球率イニングの1/3以下、奪三振も1イニングあたり0.93個 と私の設定するすべてのファクターを満たし、防御率に至っては、自己記録となる 0.93(リーグ1位)を記録するなど、最後の最後まで、己の持てる力を出し切ったシーズンであった。

今シーズンは、目に見えた大きな進化はなかったものの、ある意味最高の形を最後まで貫いた、誠に藤岡らしい最後でもあったのだ。





(投球フォーム)

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて伸ばすフォームなので、基本的にお尻を三塁側(左投手の場合は)に落とせるフォームではありません。したがって見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークなどの球種には適さないですし、体へも負担がかかります。ただそういった球も投げるのですが、左腕にしてはカーブを大きな武器にしてはおりませんし、フォークにも依存したピッチングスタイルではありません。

ただ「着地」までの粘りはあるので、カーブやフォーク以外の球種を武器にできる可能性はあります。実際にスライダーを中心に、投球を組み立てることができています。そういった意味では、変化球で空振りを奪うというよりは、あくまでもストレートが武器というピッチングスタイルは、これからも続けて行くことになるのではないのでしょうか。そんななかストレートが走らない時に、いかに試合を作れるのかが、これからの課題となるでしょう。

<ボールの支配>

グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの制球は安定。足の甲の押しつけも深く、逆に膝小僧に土が着いてしまうほどで、沈み過ぎかなとも思います。しかしボールは、高めに抜けることも少なく、球筋も安定しています。「球持ち」は、それほど長くはありませんし、指先の感覚も特別優れているといった感じではありません。そのため微妙な出し入れというよりは、大方狙った近辺にボールを集めるといったタイプ。それでも四死球で自滅する、そういった危険性は低いと考えられます。

<故障のリスク>

お尻が落とせないのですが、それほどカーブやフォークなどの球種は投げません。ましてシュート系の球も使いませんので、肘への負担は小さいはず。また腕の角度にも無理がないので、肩への負担も感じません。ただ何度か足を痛めているように、彼の投球が足に出ているのは気がなりますね。その辺も含めて、体の手入れ、投球フォームを改善していって欲しいと思います。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りはそれなりで、体の「開き」も平均的でしょうか。嫌らしいフォームではないので、球が時どきに素直にトントンと相手と合ってしまうことがあります。そういった時の修正や回避の仕方が、まだ下手なように思います。その辺は「間」が使えたりすると、随分と変わって来ると思うのですが。

腕の振りは、最後まで体に絡んできます。そのため速球と変化球の見分けも難しいですし、左投手なので右打者から、カーブの腕の緩みもわかり難いメリットもあります。「体重移動」も悪くなく、ボールの勢いも悪くありません。物凄い凄みのある球を投げ込むことは少ないのですが、安定して良い球を投げられます。

(投球フォームのまとめ)

「着地」や「開き」「球持ち」「体重移動」など、どれも特筆すべき点はないのですが、平均して基準を満たしています。更に上を目指すのならば、プロ入り後ワンランク上の動作の追求も、将来は期待したいと思います。野球への意識が素晴らしいので、いずれは技術的にも特筆すべきレベルまで引き上げられるのではないのでしょうか。

(最後に)

今年のNO.1であった菅野智之(東海大)や昨年の斎藤佑樹(早大-日ハム)のような、良い意味での悪賢さとか、手の抜き方を知りません。これがある意味、藤岡らしいと言えば藤岡らしいですし、彼の真っ直ぐな性格を表してます。

この辺は、プロで揉まれる中で、力の抜きどころ、ボール球で打ち取るという投球のコツみたいなものを、学んで行くことになるのではないのでしょうか。とにかく真っ直ぐ上を目指し日々鍛錬・精進できる選手なので、そういった領域に到達するのも、それほど時間がかからないと思います。学生時代の間では、まだその領域には達していないといった印象を最後まで持ちました。

順調にキャンプを乗り越えてゆけば、開幕ローテーションを担い10勝前後は一年目から固いでしょう。もしそういった投球のコツをシーズン中に身につけられれば、更にその上の勝ち星も期待できると思います。ただそれには、恐らく数年かかるのかなぁという気はしておりますが、ロッテという環境や良いコーチとの出会いも大切だと思います。ただ数年後には、球界を代表する左腕に昇りつめる、その可能性は極めて高い男だと評価したいと思います。


蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名級)


(2011年 秋季リーグ戦)






 藤岡 貴裕(東洋大)投手 183/85 左/左 (桐生第一出身)
 




「今年のドラフトで、一番人気になりそうな男!」





 秋のドラフト会議において、もっとも1位指名で競合しそうなのが、この 藤岡 貴裕 。正統派の本格派左腕であり、投げては150キロを超えるようなストレートを投げ込んでくる。それでいて安定した制球力も併せもち、2011年度のビッグ4の一人だと評価されている。一年目から、プロのローテーションを担えるのか、今回は考察してみたい。

(投球スタイル)

 体重移動も滑らかで、実に綺麗な投球フォームをしている。昨年よりも、球威・球速が、この春は更に増した気がする。コンスタントに145キロ~150キロ級の球を、両サイドに投げ分ける。そのストレートは、手元で伸びるとかキレがあると言う感じではないがが、球威と勢いを兼ね備える。

 空振りの多くは、この自慢のストレートではなくスライダーで奪っている。他にも、カーブ・カットボール・スクリューボール・フォークなど、ひと通りの球種を操れる器用さがある。

 牽制も鋭く、クィックも素早く、フィールディングも実に上手い。これに制球力が高く、マウンド捌きも悪くない。勝負どころでは、力で押すような気合の入ったマウンド捌きも魅せる。もう言うことがないのではないと言うほど隙がないように思えるが、プロの一流投手と比べると、まだまだ物足りない点がある。それは、何かなのか考えてゆきたい。

(何が物足りないのか?)

 この選手の一番気になるのは、すべてストライクゾーンの中で打者を仕留めようとする、正直すぎるピッチングにある。それは、アマレベルならば彼の球威・球速・コントロールなどがあれば、ボール球を投げなくても仕留められてきたからだろう。そういった投球に遊びの部分がなく、一生懸命投げすぎ。これでは確かなスタミナある彼でも、プロの打者には粘られて、心身共に持たないはず。きっと真面目で一本義な性格なのだと思うが、もう少し投球の幅が欲しいところ。その辺のゆとりがないと、とても一年間ロプローテーションをになって行くこともできなければ、成績もあげられるとは思えない





(それでも)

 そんな中、最近鋭く縦に落ちるフォークを投げ始めた。まだ序盤戦や大事なところではあまり使えていないが、この球をボールゾーンに狙って落とせる精度を身につけられれば、だいぶピッチングの幅は広がりそう。この球の存在を知ってから、私は彼の評価がワンランク上がった。このフォークをものにできるのかが、一つプロでの大きなポイントとなりそうだ。

(1位競合は確定的)

 145キロ以上の球を両サイドに投げ分け、多彩な変化球も操る。ストライクを先行できる安定した制球力、確かなスタミナ、癖のないフォームなど、大きな欠点は見当たらない。野球に対する真摯な姿勢も併せもち、高校時代から着実に自らの技量を伸ばすことができてきた。それゆえに、ドラフト会議でも1位指名で競合することは、まず確定的だと言って良いだろう。

 ただ先にも書いたように、現状は、まだ一年目から二桁勝てるのか?と言われれば、私は難しいと判断する。開幕から1軍のローテーションに入って行けるだけの基礎体力、基礎技術は備わり、首脳陣も使ってみたくなるだけの魅力がある選手。ただそこには、もう少し人間ととしての幅や奥深さが求められる。その幅が秋までに持てたならば、一年目から二桁を計算できる投手だと評価できるようになるのではないのだろうか。彼に今後求められるのは、そういったワンランク上の投球内容。難しい課題もクリアして行ってくれる、そういった期待を持たせてくれる男であることは間違いない!



蔵の評価:☆☆☆☆
 (1位指名級)



(2011年 春季リーグ戦)










 藤岡 貴裕(東洋大)投手の成績を考える!
 
 2011年大学ビッグ3と言われる、藤岡 貴裕 投手の、これまで残してきた実績について考えてみたい。

(リーグ成績)

リーグ 試合数 勝ち 負け イニング 被安打 四死球 奪三振 防御率
1年春 1回  2/3 0.00
1年秋 14回 2/3 13 12 1.23
2年春 21回 2/3 19 19 2.91
2年秋 19回 2/3 15 25 2.29
3年春 50回 2/3 32 14 51 1.07
3年秋 73回 30 21 81 0.99
4年春 11 63回 2/3 42 18 79 1.41
4年秋 58回 1/3 33 18 54 0.93


1,被安打は、イニング数の70%以下 

 本格化した3年春からは、すべてこのファクターをクリア。球の威力・配球など含めて、充分にモノの違いを魅せている。

2,四死球は、イニングの1/3以下 

 藤岡の代名詞は、本格派左腕にして制球力が好いことがあげられる。その数字を裏付けるように、本格化した3年春からは、文句なしにこのファクターを満たしている。

3,奪三振 ÷ イニング数 = 1.0前後 

 元々下級生の時も、イニング数に近い奪三振を奪っていたが、2年秋ぐらいから球の威力が増し、明らかにイニング数を上回るまでになってきた。ただ藤岡の三振の多くは、ストライクゾーンの枠の中で奪っており、これにボールになる球を振らせられるようになると、更に奪三振率は伸びて行ける余力が残されている。

4,防御率は、1点台が望ましい 

 3年春に本格化し、東都リーグで防御率1位。その後も安定した成績を残している。世代を代表する投手ならば、ぜひラストシーズンには、再び防御率1位のタイトルを取りたいところ。文句なしの成績を残し、プロ入りへの勲章としたい。


(データからわかること)

 日本の大学球界においても、最も競争が熾烈な東都リーグにおいて、この文句なしの実績を残せたことは大きい。大学選手権では、足が吊るなど、その影響で全日本合宿・日米野球と思う力を充分発揮できなかった。まずは、秋に向けて再起を期待したい。残してきた実績においては、申し分のない成績の持ち主で、プロでも一年目からローテーション投手への期待も高まるところ。






藤岡 貴裕(東洋大)投手 181/80 左/左 (桐生一出身)


(どんな選手?)

 桐生一時代は、最後の夏に本格化して、個人的には高校の時点で☆☆を付けて、指名リストに載せた左腕でした。東洋大進学後も順調に実績を残しつつあります。まだまだ凄みはありませんが、正当派の本格派左腕として、その将来が嘱望されます。今春のリーグ戦では、ここまで、4試合に登板して1勝0敗 防御率2.91で規定投球回数に達し、防御率11位の成績を残しております。





(ピッチングスタイル)

 体重移動・腕の振りが柔らかい左腕で、常時130キロ台後半~MAX144キロの速球に、カーブ・スライダー・チェンジアップなどを両サイドに投げ分けます。普段は140キロ前後ぐらいのストレートなのですが、勝負どころでは140キロ台中盤の速球で力で抑え込みに来ます。

 この投手の好いところは、本格派でありながらフォームの土台が好く、またピンポイントでないにしろ、両サイドに投げ分けることが出来る点です。そういった投手としての破綻がないタイプで、素直に肉付けして行ければ、それが着実に力となって現れるタイプではないのでしょうか。

(今後は)

 着実にステップアップして欲しいと思います。下級生投手に人材が豊富な東洋だけに、今後もその中から飛び抜けるのは、そうたやすいことではないと思います。ただ志しを高く持って今後も取り組めば、2年後は最上位候補として成長出来る投手だと思います。後は、更に身体に強さを磨き、迫力が出てくるようになると大変注目される存在になるのではないのでしょうか。


(2009年・春季リーグ)





楽天


藤岡 貴裕(群馬・桐生第一)投手 181/76 左/左





                「全国NO.1左腕かも?」





 選抜にも登板した 藤岡 貴裕 。滑らかな体重移動から繰り出される球には、高い将来性を感じさせてくれた。しかし選抜当時の私の評価は、制球力・球の勢いとも発展途上。通常の成長曲線ならば、やはり高卒即プロは厳しいと云うのが私の評価であった。

 しかし大学・社会人を経れば、上位指名でプロ入り出来る可能性を秘めた素材として、大いに気になる存在ではあった。しかしこの夏の投球を観てみると、驚くべき成長を遂げていた。実際に、今年評判の左腕である植松 優友(大阪・金光大阪)投手や郭 恆孝(福岡・福岡第一)投手などを、この夏確認してきたが、彼等と比較しても、全く遜色ない投手に育っていた。選抜優勝投手の田中 健二朗(静岡・常葉学園菊川)投手が、甲子園でどんな投球を魅してくれるか次第ではあるが、2007年の高校生左腕でも、3本の指に入る存在だろう。今回は、私の想像を遙かに凌ぐ速さで急成長する本格派左腕を取り上げてみたい。


(投球スタイル)

 この投手が好いのは、体重移動が滑らかで、まさに正当派の本格左腕と云った感じのフォームに、そのセンスを感じさせてくれる。田中 健二朗(常葉学園菊川)ほどの試合をまとめるセンスはないが、制球力もグッと春よりも好くなっている。植松 優友(金光大阪)ほどの、常時140キロ台の速球はないが、それでも最速143キロの球の勢いは本物。郭 恆孝(福岡第一)ほどの、フォームに嫌らしさはないが、春からも格段に伸びた成長力は大いに魅力だ。

 選抜では常時135キロ程度だった球速も、この夏は常時135~140キロ強ぐらいにまでアップ。球の勢いには格段の成長を感じさせてくれる。基本的には、カーブとのコンビネーション。選抜時に魅せたスライダーらしいスライダーはなく、右打者のアウトコースには、シュート系のボールを織り交ぜてくる。

 フィールディングは、まずまずのレベル。牽制は並レベルと云った感じ。ただクイックに関しては、まだ出来ないのでこれからの課題としてあげられる。この投手の好いのは、上体をしっかり振れること、そして選抜で課題であった投げ終わったあとのバランスの悪さも、改善されつつあった。

<右打者に対して> ☆☆☆☆

 両コーナーに、しっかり投げ分けられる制球力が備わった。アウトコースに速球とカーブを。インコースにも、厳しく食い込んで来る速球とカーブで、カウントも取れる。またそれほど目立つ球ではないが、アウトコースに逃げて行くシュート系の球も持ち合わせているようだ。

 縦の変化には欠けるが、しっかり速球とカーブを投げられる制球力は、高校生左腕としてはA級の精度にまで成長してきた。選抜までは、アバウトでも真ん中の甘いゾーンにボールが集まらず適度に散っていると云った印象だったが、今は意識的に投げ分けられるまでになっている。

<左打者に対して> ☆☆☆

 左打者に対しては、アウトコース高めに速球・アウトコース真ん中~低めにカーブを決めて来る。このコースへの制球は安定している。インハイにもカーブなどが決まることがあるが、何処まで意識してインコースに投げ込んでいるかは疑問。左打者には、アウトコース中心と考えて好いだろう。

 それほど左対左の有利さのある球筋ではないので、実は攻めのバリエーションの少ない左打者からヒットを打たれるケースが多い。左打者への攻めのバリエーションを増やすことは、今後の課題の一つだと云えよう。





(投球フォーム)

 いつものように「野球兼」の
2007年8月4日更新分に、彼の投球フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照して頂きたい。

<踏みだし> ☆☆☆

 まず写真1を観て欲しい。ワインドアップで構えた時の、背中の反り具合もそれなりで、お尻の大きさは発展途上だが、肉の盛り上がりから観ても、かなり春から下半身をいじめてきたことが想像される。肉体的には、まだまだ発展途上であるが、けして鍛えられていない身体ではない。この成長を支えたのは、確かな鍛錬に裏付けされているとみた。

 両足の横幅は狭めではあるが、足を少し引いて立てている。この立ち方を観ると、バランスよりも球の勢いを重視しているスタイルだ。写真2の位置までの足の引き上げる勢い・高さは、それなりだと云えよう。

<軸足への乗せとバランス> ☆☆

 写真2を観ると、軸足の膝から上はピンとは真上に伸びていないが、それほど余裕のある立ち方でもない。またやや全体に直立的な立ち方で、もっと背中を後方に預けても好いのではないのか?全体のバランス・軸足への体重の乗せと云う意味では、やや物足りない印象を受ける。

<お尻の落としと着地> ☆☆☆

 写真3では、引き上げた足を二塁側にかなり送り込んでいるので、どうしてもお尻の三塁側(左投手の場合)への落としは甘くなり、バッテリーライン上になってしまう。ただ引き上げた足を二塁側に送り込むことで、身体の突っ込みを抑えている働きがあることも否定出来ない。

 写真4の着地までのタイミングだが、前にひと伸びしており着地が早く成りすぎるのを防いでいる。まだ粘りがあると云う程ではないが、方向性は間違っていないので、もっと着地までの時間を稼げるようになると面白いだろう。

<グラブの抱えと軸足の粘り> ☆☆☆☆

 写真6では、グラブを最後までしっかり内に抱えられることが出来ている。これにより左右の軸のブレを防ぎ、彼の両コーナーへの投げ分けを支えている。写真5の足の甲の押しつけも、まずまずだと云える。もっと下半身や股関節の鍛錬により、より長く粘りのある押しつけも期待出来そうだ。球の上吊りを防ぎ、あとの動作にもしっかりエネルギーを伝えることが出来ている。本格派でありながら、しっかりした制球力があるのは、この部分の動作を疎かにしていないからだろう。

<球の行方> ☆☆☆
 
 写真3を観ると、ソコソコ球を隠すことが出来ているように思える。写真4の着地の段階では、ボールを持っている腕は、しっかり打者から隠れている。ただ背中のラインよりも、後ろまで入ってテイクバックしているので、故障には充分注意してもらいたい。

 写真5を観ると、右肩が極端に下がることなく的確な位置で腕が振られている。やや外で球を切る感じのフォームなので、球持ち自体はそれほど好くないフォームだと云えよう。その辺が、この投手のフォームで最も残念な部分である。

<フィニッシュ> ☆☆☆☆

 写真6では、振り下ろした腕が身体に絡んでいるのがわかる。地面の蹴り上げも悪くなく、春よりも投げ終わったあとのバランスも好くなっている。


(最後に)

 まだまだ絶対的な凄みはないのだが、高い将来性と土台の良さが、この投手の魅力。優れた点をあげれば

1,滑らかな体重移動と上体を振れるフォームに、センスを感じさせる。

2,本格派左腕にありがちな、制球のバラツキが少ない。

3,土台が好く、素直に肉付け出来る安心の素材

課題としては

1,縦の変化球の修得の可能性が微妙。まだまだプロで武器に出来る程の球種が見当たらない。

2,そのため自分の特徴をどう見出して行けるのか?

などがあげられる。何より高卒即プロに望まれる、春~夏にかけての格段の成長が目を見張る。素材としての奥行きも残されており、将来先発左腕の一角も期待出来る素材ではないのだろうか。高卒即プロを期待してみたい左腕に、この夏出会うことが出来た。


(2007年・夏)


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)







 昨年は腰痛に悩まされたが、関東大会で復帰。選抜では、常時135キロ前後の速球を投げ込む速球派左腕だった。変化球は、90キロ台のスローカーブ・110キロ台のスライダー・それに120キロぐらいのシュート系の球種もあるようだ。この投手の良さは、上体を強く振れるので、変化球の時にタイミングが合わせにくい。

 制球力・マウンド捌きには課題があるものの、真ん中近辺の甘いゾーンにボールが入って来ることは殆どない。一見荒削りなイメージを受けるが、牽制・フィールディングなどの総合力は悪くなかった。高卒即プロとは云わないまでも、夏には140キロ近い球速も充分期待出来そうだし、将来的には速球派左腕として注目して行きたい素材だった。

(2007年・選抜)