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荒波 翔(ベイスターズ)外野手のルーキー回顧へ








荒波 翔(24歳・トヨタ自動車)中堅 178/76 右/左 (横浜高-東海大出身)





                          「何故、今年荒波なのか?」





 横浜高校時代から天才と呼ばれ、東海大に進んでからは、一年春にいきなり首位打者を獲得。トヨタ自動車一年目にも活躍し、その力を見せつけてきた。しかし彼の悪いところは、最初は良いがその力を持続させる能力に欠けるところにある。社会人2年目の昨年は、プロ入りを期待されるなか結果を残せずに指名漏れ。3年目の今年は、トヨタでも9番打者として試合にでるも、都市対抗で結果を残せないまま東京ドームをあとにした。そんな 荒波 翔は、完全にドラフト戦線から後退。今回のまさかの3位指名は、一体何が起こったのか理解に苦しむ指名であった。




 都市対抗本戦では、2試合で6打数0安打2三振。更になかなか送りバントが上手く行かないなど、小技もイマイチなところを魅せていた。しかし東海予選では、17打数8安打 打率.471厘と、チームの本戦出場に貢献する活躍を見せた。ただその内容を評価しての、3位での指名には正直疑問が残る。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間を、3.9秒台で走り抜ける脚力は、プロでも俊足の部類に属する。ただ学生時代から見てきて、その脚力ほど、盗塁は上手くない。昨年の公式戦100打席では、盗塁が4個。これをプロの規定打席である446打席で換算すると、年間約18盗塁に相当する。ただプロと社会人捕手のスローイングレベル・打者への警戒レベルなどを加味すると、年間10個ぐらいの脚力ぐらいだとは考えられないだろうか。ちなみに、塁間3.9秒台の目安としては

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.3秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。やはりタイム的にも、プロで足を売りにできるかは、微妙なレベルなのだ。特に今年の東海予選5試合でも、盗塁は0個。特別今年になって、足を全面にアピールしたプレースタイルに移行した形跡はない。

 この手の左の巧打者タイプにしては、肩が結構強いのが一つの特徴してあげられる。プロに混ぜても中の上レベルぐらいの地肩がある。そういったスローイング能力は悪くなく、俊足を活かした守備範囲も狭いはずはない。しかし学生時代から、最初の一歩目・打球への勘がイマイチで、その身体能力ほど守備が上手くはない。よほどこの一年で劇的な進化を魅せていない限り、プロで守備を売りにすることはないだろう。実際に都市対抗を見る限り、それほど上手くなった感じはしなかった。



(打撃スタイル)

 ヒットの多くに二塁打・三塁打などが多く、ホームランこそないが、意外に長打が多いのが特徴としてあげられる。スイングが鋭いとか力強いことはなく、それでも長打が多いと言うのは、意外にリストが強い選手なのかもしれない。以前はまだ「強さ」に物足りなさはあったものの、打撃センスに光るものがあった。しかし今年の試合を見る限り、その片鱗も薄れてしまった印象は否めなかった。


(打撃フォーム)

 それでは技術的に、劇的に何か変化があったのか?フォームの観点からも見てみよう。


<構え> 
☆☆☆☆

 昨年よりも足のオープンスタンスが、広くなったのではないのだろうか?バットを倒しながら、バランスよく構えられている。打席でもリラックスして構えられ、両目でしっかり前を見据えられているのは良い。


<仕掛け> 
遅めの仕掛け

 以前は「平均的な仕掛け」を採用するなど、中距離・ポイントゲッターが多く採用するスタイルをとっていたが、今年はよりタイミングが遅く、じっくりボールを見てから始動するようになっていた。これが、調子が崩れて反応が遅れていたのか?それとも少しタイミングを意図的に遅らせていたのかは定かではない。

 「遅めの仕掛け」は、基本的に長距離打者が採用するスタイル。もしくは二番打者タイプが採用するスタイルなのだが、長打力が売りではない彼がこの仕掛けでは遅すぎる気はする。また2番打者を目指すにしても、バントが上手くない彼にとっては、この選択には疑問が残る。彼の打球が意外に長打が多いのは、この仕掛けの恩恵によるところが大きいのではないのだろうか。

<下半身> 
☆☆☆☆

 足を引き上げ、軽くベースから離れたところに踏み込むアウトステップを採用。ただ仕掛けが遅いことからも、球速の変化に合わせて自在に着地のタイミングを図る時間的余裕はない。そのため打てるポイントは、かなり限られているはずだ。彼が年々調子を下げて行くのは、彼自身のモチベーションの低下だけでなく、何か打てない球があるのかもしれない。

 学生時代から比べても、年々アウトステップの傾向が薄れ、かなり癖がなくなってきた。それだけ外の球も強く叩こうと言う意識の現れなのかもしれない。元々あまり内角の球を引っ張って腰の回転を活かすタイプではないので、この選択は悪くないだろう。また踏み込んだ足下も、インパクトの際にブレないなど、打ち損じが多いタイプではない。

<上半身> 
☆☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」を、比較的早い段階で作れている。そのためスピードボールに、振り遅れると言うことはないだろう。ただ「トップ」自体が浅いので、弓矢の弓を強く引くが如くの、強い反発力が期待できない。彼のスイングが力感に欠けるのは、この辺が影響しているのかもしれない。

 ただボールを捉えるまでのスイングにはロスはなく、ボールを捉えてからのスイング軌道にも悪いところはない。元々ボールを捉えるセンスには優れたものがある選手なのだが、インパクトの強さ・ヘッドスピードの鋭さには、それほど変化は感じられなかった。ボールを捉えても、何か弱々しいと言うのは今も変わらない。

<軸> 
☆☆☆☆

 頭のブレは小さく、目線は安定している。身体の開きも我慢でき、軸足にも粘りを感じるなど、体軸の安定感には光るものがある。

(打撃フォームのまとめ)

 技術的には、マイナーチェンジはされているようだが、けして際だつ変化は感じられない。特に打撃の核となるスイングの強さ・ヘッドスピードの鋭さには、昨年と大きく変わった印象はない。特に、それが結果となって現れていない以上、技術的な観点で大きく評価をあげることにはならないはずだ。ただ打撃技術は高く、その潜在能力の高さは伺わせる。



(最後に)

 東海大時代に、プロ入りの課題としてあげた

1,身体能力は高いが、それを生かし切れていないこと

2,絶対的な売りがなく、特徴が見えづらいこと

3,インパクト・スイングなどに強さが感じられないこと

これら三つが、未だ改善されているようには思えない。またいろいろな観点からみても、指名解禁の昨年に指名されないで、今年指名される理由は見当たらない。まして3位と言う、高評価でのプロ入りには誰しもが首を捻りたくなる。恐らく今年、彼を指名リストに入れた球団は他になかったのではないのだろうか?

 そんな選手をあえて3位と言う順位で指名したのには、何かしらの政治的な介入があったと思われても致し方ないだろう。仮にそうだとすれば、3年連続90敗以上と言う歴史的大敗を続けるお荷物球団の現状を、未だに本当の意味で改革して行こうと言う意志は、球団からは全く感じられないとしか言いようがない。

 またチームの編成的な観点からみても、外野手4人の退団のうち3人が右打者。そのことを考えると、右打者の獲得ならば合点も行くが、彼は左打者。同タイプの松本啓二朗よりも一学年上であり、その必要性にも疑問を感じる。もしこの手のタイプを獲得するのであれば、20歳前後の若い世代を獲得すべきだろう。実力的にも即戦力としては微妙であり、チーム編成上の観点でも彼を獲得する意味合いは薄い。

 ただ荒波自身の資質は天才的であり、環境の変わった一年目には結果を残してきたと言う実績がある。そのため僅かながらではあるが、入団一年目でのアピールは期待できなくはない。ただ常識的に見て、彼にプロの力が備わってきたと思えず、この指名には大いなる疑問を残すこととなった。当然今年の内容で、指名リストに残せるものはなかったと評価する。荒波自身に何の恨みはないが、今年の指名で最も腹立たしい指名であったと言えよう!


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・都市対抗)




楽天



荒波 翔(23歳・トヨタ自動車)中堅 178/75 左/左

(どんな選手?)

 横浜高校~東海大~トヨタ自動車と各球界の超一流チームを渡り歩いてきた、アマ球界のエリート。天才的な野球センスで早くから頭角を現すが、それが持続出来ないところが、この選手の最大の欠点。社会人2年目を迎える今年も、ドラフト候補として注目されるのだが・・・。

(守備・走塁面)

 四国銀行戦では、守備・走塁での見せ場あまりなかった。塁間を4.0秒台を切って来るような俊足選手で、そのプレーからは非常にスピード感を感じさせる。ただその脚力の割に、実戦ではあまり盗塁を試みないなど、物足りないものを感じさせるのも確か。

 またこの俊足を活かした、広い守備範囲を活かした中堅守備。この手の好打者タイプにしては、地肩が強いのも特徴の一つ。ただ打球への勘などは、昔からあまり良いと思ったことがなく、名手級なのかと思いきや、疑問を持つ部分もある。

 守備・走塁ともに、高いポテンシャルは持っているものの、その能力を充分活かしているかと言われると微妙だろう。

(打撃内容)

 少し前足を軽く引いた構えから、足を軽く上げベースから離れたところに踏み込むアウトステップ打者。足下のブレも抑えられ、左方向への打撃も可能にしている。

 以前は、打球の弱さが目立っていたが、少し打球に強さは出てきた印象。それでも、まだプロを意識するのであれば、スイングの強さには物足りなさを感じる。ミートセンスの良さがある選手だけに、この点が磨かれると大きいだろう。

(今後は)

 最大のアピールの場であった都市対抗では、結果が残せないまま敗戦。守備・走力のポテンシャルはあるものの、まだそれを充分生かし切れていないし、打撃でも光るものを感じさせてはくれなかった。

 そういった意味では、本当の意味で目の色が変わってこない限り、プロ入りは厳しいものと考えられる。極めて高い野球センスを持ちながら、それを活かす精神面の成長が見られず、今年も指名は厳しいのではないのだろうか。

(2009年・都市対抗)






荒波 翔(東海大)中堅 178/72 右/左 (横浜高校出身)





                 「そのスピード感は一級品!」





 名門・横浜高校では、1年時からレギュラー。東海大入学直後の春のシーズンでは、打率.457厘でいきなり首位打者。その野球センスは、図抜けている存在だ。

 しかしその天才肌の彼にとって不幸は起きる。怪我のため一年以上を棒に振ったのだ。しかしこの男、復帰後のシーズンでまたも打率.375厘と云う高いアベレージを残してきた。しかし昨秋の秋は、打率.209厘と奮わず。まさにその真価が試されるシーズンが、今春だったのだ。

(守備・走塁面)

 セーフティーバントなどを試みれば、3.8秒台ぐらいで走られる脚力がある。そうでなくても、塁間を4.0秒台ソコソコで走られる走力は、相当なスピード感を感じさせてくれるプレーヤー。盗塁などが上のレベルで出来るセンスがあるかは微妙だが、スピード自体は相当なものを持っている選手だと云えよう。

 この走力に裏打ちされた守備範囲の広さがある。また地肩は結構強く、外野から鋭い返球が返ってくる。ただどうだろう?打球への判断力が少し悪い気がするのは私だけだろうか?

 走力・地肩などの身体能力は一級品。あとはそれを活かす技術を磨いて欲しい。それが出来るかが、守備・走力でも一流の部類に入って行けるのかの別れ目となっている。


(打撃フォーム)

 いつものように「迷スカウトの足跡!
2007年5月17日更新分に、彼の打撃フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照して頂きたい。

<構え> 
☆☆☆

 写真1を観ると、前の足を軽く引いているが、ほぼスクエアスタンスだと考えて好いだろう。グリップは、やや高めに添えつつ、バットを立てて構えている。腰の据わり・全体のバランスは並程度だが、両目で前を見据えられているし、比較的リラックスして構えられているのは好いだろう。

<仕掛け> 
平均的な仕掛け

 投手の重心が沈みきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力をバランス好く兼ね備えたスタイルなのだ。ただ打撃の特徴に欠けるタイプは、この仕掛けを採用するケースが多く、プロレベルに混ぜた時に、アベレージタイプなのか・長打が売りのタイプなのか、それとも中距離・ポイントゲッタータイプなのかと考えた時に、彼は、よりアベレージタイプに移行して行くものと考えられる。そう考えると、将来的にはもう少し始動が早まる可能性が高い。

<下半身> 
☆☆☆☆

 写真2のように足を引き上げ、写真3のように少しベースから離れた方向に踏み出す、軽いアウトステップ気味な踏み込みである。ただ彼の場合、踏み込みが好くステップの距離も確保出来ているので、アウトステップ気味でも腰の回転で内角の球を巻き込むようなタイプではないように思える。

 写真4を観ても、インパクトの際に足のつま先が閉じられ、インパクトの際のブレは小さい。これだと強い打球が打てそうなものだが、彼の場合どうしてもインパクト・スイングの強さに物足りなさを感じてしまう。

<上半身> 
☆☆☆☆

 写真1~3にかけて観ると、グリップの位置は結構動いていることがわかる。しかしトップの位置にグリップをいち早く持って来ることでロスは殆どない。またその際に、グリップは身体の奥に入り込んではいないのでヘッドの滑りだしは悪くないはずだ。

 写真5のフォーローまで、スイング軌道には破綻はない。ただ先にも述べた通り、インパクト・スイングの強さなどの点で物足りない点は、高校時代から課題のままだ。

<軸> 
☆☆☆☆

 頭の位置は常に安定し、身体の開き・軸足の安定感もある選手。安定した打撃を残せるのも、この体軸の非凡さがあるからだろう。



(最後に)

彼の優れた部分をあげるとすれば

1,走力・地肩などの身体能力が高く、プレーにスピード感があること

2,優れた技術に裏打ちされた打撃センスの良さ

課題をあげるとすれば

1,身体能力は高いが、それを生かし切れていないこと

2,絶対的な売りがなく、特徴が見えづらいこと

3,インパクト・スイングなどに強さが感じられないこと

などがあげられる。特に課題の一つである素材を生かし切れていない点に関しては、盗塁技術や外野守備のレベルアップが今後更に求められるだろう。

 また絶対的な売りがない点も、生粋のアベレージヒッターに徹しきれておらず、中距離・ポイントゲッタータイプからの移行が、上のレベルでは求められそうだ。

 特に3番目の「強さ」の部分に関しては、大怪我から復活した尾形佳紀(ホンダー広島)内野手の例を思い出す。彼にように、このひ弱さを改善してからプロ入りを目指しても好いのではないのだろうか。ただ彼と違うのは、社会人に数多いる左の好打者タイプだと云うこと。この中でぬきんでた存在感を示せないと、中々指名までには至らないであろうと云うことだろうか。ただそれだけの存在感を示せない選手が、プロで活躍することもあり得ないのもまた事実である。ぜひ秋にチェックをして最終的な判断を行いたいと考える。


(2007年・春季リーグ)










 一年時から、名門横浜高校でレギュラー出場していた野球センス抜群の好選手だ。ただ、どうしてもセンスに頼りがちで、線の細さと力感に欠ける印象は否めない。

揺らがずにボールを待ち、投手の引き上げた脚の重心の沈み始めにカカトを上げ、その重心が底に到達し、更に前への推進運動を始めリリースされる直前に、小さくステップし、始動する極めて遅い仕掛けを行う。

 ただ、それだけ遅い仕掛けでも、充分結果を出すのには、小さなアクションで、引き上げた脚の膝を内に閉めたり、バットヘッドが身体の奥に入るようなロス行為がなく、無駄なくコンパクトなスイングが実現できているからだろう。

 そのコンパクトに振り抜かれたスイングでコースに逆らわず流したり、ミートセンス溢れる打撃で非凡な才能を垣間見せ、軸のぶれないあたりも、この選手の潜在能力の高さを示すのに充分だ。

 また、その野球センスを示すかのように、走塁自体も巧く、一塁までの塁間を4.1秒程度で走り抜けられる俊足で、中堅守備も安定している。ただ、高卒即プロを目指すのにはスイングスピードに強さが足りず、もう少し強い肉体を身につけてからと言った感じだろうか。夏まで追跡したいと思うが、そのセンスに強さと確かな鋭さが備わった時、最高レベルでの舞台が用意されているだろう!


(2003年 4月6日更新)